将棋自戦記#13~第6期指す将順位戦第1局~vsデメテルさん

※※※注意※※※
本シリーズの自戦記は基本的に私の独断で記しています。何か不都合が生じたり、お叱りを受けた際には文章の修正や削除を行う場合がございますので予めご了承下さい。

第6期指す将順位戦開幕!

 みなさんこんにちは、やきそばです。久しぶりに自戦記シリーズを再開するときがやって来ました!指す将順位戦のシーズン到来です!!半年という長きに渡って勝負に思いを馳せ、一局一局に打ち込む盤上の青春が帰ってきました。
 参加3期目の今期は、前期に叶わなかったB級2組への復帰を目指す戦い。魔境と呼ばれるB級3組に跋扈する強敵達をなぎ倒していかなければなりません。今期はリアル事情の兼ね合いもあって前期ほど準備に時間が割けないため、長期的な見通しを立てることが大事になりそうです。そこで、継続参加者の分については1月から棋譜収集を行うようにしました。じわじわ準備をすれば後がラクになるという寸法ですね!オフシーズンに伸びたレートも背中を押してくれており気分が良い一方で、それに甘えていては前期と同じ結果になってしまうぞと戒める自分が居て・・・。その辺りは前回の記事にも書いてありますので、ぜひぜひお読みください(宣伝)。そんなこんなで今期も開幕局を迎えるに至ったわけであります。ではではいつも通り、対局前の準備から!

局前の準備~デメテルさん編~

 今期もドキドキのリーグ発表。初戦のお相手はデメテルさんに決まりました。B4からの昇級組ということで、それだけで勢いを感じますよね。棋譜を見てみると、棒銀を主体とした攻め将棋の居飛車党という印象。勢いある攻め手に気圧されないように、というのが本局のテーマになりました。戦型選択の面で言えば、石田流とゴキゲン中飛車の二枚看板で戦う私にとっては対振りの資料が欲しいところでしたが・・・。

・対三間飛車には右四間飛車
・対中飛車では袖飛車か、二枚銀の急戦調を採用

 デメテルさんが普段指す対策は、どちらも振り飛車側を持ってやや自信の無い形でした。そこで角換わりの採用も考えましたが、棒銀の経験値の高さを考えると開幕局では避けたいところ。開幕前(リーグ表発表前)から相談に乗って頂いているコーチの助言もふまえ、先後関わらず中飛車を採用することにしました。先手番では△6三銀・△4四銀型の二枚銀を、後手番でも同様の急戦を最有力候補として、抑え込まれないことを念頭に置く方針です。とはいえ、デメテルさんが先手番で中飛車を相手にした棋譜が1件もなかったので予想はアテになりません。出たとこ勝負になりそうでしたし、実際予想とは違う将棋を指すことになりました。
 そういうわけで準備期間の比較的長い本局ですが、序盤の勉強にはあまり時間を割かずに実戦を繰り返していました。15分60秒で指す割合も増やすようにして、指す順を戦っていた前期までの感覚を取り戻すことも意識しました。うっかり廃指しモードに突入するときがあって危なかった・・・。

熊るつもりはなかったのよ!

第6期指す将順位戦B級3組1回戦
令和3年6月11日22時於・将棋倶楽部24 大阪道場「レーティング対局室」
▲やきそば △デメテル(持ち時間各15分、秒読み60秒)
▲7六歩 △8四歩 ▲5六歩 △8五歩
▲7七角 △3四歩 ▲5五歩 △6二銀
▲5八飛 △4二玉 ▲6八銀 △7四歩(途中1図)
▲4八玉 △7三銀 ▲5七銀 △6四銀
▲6六銀 △5二金右▲3八玉 △3二玉
▲2八玉 △4四歩 ▲1八香 △4三金(第1図)

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 22時に対局開始。前期は21時開始の対局が多かったため、22時開始は眠気が最大の敵になります。そこでレッドブルを21時台から少しずつ摂取することで対策としました。当日は体調等のコンディションも良く、自信を持って対局に臨むことができました。
 先手番から▲7六歩△8四歩▲5六歩の立ち上がりは用意の作戦。そのまますらすらと進むつもりでしたが、△7四歩(途中1図)で早くも予想が外れます。後手番で超速調の将棋は本命を外された感があり、二枚銀の急戦を警戒した私は銀対抗の形を選択。ところが続いて△4四歩が予想外の第2弾。まさかの持久戦調にはさすがに動揺。わずかな知識と実戦の経験値を頼りに▲1八香を上がりました。厳密にはこの香上がりで持久戦が確定したと言えそうですね。美濃囲いも自然で有力ですが、相穴熊になれば比較的経験のある形で指せるだろうと踏んでの判断でした。指定局面レベルまで準備を行わない場合は、本譜のように少しでも経験値のある形を優先的に選ぶことを意識しながら、浅く広く想定しておくのが良さそうです。この辺りの方針決定は終始有利に働いたように思えるので、次局以降にも活かせそうです!

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できない駆け引き

第1図以下の指し手
▲1九玉 △3三角 ▲2八銀 △2二玉
▲3九金 △3二金 ▲3六歩 △1二香
▲3八飛 △1一玉 ▲3五歩 △同 歩
▲同 飛 △3四歩 ▲3八飛 △7三桂
▲6八角 (途中2図)    △4五歩
▲5八飛 △9四歩 ▲9六歩 △8六歩(第2図)

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 穴熊に組んだものの、そこから先はかつて読んだ棋書の内容もほとんど覚えていない状態での勝負。とりあえずは「3筋の歩を交換して攻防に使えるようにするんだ!」と早々に▲3八飛を回ります。この戦型、中央~左辺の均衡は意外と取りやすいというのが私の中の偏見で、△6五桂を先受けする▲6八角(途中2図)などは恐れずに指すことができました。本譜は△4五歩▲5八飛と無難に進行。代えて△2四角と覗かれたらどうしようというのはありましたが、角を引くメリットの方が大きいと信じて疑いません!
 銀対抗×相穴熊の戦いは飛車角を押し引きしながら捌きどころを狙う駆け引きが多い印象です。特に飛車の配置転換を繰り返す予定で指してはいたものの、どちらが主導権を握っているというような感じもない序盤でした。攻めの糸口を探ろうとも単調な手しか見えなかったため、後手からの仕掛けを待つ流れになります。どこかで仕掛けてくれないかな~と思った矢先に△8六歩(第2図)の突き捨てが飛んできます。開戦の時来たれり!

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銀ばさみの攻防

第2図以下の指し手
▲8六同歩△6五銀 ▲7七銀 △2四角
▲6六歩 △6八角成▲同 金(途中3図) △4六歩
▲同 歩 △4七角 ▲6五歩 △5八角不成
▲同 金 △6五桂
(第3図)

 △8六歩▲同歩△6五銀。突き捨ててから銀をぶつけるわかりやすい仕掛けが飛んできました。ひと目▲6五同銀△同桂では先手不満だなあと思ってみれば、▲7七銀と引く手が見えるではありませんか!これは銀ばさみからボロッと銀が取れそうです。簡単には銀が助からないことをゆっくりと確かめながら、銀ばさみの手順へと指し手を進めていきます。ここまで早く決断できそうな手はすぐに指すようにしていましたが、合計で2分弱ほどここは投入しています。フリー対局だったので、接続切れの規定で時間差がついた状態で回線落ちするのが怖かったがゆえの早指しというわけですね。

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 ちょっと進めて途中3図は▲6八同金と角交換になった局面。しっかり銀を捕まえていてこれは有利に事が運びそうだなあというところ。しかし後手から暴れる手段は色々ありそうです。当初読んでいたのは△6六銀▲同銀△8六飛と飛車を走る手。現状左桂が浮いているので、攻め合いになると銀得でも大変なのではと思っていました。本譜の△4六歩もどこかで突かれそうな一手でしたが、そのあとの△4七角をうっかりしていました。なるほど飛車が逃げれば△5六銀と出て銀が助かるんですね。銀を逃げながら紐をつける手段があったとは・・・!飛車を渡したくないということもあって、この手の対応には悩みました。とはいえ盤上に角が残るのも怖いですし、銀ばさみをしておいて銀得できないようでは悔しいので、ここは飛車角交換を受け入れました。手の流れに乗るようにして桂が跳ねてきて第3図。銀得のわりには難解な形勢という印象で、どうにかこうにかポイントを上げなければと少し焦っていました。

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罠を仕掛ける

第3図以下の指し手
▲5四歩 △同 金 ▲6六角 △2二銀
▲6八銀 △8六飛(第4図)

 銀取りがかかって忙しい局面。角角銀で攻めを繋げたいところですが、▲7一角や▲7三角では効果がいまひとつな感じ。▲4一角も、このタイミングで金に引っ掛けたところで戦果には結びつかなさそう・・・。そこで一旦▲5四歩を入れてみることに。次に▲5五角を見せて気分のいい手ですね。むろん、簡単に罠にハマってくれるわけもなく△5四同金。金が上ずって攻めやすくなりましたが、これは中央が手厚くなった罪もありそうな交換ですね。そのまま▲6六角も設置しましたが、△2二銀とハッチを閉められて当初は余計な一手だったかと汗が出ました。しかしこれはよく見ると守備の要である金の連結が1つ解除されていて、一連の流れを作り出した好手だったのかもしれませんね。
 そして本局の命運を託した一手が▲6八銀。銀取りをこのタイミングで受けることで、△8六飛を誘う狙いです。感想戦では△8七飛と持ち駒を投入する手が検討され、そうなると8二の飛車が受けによく効いていて長い将棋になりそうという話になりました。本譜は狙い通りの△8六飛を指させることに成功。ここから一気に畳みかけていきます。

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淀みなく攻める

第4図以下の指し手
▲4一角 (途中4図)△3三金 
▲4二銀 △4四金上 ▲3二歩 △5五金左
▲同 角 △同 金(第5図)

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 ▲4一角(途中4図)がどうしてもやりたかった一手、△3一金に▲5二角成~▲3二歩と攻めを繋げるために、後手の飛車には移動してもらう必要がありました。本譜の△3三金には▲4二銀と絡みついて攻めの手を緩めません。こうなれば次の△8九飛成とは速度に歴然とした差が生じており、安心して穴熊攻略に打ち込むことができます。後手は6六に設置した角を警戒して△4四金上と躱しますが、▲3二歩と確実な攻めを続けます。このあたり、読み筋とは違う受けをされながらも指したい手を実現できたのが大きく、じっくり寄せの構図を描くことができていたかと思います。

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白星発進!

第5図以下の指し手
▲3一歩成 △8九飛成 ▲3二角成
まで、77手でやきそばの勝ち
(消費時間=▲10分、△15分)

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 1分かけて▲3二角成に適当な受けがない事をじっくり確認。最後までしっかり穴熊に駒を貼り付けて攻め切りました。感想戦後に▲2一と以下の即詰みがあったことを知りましたが、▲3三桂と打つ手が全く見えていなかったので反省ですね。自陣はゼットであり、王手を掛けることなく必死に持ち込んで勝つ形が理想的だったので、つい詰みにまで考えが及びませんでした。実戦的には必勝手順を選択できているのですから、後悔はしていません!
 デメテルさんは終始駒を前進させる積極的な指し味でしたね。それを受け止める序中盤はスリルもあって、最後まで集中して対局を楽しむことができました。デメテルさん対局ありがとうございました!

次局に向けて

 初戦で勝利を納め、昇級レースの第一歩を踏み出すことができました。指す順の舞台で戦う感覚を思い出せたので、この調子でどんどん勝ち星を積み上げていきたいですね。課題点を挙げるなら中盤の指し手でしょうか。途中、指し手の方針を見失ってしまった局面がいくつかありました。さっぱりした局面で手が無いというのは非常に危険なので、次局に向けては棋譜並べを行うなどして実戦のスキルを磨いていこうと思います。
 次局の相手はネブラスカさん。居飛車も振り飛車も指されるようで、これからしっかり棋譜を調べて作戦を決めていかねばなりません。2週間に1局ペースの真剣勝負ですから、この間に調子を崩さないようにも気を付けたいところですね。リアルも大事にしながら、長い長い順位戦を楽しんでいこうではありませんか!
 それに、今期は前期にも増して観戦が楽しみなシリーズになりました。前期を通じて知り合った指す将の皆さんが、それぞれのクラスで戦っているのですから!これを書いている6月12日にもたくさんの対局が予定されているので、今から本当に観戦が楽しみです。指す順漬けの日々が始まった実感に浸りつつ、今回はこの辺で終わることに致しましょう。それでは皆さん、次局もどうぞお楽しみに!拙い自戦記をお読み頂きありがとうございました~!

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