将棋自戦記#31~第8期指す将順位戦第6局~vs tamunetさん

 みなさんこんにちは、やきそばです。蝉の声が聞こえなくなってきて、それはそれで寂しいなとわがままな感傷にひたる今日この頃。皆様は夏の後半戦いかがお過ごしでしょうか。
 私はお盆休みをしっかり満喫して、ゆるゆると8月の後半を過ごしてきました。リフレッシュ期間の先に待ち受けているのはそう、指す将順位戦ですね。今期も早いもので全11回戦中の6回戦を迎えました。終盤を占う上でも非常に大事な折り返しの1局をお送りいたします!さあ行くよー!


局前の準備~tamunetさん編~

 本局の相手はtamunetさん。指す将順位戦には第2期から参加されているベテラン。今期のB2では最古参という位置付けです。私が初参加だった第4期の11回戦で対局し負けています。当時は急な仕事などで予定が大幅にズレてしまい、深夜に対局して頂くなど大変な迷惑をかけてしまいました。それでも温かく接して下さったtamunetさんの優しさは忘れられません。
 そんなtamunetさんは一時B3へ降級していたものの、今期からB2へ復帰されました。棋風も正統派居飛車党から三間飛車党へと大転換をされています。4年ぶりの対局ということで感慨深さを覚えつつ、新鮮な気持ちで相振りを念頭に準備を進めていきました。

将棋ウォーズの実戦譜から

 tamunetさんは相振りにおいても一貫して三間飛車を採用されています。相振りでは飛車の位置と囲いの組み合わせが重要ですが、「石田+平美濃」が最も多いパターン。自然に組み合っていけば参考図のような将棋が予想されます。こちらとしては浮き飛車には矢倉で盛り上がっていく指し方が理想ですね。ただ実戦経験はそこまでないので、石田側の猛攻を浴びると危ないかもしれません。具体的な局面までは検討しませんでしたが、「①美濃に組んでから盛り上がる」「②金無双vs平美濃にして先攻逃げ切りを目指す」「③金無双から矢倉組み換えで圧迫を図る」の3パターンから、実戦の流れにあわせて方針を決めることにしました。
 コンディション調整の方はというと、5回戦の負けを受けて勉強内容を修正しました。特にお盆休み明け以降では学習量自体も削減して、疲労回復を優先することに。精神的な消耗も激しかったので、対局直前まで平穏に過ごすことを意識しました。結果が出ないことや、24が低調であることにも焦りはありましたが、あくまで落ち着くというところを最優先に当日を迎えます。

緊張の駒組み

第8期指す将順位戦B級2組6回戦
令和5年8月26日13時
於・将棋倶楽部24 大阪道場「自由対局室」
▲tamunet △やきそば(持ち時間各15分、秒読み60秒)
▲7六歩 △3四歩 ▲6六歩 △3三角
▲7八飛 △2二飛 ▲7五歩 △2四歩
▲7四歩 △同 歩 ▲同 飛 △2五歩(途中1図)
▲4八玉 △2六歩 ▲同 歩 △同 飛
▲3八玉 △2四飛 ▲2七歩 △7三歩
▲7六飛 △5二金左 ▲6八銀 △4二銀
▲2八玉 △1四歩 ▲3八銀 △1五歩 (第1図)

4手目△3三角からのびのびと。

 13時を回って対局開始。後手番から三間飛車vs向かい飛車と予想通りの立ち上がりになりました。3手目が▲6六歩だったのでこちらの角道は開けたまま駒組みを進めます。途中1図では▲3四歩と掠め取る手を気にしていて、次の△2六歩を受けてくれれば△2四飛と浮いて横歩を守れるという理屈です。空中戦めいた序盤戦だったので、どこかで乱戦に踏み込まれるのではないかとヒヤヒヤしながら盤面を見つめていました。
 とはいえtamuentさんもそこまで無茶はしたくない様子。▲7六飛と浮き飛車に構えてからは陣形を整える流れに。第1図で先手は美濃囲いを確定させ、こちらは囲いを保留しつつ△1五歩と端を突き越します。次に△4四角~△3三桂と構えればいつでも端攻めが利くので、ここは早くも手ごたえを感じていました。他方自陣整備は迷うところで、矢倉か美濃か金無双か…。決めかねた私は△5二金左でお茶を濁して左辺に手数をかけていたのでした。

既に一歩持っているのが非常に大きい。

攻撃開始!

第1図以下の指し手
▲6七銀 △6二玉 ▲9六歩 △7二銀
▲7七桂 △4四角 ▲5六銀 △3三桂
▲9七角 △7一玉 ▲5八金左 △1六歩 (途中2図)
▲同 歩 △1七歩 ▲同 香 △2五桂(第2図)

3分弱の考慮で端攻めを敢行する。

 さすがに居玉で仕掛けるわけにもいかず、結局一旦平美濃に組み上げます。△6四歩から矢倉に組みたいところですが、どこかで▲6五歩とちょっかいを掛けられる手を警戒して一旦見送り。美濃から将来の盛り上がりを狙う方針に決めました。▲9六歩を受けなかったのも1つポイントで、端攻めはこないだろうと見込んで陣形の安定を優先させました。△7一玉と潜っておいて、先手も本美濃を完成させたところで考慮に沈み、勇躍△1六歩(途中2図)と仕掛けました。
 これは部分的には受からない形で、後手としては一本取った形となります。とはいえこれで攻めつぶせるかというと話は別で、完全な1筋突破にはある程度時間が掛かります。当然考えられるのが先手の反撃。△7一玉型に構えたのは反撃の当たりを弱める意図があったわけです。この辺りは良い判断だったと思う一方、端攻めが既に部分的に受からないのであれば矢倉形の駒組みを進めるのも一局だったでしょうか。序盤の駆け引きはいざ指してみると「分からないなぁ」と手が止まる部分も多く、まだまだ勉強が必要だと思い知らされます。

ここまでは一直線。次の応手で本局の流れが決まる。

勉強の成果を発揮できるか

第2図以下の指し手
▲6五桂 △1七桂成 ▲同 桂 △1四飛(途中3図)
▲2六桂 △1六飛  ▲1八歩 △1五飛(第3図)

1六の歩は飛車で取りに行く。

 第2図から先手は▲6五桂。次に▲7四歩や▲7三桂成からの強襲が見えています。後手陣も一手で潰れるわけではないですが、自玉が飛車のライン上にあるので神経を使います。形次第では間の銀を攻める手が一撃必殺になりかねないので、注意して反撃筋を考えます。
 そんな風に警戒心も抱きながら、△1七桂成~△1四飛(途中3図)と攻めを続けていきました。△1四飛では△1六香も有力で、先手も受けの手段に困っていそうではあります。飛車から攻めを繋げたのは、本譜の進行から第3図の△1五飛を狙い筋にしていたからです。これは▲1八歩と受けさせた形で飛車を引くことによって次の△1六歩を確実な攻めにするというもの。「相振り飛車を指しこなす本」で見た筋の応用で、ここでは特に有効に思えました。手順中、先手の▲2六桂は△1七飛成の強襲を防ぐ意味で重要な一手でしたが、流れに沿って第3図まで辿り着けたので後手としては大満足の取引になったと思います。

左辺に逃げられるリスクが高いからこそ、確実に崩す手段を選ぶ。

守備のターン

第3図以下の指し手
▲7四歩 △同 歩 ▲7三歩 △同 桂
▲同桂成 △同 銀 ▲6五銀 △7二金(途中4図)
▲8五桂 △8四銀 ▲7四銀 △7五歩(第4図)

受け間違いが頓死に直結しかねない。緊迫の時間帯。

 ここで再び先手に手番が移ります。▲7四歩△同歩▲7三歩が反攻作戦の幕開けを告げる手筋の一着。手抜くほどの余裕は無いので清算に応じて、▲6五銀と出てきたところで△7二金(途中4図)が覚悟の受け。次の▲7四銀には△同銀▲同飛△7三歩と納めてしまおうと思っていました。部分的には△7五香や△6二玉など、色々な受け方が考えられる局面。既に秒読みに入っており判断が難しかったです。
 tamunetさんが選んだ継続手は▲8五桂。これもまたうるさい一手で銀をかわすか否か悩ましい。ここさえ凌げばの「ここ」ほど怖いものはありません。桂先の銀から△7五歩(第4図)と飛車の横利きを主張して、これで切れているだろうとtamunetさんに委ねます。無理攻めも無理が通れば立派な攻め。本当にこれで受けきっているのか、ハラハラしてばかりで生きた心地がしませんでした。

怖い~~!と画面の前で大声を上げる。オンライン対局だから許される。

猛攻を断ち切れ!

第4図以下の指し手
▲7五同角△同 銀 ▲7三歩(途中5図)△8二金
▲7五飛 △同 飛 ▲7二銀 △6二玉
▲8三銀上成△同 金 ▲同銀成 △5五角
▲7二歩成 △5一玉(第5図)

これは耐えているというのが直感だった。

 まだまだ続く先手の猛攻。騎虎の勢いというもので、もはや立ち止まることは許されません。7五の歩を角で食いちぎっておいて、銀がずれたところで▲7二歩(途中5図)が先手の失着だったか。△8二金と寄ったときに歩の拠点に大きな効果がなく、むしろ後手陣が安全になったように思えたのです。ここでは代えて▲7三桂成や▲7五飛~▲7三銀打といった手の方が怖かったです。厳密には足りない気もしますが、うるさい攻めが続いたかもしれません。感想戦でもこの辺りがひとつ話題になりました。
 本譜は自陣を荒らされながら、△5一玉(第5図)まで逃げることができました。先手は持ち駒不足が痛く、▲3二金と縛っても次に詰ます駒がありません。私としては優勢を意識しながら「駒を渡さないように寄せねば」と次の難題に取り掛かる心境でした。いよいよ着地を目指して、最終局面に突入です。

ここまでくれば一安心。なお△1六桂を決めておく手が常にあった模様。

”寄せの手筋”で3勝目

第5図以下の指し手
▲4六歩 △1六歩 ▲3二金 △4六角
▲4七金 △1七歩成 ▲同 歩 △同香成
▲同 玉 △1六香(第6図)▲2八玉 △1七角
▲2九玉 △1八銀 ▲同 玉 △3九角成(終局図)
まで、94手にてやきそばの勝ち
(消費時間=▲22分、△31分)

決め手。もう1枚飛車があるので香捨てが有効だった。

 巡ってきた寄せのチャンス。最初の仕掛けから随分と時間が経過して、いよいよこちらが攻める番が回ってきました。ここからは明快に寄せきる必要があります。ひとたび攻めが緩んでしまえば逆転しかねません。
 飛車の成り込みを含みに△1六桂と打ち込みたいのですが、奥深くまで読み切ることができません。安全策として△1六歩を着手。1七で清算すればおのずと寄せの道が開かれるだろうと、ここに至って当初の狙いを実現させます。次に△4六角と飛び出して、コビンから詰めろを掛けます。ここはひょっとすると即詰みがあったかもしれませんが、逃すとひどいことになるのであくまで安全に。ここで飛車のラインが復活したのが大きく、△1六香(第6図)が▲同玉に△1五飛打の詰みを見た決め手になりました。玉を引く手にも△1七角から開き王手の手筋で即詰みに。どこかで見落としをしていないか、最後の最後までじっくり確認して寄せきることができました。tamunetさん対局ありがとうございました!

無事即詰みに討ち取った。

振り返りと、次局に向けて

 本局は終わってみれば快勝でしたが、感触としては激戦そのものでした。「作戦勝ち→先行で仕掛けに成功→無理攻めを誘発→受け切り→寄せ」というのは相振り(というよりはタテの将棋)における一つの理想ですが、実戦で実現させるのは本当に大変ですね。今回は端攻めが既習の攻め筋だったこともあり、反撃が来るだろうと心構えができていたのが良かったです。思えば相振り飛車自体が以前からの重要課題だったわけで。勉強を続けてきたことがこうして一定の結果に結びついてホッとしている気持ちもあります。このまま良い感覚を積み上げて昇級争いへの浮上を狙いたいですね。
 6局指して3勝3敗。ここまでは前期と同じ道を辿っています。昨年はここから3連敗と辛い思いをしました。5回戦で切れかけた気持ちをなんとか勝利で繋いで、9月がさらなる正念場です。対局本番のその瞬間に力を発揮できるよう、今まで以上に調整というものを重視して日々を過ごそうと思います。

 7回戦の相手は紫陽花さくらさん。7、8回戦と連続して初参加勢との対局ですね。そして、ついに将棋系Vtuberとの対局が実現しました。指す順で指した人が後からVになった例はあるのですが、活動中の方と指す順で対決…というのは初めてですね。どのような将棋になるか早くも楽しみです。
 次局はわずか1週間後の9月2日に実施予定。スケジュールの都合とモチベーション維持のためにあえてタイトな日程を組んでみました。この選択も果たして吉と出るか凶と出るか。よければ次も応援して下さい!ここまでお読みいただきありがとうございました!!

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