将棋自戦記#9~第5期指す将順位戦第9局~vs天城こじろ~♪さん

みなさんこんにちは!芸術の秋、将棋の秋、やきそばの秋。どうもやきそばです。今回は指す将順位戦9回戦の自戦記です。指す順ロスが近づいている今日この頃ですが、1局1局の振り返りを楽しむことでまた1つ思い出作りをしていきたいなと思います!

局前の準備~天城こじろ~♪さん編~

 本局開始前の時点で5勝3敗。上位に1敗~2敗勢が並んでおり昇級には絡みづらい成績でしたが、順位が2位ということもあり他力ながら昇級の可能性はまだまだ残されているという状況。今回も意気揚々と棋譜検索の場に突入し、こじろ~さんの棋風を調べていくことにしました。
 判明したことを一言で言えば「力戦派のオールラウンダー」だということ。初手や3手目、後手番の2手目・4手目も「一本道」の手順がほぼなく、非常に戦型が絞り辛いことが分かりました。強いて挙げるとすれば振り飛車は四間飛車に限定して指されているようでしたが、そもそも振ってくるかどうかもわかりません!「相居飛車」「対四間飛車」「相振り」「私の振り飛車に対抗形の力戦」の4択というのが戦型予想と言えなくもないのですが、特定の形に絞ることは諦め、地力を発揮できるよう詰将棋や次の一手などを解いて過ごしていました。

 というのも、対局1週間くらい前までの私は棋力も気力も充実している状態でした。8月末~9月頭ごろに将棋倶楽部24の最高レートを更新して以来、長期的に1000前後のレートを維持することができていたのです。1度レート更新に成功しても、すぐに溶かして更新前の状態に逆戻り…というのが私のパターン。「確実に棋力が向上している!」と、このときばかりは充実ぶりを意識せざるを得ませんでした。強いて言えばあと1回でもレート更新したかったですが・・・!さすがに上級タブを維持するのは難しいですね。

 そんな鼻高々な私ですが、にわかに暗雲が立ち込めだしたのが対局のあった週のこと。24で突如連敗が始まり、私のレーティングがストップ安に!レートが溶けるなんてままあることですし、数値にこだわってはいけないと頭では分かっているものの、不安な胸中を晴らすことなく対局当日を迎えます。なお、ざっくばらんながら決めた作戦は以下の通り!

先手番なら
・▲7六歩に△8四歩なら角換わり志向(横歩は避ける)
・▲7六歩に△3四歩なら▲6六歩で様子見。
 →対抗形ならノーマル三間かノーマル四間
 →相振り模様なら高田流を目指す。
後手番なら
・▲7六歩でも▲2六歩でも△2手目は3四歩
・先手が振れば高田流志向。振らなければ三間か四間なのは同上。
・但し▲7六歩と▲2六歩が3手目までにセットで出現した場合のみゴキゲン中飛車。

 選択肢はいつも通りですが、思想としてはノーマル振り飛車を志向する点が普段と違います。特に先手番で▲7五歩からの石田流を選ばなかったのは、高田流以外の相振りを避けたかったから。相振りはそもそも力戦調になりがちですし、普段から感覚で指している部分もあり力戦派のこじろ~さんと戦っていい勝負にできる自信はありません。対四間の急戦は勉強中ですが、これも定跡形にはならないと判断して左玉に決定。同様に相居飛車も、経験のある角換わり調以外の力戦を避けようと決めました。指し慣れない戦型になることは予想できたので、せめて「自陣だけでも見慣れた形」に持ち込んで戦おうというのが今回の趣向でした!

まさかの持久戦

第5期指す将順位戦B級3組 9回戦
令和2年10月1日21時
於・将棋倶楽部24大阪道場「レーティング対局室」
▲やきそば △天城こじろ~(持ち時間各15分、秒読み60秒)
▲7六歩 △3四歩 ▲6六歩 △8四歩
▲7八飛 △8五歩 ▲7七角 △4二玉
▲5八金左△6二銀 ▲6八銀 △6四歩
▲4八玉 △1四歩 ▲1六歩 △5二金右
▲3八玉 △6三銀 ▲2八玉 △9四歩
▲3八銀 △3二銀 ▲6七銀 △3一玉
▲9六歩 △3三角 (第1図)

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 先手番なら▲7六歩がいつもの手段。対してこじろ~さんは△3四歩と角道を提示。▲7五歩と突きたい欲を抑えて▲6六歩。対する4手目△8四歩で対抗形に決まりました。可能性はあると思いつつも、このオープニングには相振りを採用する印象のこじろ~さん。対抗形を選んだのはちょっと意外だなと思いました。飛車の振り場所は迷ったら三間飛車。ノーマル振り飛車の定跡には疎い私ですが、意外とノーマル三間も数はこなしています。こじろ~さんの方はというと左美濃でじっくり持久戦模様の展開に。これもまたイメージにはない指し方でした。互いに速攻を仕掛けることもなく第1図の△3三角までは穏やかな進行となりました。

腰掛け銀からの紆余曲折

第1図以下の指し手
▲5六銀(途中1図)△5四銀 ▲6八飛 △6二飛
▲4六歩 △7四歩 ▲6五歩 △同 歩
▲3三角成△同 桂 ▲7七桂 △7三桂
▲8四角 △6三飛 ▲7五歩 △4四角
▲7四歩 △7七角成▲7三歩成△6四飛
▲7五角 △6一飛 ▲6四桂 △同 飛
▲同 角 △6八馬(第2図)

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 上図は第1図の直後に▲5六銀と出たところ。この手の狙いは△4四歩を突いてもらうこと。△4四歩なら▲6八角~▲7五歩といつもの石田流を組みたいなという願望を込めた手。左美濃というよりはむしろ穴熊相手に指すことが多い手で、本局も持久戦志向ならと出た銀でした。対するこじろ~さんは△5四銀!これは軽率でした。右四間飛車のにおいがぷんぷんします。何を隠そう私は右四間飛車の対応に悪戦苦闘している一人。さすがに石田流で相手にするのには慣れてきましたが、ノーマル振り飛車では未だに戦い方が分かっていません。本譜では早めに6筋に振り直して、積極果敢にこちら側から仕掛けていこうと開き直ったのが功を奏しました。おそらく△4四角とこじろ~さんの方から角を打ち直した手が緩手で、▲7四歩成から一気に攻め合った第2図の時点では有利を意識します。こうなれば戦力差で美濃囲いへの攻め合いを制してしまおう!とテンションが上がります。

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飛車の利きだって3万回確認!!!!!!

第2図以下の指し手
▲6八同金△7九飛 ▲6一飛 △7二桂
▲5三角成△同 金 ▲9七角 △7三飛成(途中2図)
▲7四歩 △8三龍 ▲9一飛成△6四桂
▲5五香 △2二玉 ▲5四香 △同 金(途中3図)
▲8八角 △8二角 ▲8一龍 △5六桂(第3図)

 ▲6八同金と手を戻してからは攻め筋を考える時間。▲9七角打と重ねて打ってから▲5三角成を結構する攻めや、先に角を切ってから▲9七角の大技などが見えますが、それだけでは攻めが足りないように思えて▲6一飛。この位置に飛車を下したのは▲6二とから露骨に攻めるため。ここでこじろ~さんが放った△7二桂が鮮烈な勝負手で、私は催促されたとばかりに▲5三角成と攻め込みます。よっしゃよっしゃ、苛烈に攻め立てるぜ!とウキウキしながら▲9七角を打ち込むと、直後に△7三飛成!!!!!

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 目の前が真っ白にも真っ黒にもなりました。実際視界がチカチカしたんだと思います。と金を奪って自陣に引き上げた竜が、燦然とした輝きを放ちながら5三の金にヒモをつけているではありませんか!局面を認識すると、今度はカーーーッ!と頭に血が上るのを感じます。まだ先手が余している局面だと思いますし、対局中もそういう認識でした。実際我が家の水匠も先手+数百点と評価してくれています。ただ、実戦的にも心理的にもこの将棋はこのミスに尽きるでしょう。代えて角取りを無視して▲6二との攻めを決めてしまうか、まだしも先に▲9七角を打つべきだったかもしれません。この飛車引きが見えなかった要因は読みの甘さ。特に6四の地点に角が居たために「このと金にはヒモがついている」と角を成ったタイミングの位置関係を認識できなかったことが問題でした。いやぁ・・・。縦の利きだって見落とすとすときはあっさり見落としてしまうものですね。

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 最後のチャンスだったのがこの局面。感想戦の際に観戦してくださっていた方から指摘を受けたのが▲5五銀と出る手。△同金には▲6四角だし、他の手も桂のアタリを避けながら銀を活用できそうです。こういう軽やかな手はとても勉強になりますね!しっかり心に刻んでおきたいと思います。実戦は自陣龍がいる後手陣に対して攻め方がわからず、△5六桂の二段活用を許してしまいました。直前の△2二角が美濃囲いをにらみつけているのも抜群ですね。森内九段が言った2回目のミスが命取りとはまさにこのことで、1度目の失着から立て直しに失敗した第3図以下は、いいところなく攻め切られてしまいます。

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ずるずると失点が積み重なる

第3図以下の指し手
▲同 歩 △3六桂 ▲1八玉 △1五歩
▲5七金 (途中4図)△1六歩 ▲3六歩 △4六角
▲同 金 △8一龍 ▲2八玉 △4四香
▲2六桂 △2五銀 ▲4五歩 △7八飛
▲7九銀 △8八飛成▲同 銀 △4五香
▲同 金 △同 金 ▲3七桂打△2六銀
▲同 歩 △3六金 ▲5五角 △3五桂
▲6二飛 △2七金打▲同 銀 △同 金
▲3九玉 △8四角(第4図)

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 △3六桂を決められても▲1八玉で大丈夫という読みでしたが、△1五歩がぴったりすぎて痺れます。こうやってペースを握った状態から鋭い攻めを繰り出すのがこじろ~さんのパワー。▲5七金(途中4図)は渾身の勝負手で、▲3六歩と取り切ればギリギリ生きているという思想。実際は△1七銀と捨てる手があって、▲同桂に△1六歩と取り込んでアタリをきつくすれば受け無しになっていたそうです!なるほど・・・。

 本譜はその手順こそ現れませんでしたが、△4六角と切って竜を抜く手など、依然としてこじろ~さんは攻めを緩めません。こうなると自陣龍が受けによく働いており、冷静さを欠いた私には反撃の筋が読めません。どうしても緩い手が続いてしまい、最後には反撃のために打った飛車を王手飛車で狙われてしまう始末!そもそも角の利きも見えてないでお兄さん!!

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負けを受け入れる時間

第4図以下の指し手
▲4八金 △6二角 ▲2五桂 △5九飛
▲4九金 △4七桂成▲3三桂成△同 銀
▲同角成 △同 玉 ▲4五桂 △4二玉
▲3三銀 △5一玉 ▲5五香 △5三歩
▲4二銀打△6一玉 ▲5三桂不成△同 角
▲同銀成 △3八金
まで128手で天城こじろ~♪さんの勝ち
(消費時間=▲15分、△15分)

 第4図では1手詰があったようですが、そこは手順のアヤもあり飛車を取られる形に。ここに至るまで多くの失着を重ねた私にとってはもはや些細な問題でした。むしろ、私の方が投げ所を見失っているような状態。最後は時間をかけて詰まない玉に王手をかけ続け、頓死筋を誘うように追い回します。投げなきゃいけない!と頭では分かっていても、投了のボタンが押せないのです。前期にB2から降級したときは何とも思わなかったものですが、この投了は実質的にB2復帰への道を閉ざしてしまうもの。それを受け入れる時間が私には必要でした。不要なプライドなのかもしれませんね。プロが順位戦で降級したり、タイトルを失冠する瞬間には、この数十倍の負荷が襲い掛かるんだろうなと想像してしまいます。感想戦では「怖かった」としながらも、丁寧に読み切って最後までこじろ~さんは逃げ切ります。最後は詰めろを掛けて、一手違いの形を作って頭金でとどめを刺してもらいました。

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振り返りと次局に向けて

 序盤に得たリードを自らの手で放してしまうという意味では、ひどい逆転負けだったと思います。一番勉強量が少ない中盤に失着があったので、弱点が明るみに出たような将棋だったのかもしれないですね。また1つずつ精進していきたいと思います。
 これで今期の星取りは5勝4敗となりました。残り2局を連勝すれば7勝4敗と立派な成績が見えますが、上位陣の直接対決がほぼないことを考慮すると入替戦に入る可能性もかなり低いのではないでしょうか。こればっかりは他力である以上、あまり深く考えないほうが良さそうです。一縷の望みにかけて残りの対局を頑張ることには変わりありませんし、そもそも今期の勝ち越しも決まっていません。連敗だと負け越しですから、これで心を折ることなく最後まで走り切ります!
 好材料があるとすれば、このnoteを普通に書くことができているという事でしょうか。負けた直後は本当に、消えて無くなってしまいたいくらいのショックを感じていました。まさかこの1敗でここまでダメージを喰らうとは自分でも思っていなかったのでびっくり。少しだけ時間をおいて書いてみれば、意外とすらすらここまで書き上がりこれまたびっくり。これで立ち直れるなら、どんな結果に終わろうと楽しい指す順ライフを(来年も)送れそうな気がします!気が早いですかね!?

 次局のお相手はファンタさん。振り飛車党との情報を得ています。k2lowさんとの対局が印象に残っています。何より、最終局の不戦が決まっているファンタさんにとって、私との10回戦が指す順5thのラストランということになります。今期最後の1局に臨まれるファンタさんの意気込みにしっかり応えられるよう、相応の準備をしたうえで臨みたいと思います!
 さて今回も長くなりましたがこの辺りで。指す順が終わったらこの自戦記シリーズは一体どこにいってしまうのでしょうか。何か次にやることを考えておきたいところですね。ではまた、次回をお楽しみに!

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