将棋自戦記#19~第6期指す将順位戦第7局~vsアクティーさん

 みなさんこんにちは、やきそばです。PCが寿命を迎えて早数日、前回の自戦記がデータや作業量の兼ね合いで未完のままになっております。鮮度が命(?)の自戦記ですから、それが遅くなってしまうというのは大変心苦しい思いがあります。ですが今回は第7局の自戦記を先に書かせて頂きます。理由は単純で、「対局→自戦記」というルーティンを壊したくないからです。前回は精神面の不調も相まって対局直後から筆がなかなか進まず、それが執筆の中断を招いてしまいました。書けるうちに本局の自戦記をしっかり書いて、投稿し終わったら棋譜データだけでも掘り返してこようと思います。

 さてさて、本局はアクティーさんとの対局です。日頃からお世話になっている某会のメンバー。指す将順位戦の運営メンバーでもあり、今期から運営チームに参加した私を助けて頂いています。日頃から将棋や棋戦との向き合い方を考えられているという印象もあり、それゆえに指す順の対局を応援していました。それがここにきて対局がついたわけです。開幕時から「ぞのみPさん」「こえだめさん」「アクティーさん」という某会メンバーとの対局をどう乗り切るかが山場になるだろうと思っていたので、本局も気合が入ります。前局の敗北からの立ち上がり、準備からゆっくり綴って参りましょう。

局前の準備~アクティーさん編~

 「灰皿流」の異名を持つアクティーさん。命名のきっかけは本人のご謙遜でしたが、「確実にダメージを与える攻めの連打」を表す絶妙な表現だと私は思います。もともとはKKS党で、戦場が限定されやすい対抗形における独特の指し回しとして認識していました。対局表が発表された当初は、このKKSを受けて立つか封じるか、楽しみにしていたのをよく覚えています。ですが今期のアクティーさんはなんとびっくり、嬉野流党にモデルチェンジをしてきたのです!そんなの聞いてないよ!!
 驚くべきはそればかりではありません。嬉野流の採用当初から「本当はやきそばさんとの対局で最初に使うつもりだったんですよ~」という恐ろしい発言を耳にします。これはつまり、私の普段指す振り飛車を意識しての作戦設計ということ。継続的な採用によってブラッシュアップされるのも、一つのブラフとして別の戦法を採用されるのも困ります!果たして本当に嬉野流が来るのだろうかと勝手に不安になった時期もありました。

 そんな状況が前局、カメさんとの対局を機に変化します。省エネを掲げて戦った対局ではやんわりと行った準備を全く活かすことができず敗戦。休むことを優先したとしても、準備自体は突き詰めておかなければ意味がないという教訓を得ました。省エネというのは中途半端を言い換えた表現にすぎず、本当に必要だったのはメリハリをつけることだったのかもしれません。今回は運よく「嬉野流対策」という分かりやすい目標があったので、自分の好きな形に持ち込む方法に絞って考えてみようと思い対策に着手します。

 嬉野流も細かな指し方が色々ありますが、アクティーさんが採用されているのは「嬉野流相振り飛車」と言われる形。嬉野流の対振りにおいては鳥刺し系の指し方が最も有名ですが、調べた限り創案者の嬉野氏は相振りにする方を得意とされているのだとか。私は存在すら知らなかったので大変勉強になりました。ポイントは相手の振る筋に応じて向かい飛車・中飛車を使い分けるところ。試行錯誤しながら想定図を決めていきました。

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 駒組は後手番を前提に考えました。想定A図は最初の分岐点で、ここではたくさんの候補手があります。相振り志向なら▲8六歩・▲8八飛・▲5八飛あたりでしょうか。なるべくノーマル三間飛車に擬態して、向かい飛車に振ってもらう狙いです。最初から偶数筋に飛車を振るのには中飛車が有力とされているそうなので、それを避けました。万一鳥刺し系になっても三間飛車なら慣れた土俵で戦えるだろうとも考えました。

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 進んで想定B図。細かな手順や形に差はありますが、おおむねこのような図を考えていました。引き角で早い▲7五銀をけん制すれば、得意の左玉に組めるのではという発想です。練習対局では△5三角(▲5七角)型の左玉に構えて模様を取ることができました。
 課題点は5筋が争点になった際の対応と、駒組に時間がかかること。早い動きにどれだけ対応できるかが明暗を分けそうです。中飛車で来られた時に左玉への変化の余地を残すか否か、というのもありました。全部を解決できるわけではないので、いくつかシミュレートをしながら対局本番を迎えます。

あゝ悩ましき駒組み

第6期指す将順位戦B級3組7回戦
令和3年9月11日21時於・将棋倶楽部24 大阪道場「自由対局室」
▲やきそば △アクティー(持ち時間各15分、秒読み60秒)
▲7六歩 △4二銀 ▲7八飛 △5四歩
▲6八銀 △5三銀 ▲6六歩 △3一角
▲5八金左△5二飛 ▲7七角 △7二金
▲6七銀 △5五歩 (途中1図)
▲4八銀 △6二銀上▲8八飛 △6一玉
▲8六歩 △7四歩 ▲8五歩 △7三銀
▲9六歩 △7一玉 ▲3八金 △5四銀
▲4六歩 △1四歩 ▲4七銀 △1五歩
▲4八玉 △2四歩(第1図)

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 私の先手番で対局開始。先手番だと指す手が増える分、三間飛車に擬態できる時間が短くなるのが怖いところ。対局は早い段階でアクティーさんが中飛車に構え、早くも難解な序盤戦に。途中1図で△5五歩と突っ張ってきた手が中飛車一本で行く宣言にも見えますが、△5二飛のときに少考されていたことを思うと向かい飛車への振り直しがちらつきます。私もここで考え込み▲4八銀として左玉に変化する余地を残します。
 そこからは向かい飛車への振り直しをしつつ、雁木っぽい形で金銀を配置して中央への攻めに備えます。やがて駒組みは飽和していきますが、△5四銀型の構えならさすがに中央での勝負になるだろうと判断。▲4八玉と右側に玉を囲う決断を見せた瞬間に△2四歩!(第1図)やっぱりかぁと思いつつ、これは良いタイミングでやられてしまったと若干焦ったのでした。

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突飛な組み換え

第1図以下の指し手
▲3六銀 △2二飛 ▲2六歩(途中2図) △5三角
▲2七銀 △2五歩 ▲同 歩 △同 飛
▲2六歩 △2二飛 ▲3六歩 △3四歩
▲4七金左△5二金 ▲3七桂 △4四歩
▲3九玉 △3三桂 ▲2八玉 △6四歩(第2図)

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 △5四銀型で振り直しなら早い攻めは来ないはず。先に△2五歩とする手を咎める目的で▲3六銀と上がり、続く▲2六歩から銀冠に組みます。直後の△5三角に気づいたのは歩を突いた後でしたが、これは意表を突きながら上部を手厚く構えることができただろうと自信がありました。
 △2五歩▲同歩△同飛▲2六歩に△同角▲同銀△同飛の強襲も警戒しましたが、さすがに無理筋と判断されたでしょうか。△2二飛から落ち着いた展開に戻ります。こちらも攻めを模索しますが、イマイチぱっとする手順が見えなかったので玉の入場を優先しました。飛車の利きに自ら飛び込むようで怖かったのですが、これで問題はなかったのだろうと思います。

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中央で戦え!

第2図以下の指し手
▲5六歩 △同 歩 ▲5八飛 △6三金左
▲5六銀 △5五歩(途中3図)
▲同 銀 △同 銀 ▲同 飛 △5四歩
▲5八飛 △4九銀 ▲5九飛 △3八銀成
▲同 玉 △8二玉(第3図)

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 第2図の△6四歩にアクティーさんは2分の考慮。自陣に手を入れている間に攻撃のきっかけをと、▲5六歩△同歩▲5八飛と中央から動きました。一歩交換から▲3六歩~▲3五歩の桂頭攻めと、5五地点での清算(銀交換)が狙いです。反発して暴れてこられたときにミスを起こせば、灰皿でボコボコにされかねないので注意が必要ですね。

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 感想戦ではこの辺りの金銀の動きについて検討をしました。△5五歩(途中3図)の催促が悪手だった可能性が高いです。代えて△4三銀と引く手などが考えられます。またその直前の△4三金右に代わる手も何かあったのではないかという話になりました。本譜はここから銀交換に成功。合わせて一歩得となり先手満足の展開です。ただ、「後手も銀がさばけた」という見方が可能で、対局中は例えば△6七銀~△7六(7八)銀成から角を狙われるのを警戒していました。

 本譜は△4九銀の割打ちで、△3八銀成に▲同玉と取った形が意外に安定感があり有利を意識します。歩切れのアクティーさんは△8二玉(第3図)と入城します。こうしてみると銀冠への組み換えがうまくいってますね!

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中央突破と叩きの歩

第3図以下の指し手
▲4三銀 △2四飛 ▲5四銀成△同 金
▲同 飛 △6三金打▲5九飛 △3五歩
▲5四歩 △7一角 
▲5三金(途中4図)△3六歩
▲同 銀 △5三金 ▲同歩成 △5八歩(第4図)

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 第3図から▲4三銀が分かりやすい攻め。▲2四銀成からじっくり行くほうがさらに安全に戦えそうです。本譜は△2四飛とそちらを受けられたので▲5四銀成を決行。金駒を渡す点に神経を使いつつも、勢いよく攻めを継続していきます。

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 △3五歩とつっかける手を無視。ガツンと▲5三金(途中4図)の打ち込みを入れます。後手から暴れる手が色々見えるのですが、攻め駒が足りないはずだと必死に自分に言い聞かせて、攻め手を緩めないように意識します。▲5三歩成と良い位置にと金を作ったところで△5八歩。勝負手が急所に飛んできました。後手の角がと金を睨んでいるので飛車のヒモは外したくありません。とはいえ取れば△4七金の両取りが避けられません。勝負を決定づける、決断の時が迫っているようです!

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攻めろ、攻めろ、かわせ!

第4図以下の指し手
▲5八同飛△6七金 ▲5五飛 △7七金
▲同 桂 △6七角 ▲6三金(途中5図)△4九銀
▲2七玉 △9四歩 ▲7二金 △同 玉
▲6一銀  △8二玉 ▲6三と △9三玉
▲7三と △同 桂(第5図)

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 飛車角両取りを受け入れ、とにかく攻めを続けます。アクティーさんの次なる勝負手は△6七角。これは読みになかった手で対応も迷います。▲5九金と投資してしまえば早い攻めはなさそうですが、ここは見切って一気に寄せてしまいたい!△4九銀には▲2七玉とあがれば継続手が無さそうです。
 そこで本譜は▲6三金(途中5図)と露骨に駒を足しました。以下は予定通り▲2七玉とかわし、後手玉の早逃げも構わずガンガン攻めます。▲7三とまで回って先着して詰めろをかけることに成功。当然△7三同桂(第5図)で一時的には解除されますが、いよいよ寄せも最終段階です!

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堅実に寄せて5勝目

第5図以下の指し手
▲7二銀不成△8五桂 ▲同 桂 △8二玉
▲7三金  △9二玉 ▲8三金
まで、109手でやきそばの勝ち
(消費時間=▲14分、△15分)

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 もしかしたら即詰みがあったかもしれませんが、第5図からは▲7二銀不成が▲8四金△同歩▲8三金を狙ったとても味の良い詰めろです。駒を投入しても一手一手で、ここで勝ちを意識できました。△8五桂跳ねに対しても冷静に王手を続けて、最後は即詰みに打ち取ることができました。アクティーさん対局ありがとうございました!!

本局の振り返りと、次局に向けて

 本局は序盤から考えることの多い展開になりました。銀冠への組み換えなど、手数的に間に合うか否かを考えることが多かったですね。それもひとえに「嬉野流向かい飛車に左玉が成立するか」を準備段階でよくよく考えられていたからだと思います。結果的に雁木模様→銀冠と全く想定とは違う自陣で戦いましたが、事前準備で意識したことをうまく踏襲できたのが勝因と言えそうです。中央で戦う発想も、本局を想定した練習対局の中でベースとしてできていたものを活かせた気がします!

 これで今期の成績は5勝2敗となりました。連敗を回避したのは星取的にもモチベーション的にもとても大きいです。昇級を目指すうえで8勝3敗以上というのが具体的な目標になります。今期も順位が高いので星勘定の上では後1回は負けていい計算ですが、後がなくなった状態で終盤戦を戦うのは本当にしんどいですから!積極的に4戦全勝を目指します。

 次の対局相手はファンタさん。ここからの終盤4局は前期戦った相手との再戦です。今期ここまで1局もなかったので、この展開はアツいですね!私にとっては指す順参加3年目にして初めての再戦になります。手の内を知っている相手との戦いですので、挑み方をよくよく考えていこうと思います。それは今回はこの辺で。カメさん戦の自戦記の続きも、ゆっくり準備を進めていきますね。長文をお読みいただきありがとうございました!!

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