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羅刹の紅(小説投稿)第九七話 Part2

○あらすじ

普通を愛する高校生「最上偉炎」は拳銃を拾ってしまう。パニックになった彼を謎の女「切風叶」に助けてもらうが、町で悪行を繰り返す組織「赤虎組」に狙われることになってしまった。それに対抗するため偉炎は親友である「北条優雷」、さらには不登校だったがかつてこの国の財閥に君臨していた今川家の令嬢である「今川雪愛」と切風の四人で校内に「一般部」を結成。災厄の日常へと突き進む。
赤虎組は資金を確保するため偉炎たちが通う広星高校の地下金庫を襲撃することを決めた。その情報を手に入れた偉炎たち一般部はそれを体育大会当日に迎え撃つことになった。
 体育大会当日、一般部と赤虎組の戦闘が始まった。苦戦を強いられることを予想し、切風は一般部の三人に次の作戦を指示する。だが、ここで赤虎組が仕掛ける。赤虎組の幹部である御影と燿華が単独で学校に侵入をしたのだ。切風はこれを止めようとするがそこに同じく幹部である有坂が切風を食い止める。そして、御影と燿華はついに金庫にたどり着こうとしていた。

〇本編

 場所は再び森に戻る。切風と有坂は相も変わらず互角の勝負を持ちかけていた。それもそのはずお互いが本気ではないのだ。切風は本来の実力を秘匿という理由で発揮できず、有坂は切風を倒すのではなく妨害するだけで充分だからだ。有坂は軽々とその大太刀を切風に向ける。それに対して切風はプロモーターで有坂に接近し、日本刀で大太刀を振り払おうとした。
「どうしました?さきほどから剣筋に勢いがありませんが?」
「ご親切にどうも。いやーやっぱり子供にはそろそろ限界かな?」
 今度は切風が冗談を言った。
「・・・」
 ここで有坂が疑問に思った。この状況で切風がとらないといけない行動は今すぐに有坂を倒し、学校に急降下することだ。だが、切風はそれをほとんど諦めている。
「なぜです?あなたには余裕がないはずです。ですがなぜでしょう?あなたからは焦りが消えた。」
「・・・なんでだと思う?お兄ちゃん。」
「そうですね。仲間を何人か学校に入れたからでしょうか?ですがそんなことをしてすると今度は学校側に不審に思われる。それはそちらも望んでいないはず。」
「その通り。よくわかっているではないか・・・クソガキ。」
 そう言うと切風は懐から閃光弾を取り出した。
「ほう、閃光弾ですか。ですがすいません。私は特殊なARコンタクトをつけていましておそらく効きませんよ。」
「残念だったな。こっちもこっちで時間稼ぎをしたいだけだ。お前らの作戦を妨害するためのな!」切風は閃光弾を有坂に投げつけた。有坂は大太刀を投げ捨てとっさに手に目を塞いだ。そして、つけているARコンタクトを暗視モードにした。
「ほう、これは意外でした。ただ、それでだけは私には効かないですよ。」
 有坂は再び大太刀を携えた。
「別にいいよ!だって時間稼ぎをしているのは私だから!」
 切風はすかさず日本刀で有坂に反撃した。
「時間稼ぎ?」
「えぇ、君は私を止めるためにここにいるそうだが、私もあんたを止めるためにここにいるんだよ!このクソガキが。」
 見た目中学生の切風が見た目四十代の有坂に対して、再びクソガキ呼ばわりした。
「困りましたね。三十路とはいえ、クソガキ呼ばわりとは。」
 切風は腰にある日本刀の鞘を左手に持ち、有坂の顔を殴った。
「残念だったね、私は・・・四十代後半だ!」
 そう言うと切風は間髪を入れずに日本刀で有坂をけん制する。
「・・・まじですか?」
 ここで有坂の動きににぶりが出る。まさか切風が四十代であることに驚いたのだろう。ただただ、目をパチパチとしていた。
 しかし、今言った切風の発言はすべて正しい。年齢の事もそうだが、彼女は以前から赤虎組にいる頭の冴えた人間に興味があった。生徒を使って広星高校の金庫のあり方を調べさせたり、体育大会の日を選んで攻撃してきたり、今日の赤虎組の行動の柔軟さであったり、とにかく作戦に置いて有能な人物がいることを把握していた。そして、切風はその人物を会った瞬間に有坂と確定させていたのだ。実際、もし彼を学校まで到達させてしまえば一般部の敗北と切風は本気で思っている。だからこそ、自分への邪魔をわざわざ有坂がしてくれたことに対して少しラッキーと感じていた。切風も有坂の時間稼ぎができるからだ。
「しかし、気になりますね。私を時間稼ぎすることも大切かもしれませんが、今学校へ向かった二人は我々赤虎組の中でも優秀な人材です。緑色の方々が強いのは分かりますが、数十人いても彼らに勝てる可能性は相当低いでしょう。」
「分かっているそんなこと。だから私も何人か向かわせた。学校でも不審に思われない私の教え子を!」
その瞬間、有坂は思い出してしまった。それは赤虎組の幹部会議の際、御影に依頼された人探しの件だ。赤虎組の作戦を何度も失敗に陥れた人物が広星高校の生徒の中にいるので調べて欲しいと御影に言われていたのだ。もちろん、有坂は調べた。だがここ最近で変な行動をしている生徒はいなかったので一旦、捜査を中止していたのだ。
決してさぼっていたわけではない。彼はそんなことをしているよりも金庫の在り方や戦闘の準備の方が大切だと思っていたのだ。しかし、それは大誤算である。今日も、学校内部にある森の中に設置しようとしていた戦闘型ドローンや監視カメラもその人物によって破壊されている。その時点で赤虎組の作戦は後手に回ってしまい結局人を使って学校に攻めないといけなくなった。そして、その人物が今、学校に侵入した御影と燿華を止めようとしているのだ。
しかし、有坂は少し微笑んだ。ここに来てまさか安藤と小山の情報が使えるとは思ってもいなかっただろう。安藤と小山に最後に尋ねた最後の質問がまさかここで
「最上・・・偉炎。」

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