将棋自戦記#22~第6期指す将順位戦第11局~vs動点Pさん

 みなさんこんにちは、やきそばです。参加して3期目、自戦記を書きはじめて2期目となる指す将順位戦も今期の最終局を迎えました。こうして自戦記を書いているということは!!そうです。無事に今期も完走することができました。これにて今期から設置された「皆勤将」の称号を獲得となります。走り終えた達成感と寂しさが混じった独特な感慨に包まれていますが、私にはやるべきことがございます。それこそがこの自戦記!最終局についてもしっかり振り返りを行って、私なりのゴールに向かっていこうと思います。ではでは本編いってみましょー!!

局前の準備~動点Pさん編その2~

 動点Pさんとの対局は通算3回目。指す順では昨年の8回戦以来2回目となります。前回はゴキゲン中飛車を採用し、動点さんの居飛穴模様に対して積極策から快勝しています。今期は最終局での対決ということもあって、リーグ戦序盤からその動向を注視していました。普段は右玉やミレニアムを得意とされているショーダン門下系の将棋を指されているので、その方針に変化がないかというのが1つのポイントでした。

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 A図は今期の2回戦、▲動点Pさん─△ドラキーさん戦の局面。中飛車党のドラキーさんを相手にどんな作戦が出るか注目していました。そこで動点さんが選んだのは当時流行の兆しを見せていた「こいなぎ流右玉」。今まで対中飛車では右玉の採用例が少なかったので、これには私も非常に驚かされました!動点Pさんはこの対局を含め開幕3連勝と絶好調。どのような作戦で行くべきかとても悩みました。

 風向きが変わったのは10月中旬。当時8勝2敗だった私は最終局を前にして昇級が確定します。本局をノーリスクで指せるようになり、プレッシャーが取れてずいぶん楽になりました。対局を楽しむことにより重点を置けるようになった私は「指したい戦法を指す」という指針を再設定。右玉を対策するのではなく、右玉を徹底的に避けて自分のやってみたい形を指すことにしました。

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 B図が今回の作戦。ミレニアムに対して「中飛車+▲5七銀型」から▲4五歩と仕掛けて中央を狙うもの。アマチュア有志の電子書籍で紹介されている形です。左銀を繰り出す分かりやすさが魅力的で、ミレニアム党の多いB級3組ならいつか出番があるだろうと温めていた作戦です。八十さん戦で本格採用を目指しましたが、ミレニアムにはならず実現していませんでした。参考にした本では四間飛車の作戦として紹介されていますが、「ミレニアムに対して中飛車振り直し」が骨子なので恐らく三間飛車でも採用可能です。「対局経験のある動点Pさんなら私の三間飛車・中飛車を意識しているだろう」「予定外の四間飛車に対して、あえて自信のあるミレニアムから変化することはないだろう」と予見して採用を決めました。問題点は私自身の経験不足。昨年の対局では対ミレニアムの経験不足を理由に中飛車を指しているので、ある意味では矛盾しているのですが・・・。指したい相手にぶつけたい作戦をぶつける。そんな機会が真剣勝負の舞台として用意されているのであれば、やるしかありませんね!最序盤で手順を間違えないよう確認しつつ当日を迎えます。

淡々と予定の順に

第6期指す将順位戦B級3組11回戦
令和3年10月30日20時半
於・将棋倶楽部24 大阪道場「レーティング対局室」
▲動点P △やきそば(持ち時間各15分、秒読み60秒)
▲2六歩 △3四歩 ▲2五歩 △3三角
▲7六歩 △4四歩 ▲4八銀 △4二飛
▲6八玉 △6二玉 ▲5八金右△7二玉
▲7八玉 △8二玉 ▲5六歩 △7二銀
▲6六角 △5二金左(途中1図)
▲7七桂 △6四歩 ▲8八銀 △6三金
▲7九金 △5四歩 ▲3六歩 △5二飛
▲8九玉 △4二銀 ▲6八金寄△5三銀
▲3七桂 △9四歩 ▲9六歩 △6五歩(第1図)

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 動点Pさんの代名詞(?)とも言うべき20時半から対局開始。本局は今期を通じて初となるレート戦となりました。当日の昼頃に自分が頑張ればレート差400を実現できることに気づくも、逆にレートを溶かしてしまい不穏な空気が立ち込めておりました。もう少しで全局フリー対局を達成できたのに!とちょっぴり残念な気持ちです。
 それはさておき、対局は予定通りの進行となりました。動点さんの▲6六角がミレニアムの意思表示で一安心。こちらは△5二金左(途中1図)と先に美濃囲いを急ぎます。四間飛車から△5三銀型を目指すため、うっかり左銀を動かさないようにするのが大切です。先に高美濃を作ってから中央に駒を集めて第1図。先後の差はあれど準備してきた通りの仕掛けができました。多少の考慮は入れつつここまで互いに淡々と指し進めている印象です。

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熟慮が見せた幻惑

第1図以下の指し手
▲5七角 △5五歩 ▲同 歩 △6四銀(途中2図)
▲7八金寄△5五銀 ▲2四歩 △同 歩
▲5三歩 △2二飛 ▲6五桂 △6四歩(第2図)

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 △5五歩の突き捨てを入れてから△6四銀(途中2図)が中央突破を狙って気持ちの良い仕掛け。動点さんはここで5分超の長考に沈みます。先手としてはどのタイミングで反発していくかが問題。後手としては2筋で暴れてくれれば、その間に中央を攻めて先に敵陣に火をつける狙いがあります。
 動点さんの下した決断は▲7八金寄で、△5五銀と出たタイミングから反撃に出てきました。長考にはすぐの▲2四歩を予想していたので、この一手のずれで私は判断を誤ることになります。▲5三歩~▲6五桂と先に5三を叩いてくる手順が見えませんでした。桂跳ねが先とばかり思っていたので対処がわからなかったのです。本譜の△2二飛でも後手十分の将棋ですが、既に敵陣との距離感を喪失しており気分は劣勢。幻惑に包まれたような感じです。続いて△6四歩(第2図)と桂取りに打った手が最初の失着でした。

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優勢に気づかぬまま

第2図以下の指し手
▲2五歩 △同 歩 ▲同 桂 △4二角
▲7三桂成△同 桂 ▲2三歩 △3二飛
▲1三桂成(途中3図) △5六歩
▲6八角 △1三桂 ▲2二歩成△3三飛
▲2四角 △4三飛 ▲4二角成△同 飛
▲3二と △4三飛(第3図)

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 第2図では代えて△5六銀と両取りに出ていれば明解でした。しかしその後の銀の活用法が思いつかず、一旦5五の地点に居座らせる判断をしてしまったのです。そこに飛んできた▲2五歩が絶妙な継ぎ歩。浮いた銀を狙って飛車交換を迫られます。幸い動点さんは▲2五飛の両取りに気づいておらず、本譜は▲2五歩△同歩▲同桂でした。攻めが止まるかと思いきや、▲7三桂と嫌なところに成り捨てを決められ、続く途中3図では飛車先を突破されてしまいます。

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 本当の事を言うと、まだ後手良しです。AIによれば後手が指せる局面だというのです。ですが、この勝負は先述の▲2五歩で大勢が決していたように思います。なぜなら「先手の攻め、後手の受け」という構図を自らに課してしまったから。ミレニアムへの距離感を喪失した私は「攻め合い=自玉の寿命が縮む」と思い込んでいます。
 もう少し詳しく見ていきましょう。途中3図の手前、▲2三歩と叩かれた手に対して私は△2三同飛(仮想図)という有力手を逃しています。

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 対して先手の候補手は色々ですが、▲3三桂成△2八飛成△4二成桂という乱暴な手順が見えて、それを先手良しだと思っていました。実際はAI曰く-2000点前後で後手優勢です。本局は全体を通じて「前進すべきところで受け以外思いつかない」パターンが多かったですね。戻って本譜では先手の攻めに押し込まれる構図になりました。踏み込みの判断を見失うと、防戦一方ですね。今期何度か見てきた展開ですし、これは来期への大きな反省材料が得られたのではないでしょうか。

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反撃の反動

第3図以下の指し手
▲5二歩成△同 金 ▲2一飛成△7一歩
▲1一龍 △2三飛 (途中4図)
▲4一角 △6二金寄▲4二と △2九飛成
▲5二と △2四角 ▲6二と △同 金
▲9五歩 △5七歩成▲9四歩 △9二歩(第4図)

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 途中4図の△2三飛は、対局中「これしかない」と思っていた反撃。美濃囲いを少しでも延命させて、その間にどうにか横から攻められないか。ですがここも動点さんは鮮やかな対応を見せます。▲4一角の金取りから手順に▲4二と~▲5二とが見事な手順。反撃筋をむしろ逆用されてしまいました。こちらも△2四角打ちから△5七歩成と敵陣を手を付けますが、速度逆転の糸口はつかめません。中盤は要所要所で読み負けを繰り返していましたから、この辺りはもう動点さんの土俵という感じでしたね。そのまま急所で端を詰められ第4図。悪いなりにまだまだ戦ってやろうというところに、突然決め手が現れます。

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光芒一閃の龍切り

第4図以下の指し手
▲1三龍(途中5図)△7四桂
▲8六桂 △同 桂 ▲同 歩 △7四桂
▲9三歩成△同 歩 ▲2四龍 △同 龍
▲5一角 △2二龍 ▲2三歩 △6七と
▲同 金 △3一龍 ▲6二角成△4一龍
▲7五歩 △3二龍 (第5図)

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 ▲1三龍で勝負ありでした。取りたくても△同角はできません。受けに窮した私は打ちたいところに打ての格言に則り△7四桂で勝負。綺麗に斬られたという自覚はありました。それでも今日は最終局、これしきの詰めろで首を差し出すわけにはいかないのです。動じぬ動点さんは確実に後手陣へ進軍を続け、私は反撃の要であった龍を引き上げてでも抗戦を試みます。こうべを垂れる瞬間が迫りつつあるのを自覚しつつ、できる限りの粘りを続けるのでした。

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3敗目。今期の戦いを終える。

第5図以下の指し手
▲5二歩(第6図) △5八飛
▲7四歩 △4五角 ▲7三歩成△同 銀
▲7四桂 △同 銀 ▲7三金
まで113手で動点Pさんの勝ち
(消費時間=▲15分、△15分)

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 ▲5二歩(第6図)と遮断する手がとても冷静で、ちょっとこれ以上受けを頑張ることができない感じになりました。持ち駒を投入して希望の種を蒔いたのもの束の間。動点Pさんが読み切り、自玉が詰み筋に入ってしまいました。動点Pさん対局ありがとうございました!!

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それからのことと、これからのこと

 終局後、感想戦中に動点Pさんから通話での感想戦を打診され、スペースを通じて初めて通話をさせて頂きました。印象的だったのは、動点Pさんの方にも用意の作戦があったという話。棋譜が残らないところで私の中飛車対策として用意してたものがあったそうで、その場合は右玉になっていなかったそう!これぜひ受けてみたかったですね。
 ほかにも指す順全体の事など色々なことを話しました。なんとなく抱いていた親近感が、ある種の友情に変わるような瞬間です。思えば、前期は降級先であったB3で色々な方との出会いがあり、刺激を受けて大いに楽しんだ1年間でした。今期はその経験がベースにある状態での参加。動点Pさんとは去年対局の機会はありましたが、こうやって言葉を交える機会はほとんどありませんでした。贅沢にも私にとり当たり前になりかけていた、指す順の「交流」という側面を改めて思い出したのでした。来年の秋には、きっと動点Pさんの昇級争いを応援している自分が居る事でしょう。「みんなでつくろう指す将順位戦」ですからね。指すのも楽しいですけど、周りに目を向けると楽しいことがもっといっぱいあります。たまたまこの記事を読んでおられる指す順に参加したことが無い方、あるいは参加するつもりが無い方も、(参加しなくて良いので)ぜひこの世界を覗きにきてくれたら嬉しいです。

 さてさて、改めて振り返りを。本局は中盤以降良いところがなく、完敗でした。経験値の少ない戦いに飛び込むリスクを味わされる一局でしたね。今にしてみれば、もっと積極的に行けたのになあと思う局面もたくさんあります。対ミレニアムの貴重な実戦経験として消化できればいいですね。全体的な読みの浅さも痛感したので、例えば詰将棋などでしっかり読む習慣をつけていくようにしたいです。

 そして本局を以って全対局が終了。8勝3敗の成績にて第6期指す将順位戦を完走致しました。目標に掲げていた昇級を実現し、来期は3年ぶりのB級2組です。B3での2年間を通じて上達したことを示せるかどうかは、来年の自分に懸かっています。今期の振り返り・来期への方針については今年も別に記事を用意して、ゆっくり考えようと思います。自戦記シリーズも来期までお休みになるか、はたまた昨年の団体戦のような機会に恵まれるのか。未来のことはわかりませんが、将棋と良い付き合いのできるオフシーズンにできればいいなと思います。

 最後になりますが、今期の主催を引き受けて下さったゆーすさん、並びに未熟な私を受け入れて下さった運営の皆さん、今期の熱戦を共に演じて下さった対局相手の皆さん、一緒に指す順を作って下さった同クラスの方々、観戦にお越し頂いた方々、そして今年も一緒に走って下さった某会のメンバー、この半年に渡り昇級・上達のためアドバイスを下さったポラリスさん、4回戦の観戦記をお書き頂いたロウポンさん、いつも自戦記をお読みいただいている皆さん。指す順にまつわる全ての関係者に感謝の気持ちをお伝えしたく存じます。ありがとうございました!!(参加者のやきそばより)

 今期の指す順はもう少し続くので、プレーオフの完結までみなさんよろしくお願いしますね!!!(運営のやきそばより)



それではまた!!!(筆者のやきそばより)

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