将棋自戦記#26~第8期指す将順位戦第1局~vsたろいもさん

 みなさんこんにちは、やきそばです。6月に入り湿度と熱気を感じるようになった今日この頃。ついに指す将順位戦の開幕局を迎えました。今期も11局に渡る激闘の舞台へと足を運ぶときが来たのです。
 参加5期目の今年は2年連続3回目のB級2組。昨年は5勝6敗で降級こそ回避しましたが、悔しい結果で終わりました。5th、6thと完走していた自戦記の更新も止まってしまう不完全燃焼な一年間でしたね。今年は改めて昇級を目指すとともに、この自戦記シリーズの執筆時間をちゃんと確保して、計画的に半年を過ごしていこうと決心した次第であります。指す将順位戦は本当に楽しいので、そんなワクワクする戦いの日々を読者の皆さんと共有できればと思います!
 なお、自戦記の執筆については棋戦のルールで自由となっています。内容に関して何か不具合があれば一切の文責は筆者の私にありますので、何かご連絡下さいませ。それでは本編いってみよー!!

局前の準備~たろいもさん編~

 本局の対局相手はたろいもさん。今期から出場された初参加勢のおひとりです。今まで関わりの無かった方との出会いもまた、指す将順位戦の醍醐味ですね。ときおり配信など色々されているようで、ぜひぜひ対局をきっかけに仲良くなれたらな~とツイートを眺めておりました。
 将棋の中身へ視点を移します。たろいもさんの棋譜をチェックしたところ、どうやらオールラウンダーの様子。オーソドックスな四間飛車から横歩取りの激しい将棋まで、何でも指される方という印象でした。対抗形の居飛車を持つことも多いようで、私のメイン戦法である三間飛車には・・・右四間飛車を指している様子でした。右四間飛車!右四間ですか~~~。
 右四間飛車は去年の指す順で2戦2敗と苦い思い出のある戦法。これはきっちり対策をしなければいけません。たろいもさんの棋譜から情報収集をしつつ鈴木肇さんの本に目を通します。この辺の序盤検討も難しいところで、できることなら自分自身の棋風とマッチする変化を選びたいもの。いくら自分よしの変化だとしても、指し慣れない形には危険がつきまといます。あーでもないこーでもないと悩んだ末に辿り着いたのが下の2図

早石田のオープニングからノーマル三間。△6五歩の仕掛けにいかに備えるかが焦点。
右四間→袖飛車の振り直しを想定。本組みを急いで6筋の仕掛けを牽制する。

 想定1図はスタンダードなvs右四間エルモの序盤戦。以下多彩で複雑な変化が待ち受けていますが、今後も出番がありそうなので入り口の局面図のみ掲載します。棋友の方にVSを頼んで練習しましたが、残念ながら好感触を掴むには至らず。そこで想定2図を準備します。囲いよりも飛車側の陣形を優先する形で、途中の△6五歩からの超急戦さえ回避できればかなり有力。袖飛車からの圧迫をうまくいなせるかがポイント。どちらの図を選ぶかは、当日の流れ次第で決めることにして対局当日を迎えます。

想定よりも早くて、速い

第8期指す将順位戦B級2組1回戦
令和5年6月11日20時
於・将棋倶楽部24 大阪道場「自由対局室」
▲やきそば △たろいも(持ち時間各15分、秒読み60秒)
▲7六歩 △3四歩 ▲7五歩 △4二玉
▲6六歩 △6二銀 ▲7八飛 △6四歩(途中1図)
▲5八金左△6三銀▲4八玉△3二玉
▲3八玉 △4二銀 ▲7六飛 △7二飛
▲9六歩 △7四歩(第1図)

予定通りの立ち上がり。

 20時に対局開始。対局当日の夕食は唐揚げ。昨年行っていたゲン担ぎのチキンカツ定跡は、お惣菜の入手難易度を考慮して唐揚げへと変化しました。広義のチキンカツですね!揚げたてがとてもおいしい。
 私の先手番から自信を持って3手目に▲7五歩。石田模様を明示します。たろいもさんも慣れた様子でさくさくと手を進めます。▲4八玉と上がったところで△6二飛と右四間に構える手が予想手順でしたが、本局は△3二玉と自玉を優先。わずかな違いに迷いが生じます。攻め形が立ち遅れるなら、こちらから飛車側で動こうと▲3八玉△4二玉の交換を入れてから▲7六飛。対してノータイムで△7二飛。早々に痺れてしまいました。△6二飛も△3一金も省略して、ダイレクトに袖飛車に構える手順は想定外。浮き飛車を選択したのがミスでした。スピード感ある攻めが予想され、▲9六歩~▲9七角が間に合わない雰囲気です。ただ▲7七桂も自信がなく本譜の▲9六歩を決行。ビシッと△7四歩(第1図)の仕掛けを受けてしまいました。早くて速い後手の仕掛け。時間も一方的に使わされる流れで暗雲が立ち込めます。

早くも持ち時間に差が出てきている。

誘えぬ動揺

第1図以降の指し手
▲8六飛 △8二飛 ▲7六飛 △7二飛
▲7四歩 △同 銀 ▲6五歩(途中2図)△8八角成
▲同 銀 △6三銀 ▲7二飛成△同 銀
▲6四歩 △6九飛 ▲7九歩 △4五角(第2図)

決断の一手。自玉に不安はあるが仕方がない。

 第1図から▲8六飛が緊急手段。袖飛車相手に千日手をチラつかせて手を変えさせる作戦。条件が悪ければ本当に千日手も辞さない構えです。局面よりも時間を削らせる狙いですが、たろいもさんもノータイムで千日手を受け入れる格好。動揺を誘うつもりが自分ばかりが焦ってしまいました。策士策に溺れるとはこの事か。
 少考の後、腹を括って▲7四歩△同銀▲6五歩(途中2図)。「かかってこい!」と気合を入れて、まずは角を捌きます。直後の△6三銀が意表の一手。抑え込みから一転後手も軽く捌いて攻め合い勝ちを目指してきました。飛車交換はありがたい一方、自陣はバランスが悪く大駒の打ち込みに弱い形。攻める手段を早く見つけなければなりません。▲6四歩は次に▲5五角と打ったときに▲6三歩成~▲9一角成の狙いを作る手。自陣への飛車打ちには▲6九歩と苦心の受けを放ち、手番を握るチャンスを伺います。たろいもさんは△4五角と受けにくい桂取りで追撃。第2図を迎えました。

受けにくい桂取り。防戦一方は避けたい。

決戦を挑む勝負手

第2図以下の指し手
▲5五角 △3三桂 ▲5九金寄△6五飛成
▲6三歩成(途中3図)△5五龍 ▲7二と △8九角成
▲6一と △8八馬(第3図)

この歩成りが本局の流れを変える一手になった。

 ▲5九金寄は疑問手ながら結果オーライの一手。頼みの▲5五角を打った直後に△2七角成~△4九飛成の筋が見えてしまい、慌てて龍を追い払いました。後でAIに聞いた限りでは受かっているそうなのですが、さすがに怖い変化で焦りました。
 △6五飛成に思わしい手が無く▲6三歩成を決行。たろいもさんは△5五竜~△8九角成と踏み込む手順を選択。ここで代えて△6三同竜など辛抱されると困っていたかもしれません。本譜は斬り合いの流れになり、金銀を拾いつつと金も生存。結果的には勝負手が通る形に。△8八馬と取り合った第3図では視界が開けた感じがして、まだまだ戦えるぞと奮起していました。

角桂と金の交換で駒損。攻めの足がかりをどう作っていくか。

自玉のKY活動

第3図以下の指し手
▲6二と △2五龍(途中4図) ▲7一飛 △6一歩
▲同飛成 △5一銀打▲5二銀(第4図)

玉頭を攻められたときの耐久力がカギ

 寄せの足がかりを求めて▲6二と。次に▲7一飛~▲4一飛成~▲2二金が習いある狙い筋ですね。この攻めが回る前に後手がどう動いてくるかが問題ですが、本譜は△2五龍と玉頭を狙われます。仮に先述の▲2二金まで進んだとして、△2七竜~△1五桂が大丈夫かというのを丁寧に読みます。以下▲3八玉△2七角▲4八玉に横に効く駒が渡した飛車しかないので、清算して耐えていそうですね。ただ▲7一飛は2手スキなので、先に△1五桂や△4五角で狙われてどうか。感想戦では▲2一銀捨ての筋を指摘して頂きました。今見てみるとたしかにそれで大丈夫そう。
 実戦では△5一銀打と鍛えの入った受けの手が飛んできました。▲同と△同金では龍当たりで、後手の玉形が安定してしまいます。そこで▲5二銀(第4図)と打ち込んだのが自慢の一手。後手も持ち駒を投入しているので、ここは手厚く切れないように攻めを繋ぎます。

時間の使いどころと踏んで、この付近で長めに考慮を入れる。

反撃をかき分けて

第4図以下の指し手
△5二同金▲同 と △4六桂(途中5図)
▲2八玉 △4五桂 ▲4二と △同 銀
▲4一銀 △3三玉 ▲4六歩 △5五馬(第5図)

後手の勝負手。代えて△5二同銀▲同龍で△4六桂を本線で考えていた。

 ▲5二との一手で秒読みに突入。直後に△4六桂!(途中5図)と鋭い一手が飛んできます。取れば△7四角から紛れてしまいます。逃げては△5八桂成が気になりますし、そのままでも玉が急に狭くなっていて危険です。とても怖いですがここは勇気を振り絞って▲2八玉と寄ります。実際ここで△4五馬には▲4二とから後手玉に詰みがあった模様。実戦は△4五桂から上部脱出を試みる展開になりました。△5五馬と引き付けて第5図。手厚い上部で玉を寄せきれるか。手に汗握る最終盤となりました。

▲4六歩と懸案の桂馬を外して一安心。だが後手陣には大駒が集結し、寄せの構図が描きにくい。

玉を追い切って1勝目

第5図以下の指し手
▲3二金 △2四玉 ▲2六金(第6図)
△4六馬 ▲2五金 △同 玉 ▲2六飛
△3五玉 ▲4六飛 △同 玉 ▲6六龍
△3五玉 ▲4七桂 △2四玉 ▲4二金
△4四角 ▲1五角 △1四玉 ▲2五銀
△同 玉 ▲1六龍
まで、83手にてやきそばの勝ち
(消費時間=▲22分、△21分)

龍を追ってしまうのが分かりやすいと思った。

 ▲3二金~▲2六金(第6図)と投入したのが功を奏し、以下は先手が押し切る展開になりました。ここは先に▲3六桂と縛る手も見えるところで、とはいえ△同龍▲同歩△4六馬では紛れるような気がしてなりません。コビンが開かないように2六の地点から打つ手が見えたのは幸いでした。以下は▲2六飛~▲4六飛と手順に馬を抜いて、遊んでいた大駒を引き寄せる▲6六龍が決め手。一間龍の形になって勝ちを意識しました。とはいえ詰み筋はギリギリまで見えず、内心ひやひやしていました。
 最後は▲3三角成の両王手を含みに▲1六龍と回って後手の投了。今年もどうにか開幕戦を勝つことができました。たろいもさん、対局ありがとうございました!

直前の銀捨てがなかなか見えなかった。

全体の振り返りと、2回戦に向けて

 本局は用意した作戦が空振りする展開から辛くも勝負手が通り、速度計算に集中して逆転勝ちを収めた一局でした。少なくともストレートに袖飛車に構える手は想定しておくべきで、準備の時間不足が響いてしまいましたね。
とはいえ準備が無駄だったということはなく、日ごろから後手の低い陣形をどう崩すか意識していたことが、対舟囲いの寄せに活かされたかと思います。本線から外れた変化をどう想定するかは、今後の課題ですね。
 また準備にあたっては体力回復を優先して日々を過ごせたのが大きく、対局中は集中力を維持できました。△2七龍~△1五桂の筋などを読んでいる感触には充実感がありましたね。一方でメンタル面は対局直前まで不安定な状態が続いたので、あわよくば心身両方のバランスを整えていきたいです。

 2回戦の対局はひぐらしさん。昨年は7回戦で対局して敗れています。また昨年の私は2回戦の負けをきっかけに流れを悪くしていきました。勝敗と同時に、日々の過ごし方という意味でも、ここを乗り越えられるかどうかが今期のカギを握っていそうです。まだまだ先の長い戦い、精一杯楽しんで力を出し切るよう頑張ります!
 それでは今回はこの辺で。お読みいただきありがとうございました!!

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