将棋自戦記#16-1~第6期指す将順位戦第4局~vs八十一甫さん(前編)

 みなさんこんにちは、早いもので7月の終わりを迎えているやきそばです。五輪五輪コロナ五輪、大谷コロナ五輪五輪。そんな世間に流されながら日々を過ごしております。4回戦、中盤夏の戦いを迎えた指す将順位戦の自戦記です。長い長い順位戦レースもそろそろ昇級争いの見通しが立ってくる頃合い。B級3組はその人数の多さから、3回戦終了時点で全勝(3連勝)が4名と分厚い層ができていました。上位勢はいかに調子を崩さず連勝街道を進めるか、それを追いかける側は強敵からいかに星をもぎ取るか・・・。真夏に行われる4~7回戦の流れはかなり重要になるのではないでしょうか。観戦も捗りますね!

 今回は少し準備編の内容を濃い目に書いてみようと思います。果たしてどれぐらいの仕上がりになるか、書き始めた私にはまだまだ検討がつきませんが…!読み応えのあるものにできるよう頑張りますのでよろしくどうぞお付き合いくださいませ。今期、これ以上の準備はできないかもね!
 なお、時系列を混ぜて書いている点にご注意ください。おおよそ部分部分は順番通りに書いているつもりですが、文章の流れや記憶の混濁が原因で順番が入れ替わっている場合があります。ざっくりとこんな感じで準備していたというのが伝われば嬉しいです。

局前の準備~八十さん編~

 4回戦の相手は八十一甫(やそ かずのり)さん。指す順には前期から参加されており、7勝4敗の成績を残しています。前期の終盤で覚醒後daidaiさんを打ち破っていたのが印象的です。個人的には将棋への向き合い方がとても好きで、「志低将」を自称するそのスタイルがとても素敵だなと思っています。将棋との付き合い方というのは永遠の悩みですけれども、好きなように距離を置く独特な雰囲気が「志低将」にはありますよね。「嫌なら一旦止めちゃえばいいよ、将棋は趣味なんだから」というありがちな言葉とも違うんです。肩の力の抜き加減と言えばいいんでしょうか、良いですよね。

 そんな八十さんですが、今期はどうも相手の得意形を受けて立ってくれそうな雰囲気が。1回戦の八十─こえだめ戦で、対四間飛車の急戦を得意とするこえだめさんを相手に、八十さんはあえて四間飛車を採用したのです。「これは3手目▲7五歩を許してくれるのでは・・・!?」石田流好きの私にはそんな期待がよぎります。なんてたって八十さんは早石田撲滅委員会の1人。よくネタツイに便乗させて頂いているので、これは楽しい対局になりそうです。しかし私の期待は、日程調整の時点で儚くも散ってしまうのでした。

盤外戦と書いてプロレスと読む

 それは日程調整の相談と称して送られてきた1通のリプライが発端でした。

 めっちゃ盤外戦(プロレス)仕掛けてくるやん!!

 これにはついつい火がついて応戦、互いに口撃を仕掛ける大盤外戦の始まりです。石田流を受けてくれる気配は微塵も感じられませんね。

 上のツイートはプロレスの一環。八十さんがよく指される戦型を羅列することで「あなたの手札はしっかり把握していますよ」と威嚇する意味合いがあります。既にこの時点で角換わりと左玉は準備の対象外にしていたのですが、そういう事情はここでは関係ありませんね!そのほか、ウォーズの棋譜を見た感想を述べてみたり、八十さんが関わる研究会(通称:地獄研)について探りを入れるツイートをするなど、とにかくアピールを重ねます。ここまでくるともうそれ自体が1つの遊びで、指す順に勝つという目的とは別の物になっています。そもそも八十さんから仕掛けてきたものですから、多少の反撃をしたところで八十さんにダメージが行くとも思えませんし!
 1つ白状すると、地獄研の棋譜を検索で仕入れていた(とミニリーグの感想戦で八十さんにお伝えした)のは嘘で、本当は検索もしましたがゲストアカウントで観戦にも行ってました。「あれやきそばさんだったのか」という趣旨の発言にビビってつい嘘をつきましたが、あれやきそばさんでした。ああいう偵察は堂々と自分のアカウントでやるべきなのですが、スポーツマンシップに反する行いだったと懺悔します。これからは正々堂々見に行きます。(???)

想定を絞る

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 抜けは多少あるものの、これまで集めてきた八十さんの棋譜をチェック。ここでは先手番から順に、自分が普段採用している序盤との相性を確認していきます。2手目△8四歩が最有力(採用率が最も高い)なので、3手目▲5六歩・▲7八飛の二枚看板を中心に検討を進めます。やはり「引き角」「ミレニアム」「角道不突き左美濃」がメインで、どれも私にとっては対戦経験の少ない形。「ややマイナーながら有力な戦法」を得意とされており、低志将と言いながらも興味のある戦型を貪欲に取り入れる力強さを感じます。棋譜を見た印象としては振り飛車党っぽい指し手が多いなぁとも。特に引き角を採用した際の指し回しはまさしく振り飛車党のそれ。飛車角をきれいに捌く手が散見されました。逆に言うと鳥刺し調の抑え込みなどは少なく、確実に自陣整備を優先する姿勢もまた元振り飛車党としての経験を感じさせられるものでした。
 気になるので角換わりの棋譜もチェック。こちらはゴリゴリ押していてすさまじいですね。さっきまで書いていた「振り飛車」っぽさはさすがに控えめで、この早繰り銀には太刀打ちできないと判断しました。やはり角換わりの可能性は打ち切ります。

夢から現実への過程

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 独自研究で終始優位に立てれば一番楽しい。そんな悪魔の囁きに導かれるようにA図の検討に着手します。戦型は「先手中飛車vs角道不突き左美濃」でその最序盤。この戦型における八十さんの傾向として「△7三桂を優先する」「△5三歩とは受けず、金銀の移動を優先する」というものがあり、類似局面がいくつか見つかりました。ソフトにかけてみると、A図の▲7五歩から桂頭攻めで強襲を狙えるのではないかという話に。どこかで▲5五角と出る味もありそうでとても魅力的です。ですが検討を進めれば進めるほど沼の深さを知るばかりで、決定版の指し方が見つかる気配が微塵もしません!序盤も序盤ですから当然ですね。それにこれは想定範囲があまりにも狭すぎます。少しでも想定から外れれば知らない力戦に足を踏み入れることになりますから、リカバリーも一苦労です。この序盤研究に時間をかけても幸せになれないことを悟り、打ち切ることとなりました。

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 次の想定局面がB図。戦型は「三間飛車vs飯島流引き角戦法」で、中飛車へと振り直した形。飯島流は具体的な準備を始める前から漠然と想定していた戦法で、中飛車への振り直しを第一に考えていました。最有力の戦型というだけあって棋譜探しにも力が入ります。B図は八十さんの実戦にあった進行。後手を持った八十さんはここから△5五同歩▲同銀△3五角!と飛車角を捌く手順を選ばれていました。個人的には△5五同歩には▲同飛も有力ですし、実戦例と同じ展開でも先手を持って十分戦えそうです。先述した通り、鳥刺しのような斜め棒銀系の採用率が低いというのがキモ。右辺の形に微妙な違いが生じそうですが、再現性がとても高そうです。不安要素は▲5七銀型の三間飛車(▲4六銀型の中飛車)の経験がないこと。また、三間飛車にはミレニアムの方が採用率が高い(飯島流は対四間飛車の方が出現率が高い)こともあり、ミレニアム対策に考えが移っていくことになります。

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 具体的な分岐点として想定したのがC図。ここで△5四歩なら飯島流、△3四歩ならミレニアムが濃厚です。どちらにも対応できるようミレニアム対策を調べたところ、ミレニアムにも▲5七銀型三間飛車から中飛車振り直しを目指す作戦を発見。仕掛けや思想は全く異なりますが、共通した立ち上がりから対応できるのはとてもありがたい話です。うっかり▲6七銀と上がらないよう、▲5七銀型に組み上げる手順を何度も確認して対局当日に臨みました。ただし、ミレニアム対策の方は実戦譜の手順ではなかったためざっくりとした理解に留まり、想定局面までの手順をはっきり決められませんでした。(よって想定局面は割愛します。)今後ミレニアム対策としてどこかで登板できればうれしいので、時間があるときに改めて勉強しようと思います。

 なお、後手番では最初から向かい飛車に構えることで先手番と同じように指してしまう算段でした。八十さんは▲2六歩△3四歩には9割以上の割合で▲2五歩を決めているので、△3三角~△2二飛はごく自然に指すことができます。実際向かい飛車vs引き角の棋譜もいくつか見つかっているので、B図の想定が役に立つだろうと判断しました。飯島流とミレニアム、2つの対振り作戦に対応できる形を準備し、後は堂々とぶつかるだけ!

長くなったので後編へ!

・・・だったのですが、残念ながらどちらにもなりませんでしたね!左玉は手札としては認識していましたが、投入してくるとは思いませんでした。予想を外された戦いの模様は後編で!本シリーズ初となる前後編分割にしてしまいましょう。本稿の翌日には後編の方も投稿したいと思いますので、何卒よろしくお願い致します!ではでは、この辺で~~。

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