将棋自戦記#18-2~第6期指す将順位戦第6局~vsカメさん(完結編)

 みなさんこんにちは、やきそばです。この記事は2021年8月28日に指した、第6期指す将順位戦6回戦の自戦記後編になります。現在指す将順位戦は一部を除いて9回戦が対局終了し、10回戦が行われています。今回自戦記は諸事情によって少し時間を置いての投稿となりました。よければ前回もご参照くださいませ。ほかの記事も色々あるのでこの機会に読んでみてね!!

 PCが不調に陥り、自戦記を含む将棋関係の活動を家族のPCを借りて行うようになって早1か月。なんやかんやでこの生活にも慣れてきました。指す順最終局の動点Pさん戦まで時間があるこのタイミングで書き切ってしまおうという魂胆でございます。カメさんの猛攻に屈した戦いの一部始終を改めてご覧あれ!!

駒組みと駒効率

再掲第1図以下の指し手
▲8四歩 △同 歩 ▲同 飛 △8三歩
▲8六飛 △1四歩 ▲6五歩(途中2図)△3三桂
▲4八金 △1三角 ▲5八金上 △5二金上
▲9六歩 △9四歩 ▲6六角 △2四歩
▲7七桂 △2五歩 ▲5六銀 △3五銀(第2図)

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 三間飛車党のカメさんに対して相振りで挑むことにした本局。第1図は△4四銀と構えた局面。この銀の取り扱いに困った私は、ここらかじわじわと負けに向かっていくわけであります。対局中の私はそんな未来など当然わかるわけもなく、敵陣に向けた銀の進出を狙っていました。
 対するカメさんは▲8六歩から飛車先の歩交換。本局は相振り飛車になったためか、カメさんは向かい飛車を選択されています。そのまま飛車を▲8六飛と浮き飛車に構えて、▲6五歩(途中2図)と突いたのが実戦的な好手に思えます。

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 ▲7五歩から▲7六銀のコースなども考えられそうですが、後手の角が不安定なうちに角道を通すのが機敏。この手を指された当時の印象を覚えていないのが不思議なくらいです。おそらくは角のラインは△3三桂でも止まること、標的の角は△1三角で相手の角筋から逸れることといった理由から軽視していたのでしょう。以降も攻めに守りに互いの陣形整備が進みます。カメさんは駒の効率がよい陣形を組んでいる印象。対する私の方は石田流の形から銀を繰り出し、2筋で戦いを起こす作戦です。ところが角筋に睨まれた後手陣は飛車が動かしづらく、△3五銀(第2図)と飛び出す手に2分も考慮しています。このあたりの歯車が狂っていく感じだけは忘れられません。

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猛攻の始まり

第2図以下の指し手
▲7五歩 △2六歩 ▲同 歩 △同 銀
▲2七歩 △3五銀 ▲7四歩 △同 歩
▲9五歩 △7五歩 ▲6四歩 △3二歩(途中3図)
▲7五角 △7四歩 ▲6六角 △6四飛
▲6五銀 △3四飛 ▲9四歩 △9二歩(第3図)

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 困ったのがここからの攻め筋。第2図から▲7五歩の瞬間に△2六歩▲同歩△同銀と繰り出しますがこれは継続手段がありません。2筋の歩を切る・・・と主張するには効率が悪く、ここは△4四歩を一旦入れて△2四飛と展開する余地を作るのもアリだったかもしれません。相振りではついつい浮き飛車で自陣を守ることに気を取られがちで、本局もそういった考えから△4四歩と止める手は見えませんでした。
 そうして攻めがもたついた瞬間に、カメさんが鋭く攻めます。▲7四歩△同歩▲9四歩△7五歩▲6四歩!浮き飛車をかいくぐる手順ですね。△7五歩と飛車の横利きにこだわった手が悪手のようで、ソフトによれば素直に△9四同歩であればまだまだ受けられそうとのこと。どうしても飛車を楽にしたい私はなおも△3二歩(途中3図)と自玉と逆方面に手を入れます。

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 端攻めを恐れて捻ねった受け方に終始する私と、有利を意識してか確実な攻めで金無双に迫ってくるカメさん。気が付けば自玉が一方的に攻められている展開で、相振り飛車において最悪のパターンになっています。焦りが焦りを呼びますが、時間は前にしか進んでくれません。一番怖い端を△9二歩と謝って第3図。中盤あたりの詳しい心境は覚えていませんが、局面だけをみると収まったような雰囲気もあります。ここでカメさんは残り5分の持ち時間を全て注いで秒読みに突入するのでした。

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崩壊と希望

第3図以下の指し手
▲8五桂 △8四歩 ▲同 角 △7五歩
▲6四歩(途中4図)△同 歩
▲7四銀 △8三歩 ▲7三歩 △同 桂
▲同桂成 △同 銀 ▲同角成 △同 金
▲8一銀 △6二玉 ▲7三銀成△同 玉
▲6六桂 △6五角(第4図)

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 それにしても本局のときの私は浮き飛車の横利きにすべてを賭けていたようで、▲8五桂の跳ね出しに△8四歩▲同角△7五歩と近づけて受けます。攻め駒に何かしら当てている局面を続けることで、どうにか攻めを暴発させたいという狙いもありました。対して角を切って直接攻める手もある状況で、▲6四歩(途中4図)が後手の狙いを繰り返し咎める一手。銀すらもさばくことができた先手は7三の地点に殺到し、きれいな形を保っていた金無双はみるみるうちに姿を消していくのでした。
 それでもこの勝負、あきらめるわけにはいきません。▲8一銀~▲7三銀成~▲6五桂の手順は筋の良い攻めですが、左辺まで逃げ込めばもう少しは戦えそう。先手の持ち駒も金のみですから、うまく切れ筋にしたい。そして反撃の瞬間さえ訪れたなら・・・!わずかに灯る希望のなかで、△6五角と打ったのが第一弾の勝負手。簡単に受けられてしまいますが、△4六桂を見せられたならカメさんとしても焦るはず。悪いと分かっているなら勝負勝負というわけです。

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観念したらば切り込め!

▲7四歩 △6二玉 ▲5六金 △同 角
▲同 歩 △5一玉 ▲8三飛成△4五桂
▲2三角 △5七金(途中5図)
▲同金直 △同桂成 ▲3四角成 (第5図)

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 ▲8四歩~▲5六金の対応で角こそ取られましたが、予定通り先手の攻めは少し遅れ気味。そこで勢いよく△4五桂と跳ねます。銀が重たい点に目を瞑れば5七の地点から殺到できそう。しかし▲2三角が痛打の切り返し。△2四飛や△3三飛には▲4五角成と桂馬を外され反撃の道筋が閉ざされます。かといって△3三歩では▲3四角成と飛車も手番も失いますし、△4四飛と逃げる手も▲3二角成でこれは自玉が狭すぎます。
 ならば開き直るしかありません。狙われた飛車を取らせて、そこで稼いだ時間を利用して勝負するしかないのです!!△5七金と打ち込んで最後の大勝負、金無双に火を放ちます。5七の地点で清算してから▲3四角成と取られて第5図の局面。戦いはいよいよクライマックスを迎えます。

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「勇敢に戦い、散った」という”フェイク”

第5図以下の指し手
△5九銀(第6図)
▲7一飛 △6一桂 ▲同飛成 △同 玉
▲7二銀成△5一玉 ▲8一龍(終局図)
まで107手でカメさんの勝ち
(消費時間=▲15分、△15分)

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 飛車を取られ、すぐさまかけた詰めろ。先手が受ければもう一勝負、詰ましに来るなら耐えきってみせようと思いつつも、自玉の危険にはなんとなく気づいていました。▲7一飛に逃げる手が選べないのが激痛で、仕方ない合駒には▲6一飛成~▲7二銀成がぴったり。斬り合うタイミングが一歩遅かった。しかし自玉の狭さ、飛車を渡す攻めは自分が選んだこと。▲7一飛で詰んでいることには△5九銀を打った直後に気づいたので、打ち取られることを受け入れる時間を得ることができました。悔しい敗戦を一度飲み込んで、最後は▲8一龍と入られたところで投了しました。カメさん対局ありがとうございました!

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 終盤の踏み込みをポジティブに振り返り、序盤の失策について原因を確かめる。この自戦記はそういう趣旨で書かれるはずでした。終局後から次局に至るまで私はそういう心境でしたし、作戦選択や準備といった部分の振り返りに注力し棋譜の解析は行っていませんでした。この記事の執筆にあたり、ソフトに読ませた結果浮かび上がったのは斬り合いの「正しさ」だったのです。

諦めるべからず、諦めざるあたわず。

再掲第5図以下の仮想手順
△4六桂 ▲同 歩 △4七銀 ▲同 金
△同成桂 ▲同 玉 △4六銀 ▲3六玉
△3五金 ▲同 馬 △同 銀 ▲4七玉
△4六銀 ▲3七角 △4九玉 ▲5八角成(仮想図)

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 第5図では即詰みが存在していたというのですから驚きです!!!△4六桂捨てから△4七銀と打ち込み、清算したところで△4六銀と出る手がありました。あれだけ使いづらかった銀が寄せに効いてくるのです。5七の地点ばかりに目が行くので全く見えませんでした。△4六桂さえ見えれば銀を押し出すイメージができそうなだけに悔やまれます。手数は長く寄せ間違える可能性こそあれど、どうせ踏み込むなら挑戦すべき手順です。

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 仮想図の△5八角成が重要で、ベタベタ打っては微妙につかまらない玉をうまく寄り筋に誘導できます。以下は△5七銀成から頭金まで。金駒を全て使い切るあまりにぴったりな詰み筋です。斬り合いで得た一瞬の隙を逃していたのですね。

勝てた将棋だった・・・。

うわああああああああああん!!!!!

カメさん対局ありがとうございました・・・!

改めて本局の振り返り

 本局から得た第一の反省は「準備を怠るな」ということ。むろんリアル第一の指す将ライフですから、できないのに無理やり準備をしても体や心を壊すだけ。ですが自信のない戦型に乏しい根拠で飛び込むのは判断ミスでした。対策される可能性があったとしても、得意形の左玉で勝負を挑むべきだったと思います。抽象的な準備に終わるほどリスクは高いわけで、むしろ「予想が外れたとしても、細かい準備をしておいた方が対応できる」と気づくきっかけになりました。予想通りの戦型で負けた本局と、予定外の流れで勝った将棋との比較ですね。この反省は続く7回戦~9回戦の連勝に大きく役立ちました。終盤についても同様です。勝負を捨てず、一方的な展開から一手差まで持ち込めたことでモチベーションを切らさずに済みました。本局の敗戦はその後の対局に向けて、良い流れを生み出してくれたのです。奇しくもカメさんが後の対局で挙げた勝利が、私の今期昇級という結果につながったことも印象深いです。
 それが、実際は逆転勝利を逃していたわけですね。第二の反省は「最後のあがきはしっかり時間を使って読め」。もし7回戦を戦う前にその事実を知っていたら、私は果たしてどうなっていたでしょうか。今知っただけでもめちゃくちゃ悔しいんですよ。当然なんですけれども。その数倍のショックが降りかかるのは、ちょっと想像したくないですね。長期棋戦の結果は色々な要素によって成り立っているのだなあと、なんとも不思議な気持ちです。残された今期最終局に向けては、「斬り合いの嗅覚は悪くなかった!」と肯定的に受け止めたいと思います。

昇級についてはまた後日

 そして、先ほど述べた通り9回戦の結果をもって正式に昇級が決まったのでした。ちょうど9回戦の自戦記を書いた時点では未確定で、10回戦は不戦と書く機会が無いなーというところでした。ただ来期の目標ですとか、B級2組について述べるのは時期尚早ですから詳細についてはここでは保留の一手。繰り返しではございますが、最終局は第6期の集大成だと思って頑張ります!!それでは今回もこの辺で。お読みいただきありがとうございました!!

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