将棋自戦記#20~第6期指す将順位戦第8局~vsファンタさん

 みなさんこんにちは、やきそばです。このシリーズも20回の節目を迎えました。指す将順位戦は1期あたり11~12局指しますから、ペース的には当然なのですが、なんやかんやで毎回きちんと記事を書くことができていますね。もちろん、前々回第6局のカメさん戦の記事が途中だということは忘れていませんよ!タイミング的には次か、次戦ドラキーさん戦の後ぐらいに書く予定です。リアル事情含め諸々の兼ね合いはありますが進捗はTwitterの方でもぼちぼち呟いていこうと思います。

 今回は8回戦、ファンタさんとの対局です。最近は朝晩に涼しい風が吹きますね。昼には太陽が照り付ける9月らしい気候ではあるのですが、時折聞こえてくる虫の声なんかにも、指す将順位戦の終盤が近づいてきたのだなという感慨を覚える今日この頃。私の方は前回のアクティーさん戦の勝利で調子にも弾みがついて、ファンタさん戦に向けて準備を頑張ろうと気力充実の秋を迎えておりました。そんな対局の模様をいつも通りの順で振り返って参りましょう!

局前の準備~ファンタさん編その2~

 ファンタさんが本シリーズの記事に登場するのは2回目!指す順参加3年目にして初めてとなる「指す順内での再戦」です。ここから最終11回戦まで4局連続で再戦になるので、本局で戦い方や感覚をつかんでおくことが重要です!

 前回の記事がコチラ(上記リンク)。前回はラス前10回戦で当たり、ファンタさんの四間飛車に対して用意のelmo急戦をぶつけて快勝という結果でした。ファンタさんは石田流とノーマル四間飛車を使い分ける振り飛車党です。作戦を立てる上では必然的にどちらかへの誘導を目指すことになるのですが、切り札ともいうべきelmo急戦をすでに見せてしまっている状況です。さあさあどんな作戦を立てるべきか・・・。
 迷いどころではありましたが、結論としては今期もelmo急戦を採用することにしました。理由はいくつかありますが、なかでも相振りを避けたい気持ちが大きかったでしょうか。カメさん戦・アクティーさん戦と連続で相振り模様の将棋を指していますので、苦手意識のある相振りよりは対抗形を戦いたかったのです。その他左玉なども採用候補でしたが、前回の内容を踏襲して勝負することにしました。

画像1

 前例を踏襲していけばこうなるだろうという想定図。▲1六歩~▲5九金の様子見に対して①△5四歩~△6四歩②△5四歩~△3二飛③△6四歩~△5四銀④単に△5四銀あたりが主要な候補。①は前例通りの斜め棒銀で指せそうですから、変化するならここでしょうか。今期のファンタさんの実戦では②に近い形で早仕掛け調の対局があったので、主に②から▲4五歩早仕掛けの攻め筋に関連した変化を調べていきます。また△5四銀と早めに出る将棋が野良対局ではいくつかあったので、そちらについても同様にチェック。棋書の変化だけではファンタさんの指し方ともギャップがあるので、懲りることなくソフトの推奨手とにらめっこする日々です。果たして私のようなアマチュアに意味があるのかとも思いながら、知らなかった攻め筋を眺めているのでした。しかし今はスマホでも水匠のようなソフト動かせるのですから、すごい時代だなぁと思います。確実にパソコン以下のスペックですけれども、自分よりは遥かに強いのでこういった検討に使うには十分ですよほんと!

 その他の警戒事項としてはノーマル三間飛車や向かい飛車といった「四間飛車外し」があります。野良対局では三間振り直しの棋譜もありましたからね。そこで今回も対三間の指し方を軽く調べつつ、初手▲2六歩~▲2五歩ではなく▲7六歩~▲2六歩の順でなるべく向かい飛車の可能性を減らすことに。全部を調べ切ることはできませんでしたが、納得いく範囲で要点をまとめていざ鎌倉!期待と不安を胸に対局本番を迎えます。

そっちかー!

第6期指す将順位戦B級3組8回戦
令和3年9月25日20時
於・将棋倶楽部24 大阪道場「自由対局室」
▲やきそば △ファンタ(持ち時間各15分、秒読み60秒)
▲7六歩 △3四歩 ▲2六歩 △5四歩(途中1図)
▲4八銀 △5二飛 ▲6八玉 △5五歩
▲5八金右△6二玉 ▲7七角 △7二玉
▲7八玉 △8二玉 ▲2五歩 △3三角
▲6六歩 △4二銀 ▲6七金 △5三銀
▲4六歩 △5四銀 ▲4七銀 △6四歩
▲1六歩 △1四歩 ▲9六歩 △9四歩
▲3六歩 △7二銀(第1図)

画像2

 振り駒の結果は先手番。さあ頑張るぞと▲7六歩△3四歩▲2六歩。しかしファンタさんが一瞬手を止めます。「まさか…」と嫌な予感がした瞬間に△5四歩!!(途中1図)。中飛車が出ました!ゴキゲン中飛車です!!少なくとも私のデータベースにはありません。知っている限りでファンタさんの中飛車は先手番で1局あったのみ。それも手の流れで中飛車を選ばされたような感じの棋譜でしたから、これは意外な選択です。
 予想外の展開に動揺しますが、私も覚悟を決めなければなりません。▲2六歩を突いてしまっていますから。無理やり▲7八飛で動揺を誘うのはありかとも思いつつ諦めて▲4八銀。開き直って駒組みを進めていきます。大切なのは「予想外の展開にも理由がある」ということ。準備を外す意図だけはハッキリと伝わってきますから、どこかで私も予想を覆して勝負したいところです。まずはそのタイミングを伺います。

画像3

左美濃に思いを託して

第1図以下の指し手
▲3七桂 △3二金 ▲8八玉 △7四歩
▲7八銀(途中2図)△6三銀上
▲8六歩 △7二金 ▲8七玉 △5一飛(第2図)

画像4

 ▲7八銀(途中2図)が本局の岐路というべき一手。中飛車採用の意図として一番考えられるのが、普段私が居飛車穴熊を採用して負けているということ。それこそ野良対局の棋譜を検索すればすぐにバレてしまうことですが、中飛車に対しては体感8割居飛穴・2割相振りで戦っており勝率もふるいません。中飛車への悩みはこの自戦記シリーズでもたびたび言及しているので、そこを狙い撃ちされたのだろうと判断しました。であれば普段使っている穴熊は避けたいところ。一方的な展開を避けるためにも左美濃を選びました。高美濃系の防御力をそこまで信頼していない私なので、これでもまだ不安は尽きませんでしたが・・・。それでも玉頭付近での戦いがなさそうだったので、▲8七玉型にまで組みあがった第2図は先手も十分満足と言えそうです。中飛車相手にはあんまり経験はありませんが、将棋ウォーズで2級、24で11~14級ぐらいの頃はよく天守閣美濃を指していたのです。かっこいいですよね、▲8七玉。ファンタさんも美しい木村美濃+△5一飛・△3二金型に構えて、そろそろ開戦です。

画像5

今日も戦場は中央に

第2図以下の指し手
▲5八飛 △7三桂 ▲5六歩 △同 歩
▲同 銀 △5五歩(途中3図)
▲4五銀 △同 銀 ▲同 桂 △4四角(第3図)

画像6

 対中飛車の悩み。それは2筋方面の仕掛け方がわからないこと。△5四銀型の安定感を前にすると、右銀や桂馬の扱い方に悩んじゃいます!一度は定跡書で学んでおきたいですね。今回も▲3五歩△同歩▲3五桂△4四角▲2四歩のような仕掛けを考えますがパッとしません。銀を目標に戦いたいというのが本能なのかもしれません。中央に飛車を引き寄せ▲5六歩から開戦です。途中3図では▲6七銀と引いておいて持った歩で角頭を狙う手なども考えましたが、ここはガチャンとぶつけて勝負したほうが盤を荒らすことができそうです。勢いよく桂も跳ねて第3図。銀交換でいい流れですが、うっかりすると後手の飛車先も通ってますから手痛い反撃も有り得ます。勝負所というやつですね!

画像7

恐れず飛び込め!

第3図以下の指し手
▲5三歩 △3三桂 ▲5二銀 △2一飛
▲6三銀不成△同金 ▲5二歩成(途中4図)△5六銀
▲同 金 △同 歩 ▲3三桂 △同 角
▲5六飛 △5五銀 ▲5三と(途中5図)△同 金
▲4五桂 △5六銀 ▲5三桂成△2七飛(第4図)

画像8

 ▲5三歩の垂らしは必然の一手。しかし▲5二銀が果たしてどの程度のものか。後手からは△4七銀と打ち込む手や△2六角の飛び出し、△5六銀の打ち込みなど反撃手段がたくさん見えます。本譜の△3三桂も一目味の良い一手で、振り飛車らしいさばきを狙われます。しかしこれは▲5二銀が間に合っているようで、飛車を逃げる手順も相まって▲5二歩成(途中4図)のと金づくりに成功します。このまま後手陣が薄いうちに決め手が見つかれば・・・。そう思い少考を繰り返しつつ、△5六銀の反撃を食いちぎったときでした。△5五銀に▲5三と(途中5図)の捨て駒が見えたのです!

画像9

 手抜けば▲6三とが少なくとも二手スキ。先手玉はコビンが気になりますが、美濃囲いがしっかりしているのでめぼしい詰めろはなさそう。本譜は△5三同金▲4五桂△5六銀とワンテンポ遅くされましたが、それでも成桂の存在が輝いていますね。飛車渡しを恐れず、一気に決めに行けたのはかなりの好判断だったのではないでしょうか。自画自賛の一手でございます。

画像10

最後のお願い

第4図以下の指し手
▲6三成桂△6七銀成 ▲7二金 △9二玉
▲7三成桂△7七成銀 ▲同 桂 △7五桂
▲同 歩 △5四角(第5図)

画像12

 △2七飛(第4図)が脅威でないことを確認。▲6三成桂とにじり寄り、着地の手段は▲7二金~▲7三成桂の詰めろを選択。これで後手に適当な受けはなく、あとは頓死を回避すれば・・・と勝ちを意識しました。△7五桂▲同歩も一目安全でしたからね。
 ところがどっこい手段はあるもの。△7七成銀~△7五桂と打たれた局面で△5四角(第5図)の存在に気づきます。実は金を素抜かれても▲9三銀以下詰ませられるのですが、対局中は▲9三銀が見えていませんでした。ここ(▲7五同歩)で1分半以上の考慮に沈んでいるのは、その辺りの読みを確認していたからなんですね。とにかくとにかく、肝が冷える瞬間でした。

画像11

2敗キープに成功!

第5図以下の指し手
▲7六桂 △同 角 ▲同 玉 △7五歩
▲8七玉 △7六金 ▲9八玉
まで87手でやきそばの勝ち
(消費時間=▲15分、△15分)

画像13

 私の選択は▲7六桂合。この合駒があってもなくても金を取る手には即詰みがありますが、対局中はこの桂馬があれば▲8四桂打から行けそうと考えていました。今からしてみると回りくどい手順ですね。反省!
 本譜の王手ラッシュも冷静に対応し、最後は有効な王手のない局面まで逃げ切ることができました。ファンタさん対局ありがとうございました!!

振り返り、次局に向けて

 感想戦では▲5三歩と垂らした辺りの局面と全体の戦型選択について話をしました。研究外しの中飛車との戦いは、指していて非常にスリリングな将棋でした。自玉はずっと安全だったはずなのですが、常に緊張感が漂っていましたね。「対策をされる」というよりは「対策を外される」という感覚。今後の対局で何回も味わうことになるでしょうから、これからの再戦ロードにおいても意識して戦いたいと思います。

 これで星取りは6勝2敗です。今期の勝ち越しが確定するとともに、指す順キャリアを通じて初めてとなる「貯金4」を達成しました。一時的な記録とはいえ、2敗で踏みとどまれているのはとても良いことですね。ですがこの結果に甘えてはいけません。現状(9月25日の対局終了時点)では、1敗すれば自力昇級の目が消える状況なのです。10月は勝負の一か月になります。何としてでも昇級をもぎ取り、再びB級2組に足を踏み入れてみせましょう。次局のお相手はドラキーさん。前期の死闘から、こちらもまた1年越しの勝負となりました。今年もきっと激闘になることでしょう。新たなる決戦に向けて、一歩一歩頑張ります。最後までお読みいただきありがとうございました!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?