第7期指す将順位戦はリベンジの舞台なのか

3期ぶりのB2というリベンジ

 時の流れはとても意地悪で、慌ただしく日々を生きるだけで勝手に加速してしまう。10月末に第6期指す将順位戦の最終局を指した。それがもう半年も前の出来事になっているのだから。

 今年も指す将順位戦の開幕が近づきつつある。募集が開始されてからのひと月、締め切られてからのもうひと月。これがなかなかに待ち遠しいものである。昨年も書いた意気込み記事を、と思い立ちnoteを開いているのだが、これがなかなかどうして筆が進まない。どうやら今期の指す順に向けられた私の想いは、なんともつかみ難いものらしい。どうにかしてこの気持ちを紐解いて、新たに始まる戦いの入り口に添えてみようと思う。テーマはリベンジだ。

 今度こそ、私は、指す順を通じて成長してみせるのだ。それはレートという数字で残さなくてよい。昇級という結果で残したい。B級2組に戻った自分が、B級2組に配属されたときの自分と同じであってはならない。

 この文章は前期の開幕前に書いたもの。私にとってB級2組昇級は悲願でありながら最終目標ではなかった。初参加の第4期、私はB級2組に配属され2勝9敗(不戦勝1を含む)の成績で降級した。つまり第5期以来ずっとリベンジのシーズンが続いてるわけだが、B2復帰だけではまだゴールとは言えない。B2で結果を残すことで、ようやく私は指す将順位戦において前進した姿を示すことができるのだ。そういう考えもあって、私の頭には未だリベンジという言葉がこびりついているようである。
 では前記の内容を私は達成できているだろうか?少なくともこれには首を縦に振りたい。昇級という結果は残せたし、第4期当時と比べて最高レートが300点以上伸びた。2年間に及ぶB3での戦いを通じて得たものはたくさんある。ならば、リベンジの舞台は整ったといえよう。自分がどこまで戦えるのか、とても楽しみだ。

指す順”を”リベンジの舞台にはしない

 早くも表題に対する結論が出てしまったかのようだが、人間ひとりの気持ちをとっても一枚岩とはいかない。この筆舌しがたい気持ちが生み出されたのはつい1か月ほど前のことだ。

 のののさんから声をかけて頂き、「指す将ドラフトチームバトル」という企画に参加させてもらった。ABEMAトーナメントをモデルにした指す順のスピンオフ企画で、それはそれは熱く充実した大会だった。敬愛するポラリスさんのチームに入り、優しいコーチ・チームメイトにも恵まれた。期間中何度も連呼したが、チームポラリスは本当に良いチームだった。何よりポラリスさんには昨年1年間お世話になった恩がある。自分の将棋というものを客観的に考えるきっかけを与えてもらったし、指す順においては精神的な支えですらあった。そんなポラリスさんに、白星という形で直接貢献できるまたとない機会が訪れたわけだ。B2復帰という成果で十分恩返しは果たせたのかもしれない。だがポラリスさん自身の勝負に私が携わる機会というのはめったにないことだ。将棋はもっぱら個人競技なので本当に貴重なチャンスだった。
 しかし蓋を開けてみるとどうだろうか。チームは最後まで優勝争いを演じたが、私は1勝5敗と大ブレーキ。これがなかなか苦しかった。実力向上が、内容の良さが自分では実感できているなかで、結果だけが残せなかった。
 ふつう、こういった悔しさは次の舞台で晴らすものだ。この大会は指す将順位戦のスピンオフなのだから、指す将順位戦にぶつけるのが道理というものだろうが、私はどーーーーーっしても、そうはしたくない。
 なぜか、理由は一つ。指す順における私の勝利は「ポラリスさんの勝利」ではないからだ。ドラフト戦におけるテーマはポラリスさんへの恩返しだったように思う。そのリベンジの機会はここではない。指す将順位戦はあくまで自分が戦う舞台であって、もし機会があるとすればそれは次回のドラフト戦であったり、別の企画の場ということになる。

 「いやいや、指す順で結果を残すことが何よりもの恩返しじゃないか。」

 まっとうな反論が私の心に響く。この記事をお読みの皆さんのなかにも、そう思った人がたくさんいるかもしれない。これは、私だけの独りよがりな感覚であろう。ドラフトチームバトルの悔しさをぶつける舞台として、指す将順位戦ほどふさわしい場もそうそう無いはずだ。実際にそういう思いで今期参加される方もおられるはずで、それは筋の通った考えだと思う。でも私には明確に違う何かが残った。残ってしまったのだからしょうがない。私はあえて切り分けることを選ぶ。尊敬する人に成長を見届けてもらいたい、という素直な心との矛盾を抱えながら、今年一年を私は戦うことになるだろう。そこにまつわる考え方には善悪など存在せず、私はただ私がそうであると宣言したかったのだ。

「過去の自分」に対するリベンジ?

 私はその年の指す順が開幕するたびに環境の変化を語ってきた。初参加の年がちょうど新社会人で、以来実家に戻ったり職場が変わったりと慌ただしい。テスト勉強をしていないとうそぶく友人のように、私は毎年「今年は環境が変わるからな~~~!」とうるさい。
 そんな私が再び引っ越すことになった。次の住まいは実家のほど近くになるが、実家を出て参加する指す順というのが実に第4期以来のことなのだ。これは否が応でも当時の自分と重ね合わせてしまうのが情というものだろう。今振り返ってみても第4期は不戦敗ゼロで完走できたのが不思議なくらいで、忙しさに加えて特に精神的にはかなり厳しい状況だった。
 なんとなく、あの頃に得られなかったものを取り返しにいくような気持ちが湧いてくる。自分の意志で自分の人生を生きていくんだぞ、といったようなもの。趣味の将棋大会に対してはやや大げさな感慨だが、多分これが一番近い。生き生きとした日常の中に趣味を位置付けたいのだ。それが自己実現の場にもなりうるわけで、例えば燃えるような戦いに身を投じてみたり、あるいは遠くからつつくように参加してみたり。バランスはその時々で良いから、心に余裕を持って参加し続けていきたい。無理やり参加したあの第4期があったからこうして今年も参加しようと思えるわけでもある。そうやって謳歌しているような感覚を味わうことが、あの頃の自分を労うことにつながる気がするのだ。どんな半年になったとしても、楽しんだと胸を張れるような日々にしたい。

引っ越し前夜の自分から、半年後の自分へ

 いつのまにやらリベンジというテーマとは違うところに着地してしまった。これを書いている今はちょうど引っ越し作業を進めている連休中の夜で、きっとそのせいに違いない。色々湧き上がる思いは全て書くと指す将順位戦から離れてしまうので、ここはあくまで指す順の話を。

 さあ、半年後の自分はうまくやっているだろうか。完走してくれていたら嬉しい。昇級できていたらとても幸せ。不戦敗せずに過ごせるだろうか。将棋との距離感をうまくコントロールできるだろうか。引っ越し前の自分は、そんな不安をかかえながら夜を過ごしています。私は優しい人間だから(自画自賛)、きっと半年前の自分と、半年間頑張った自分を優しく労ってくれることだろうと思います。そんな期待を未来に残しつつ、一局一局を頑張っていく所存です。

 さあ、もう少しで参加登録が締め切られる。今年は盤上にどんな出会いがあるのだろう。どんな物語が紡がれるのだろう。B2の皆さんどうぞよろしくお願い致します。

 ただいまB2!!

 いくぜB1!!!


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