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羅刹の紅(小説投稿)第七十四話

前回までのあらすじ
町で悪行を繰り返す赤虎組に狙われることになった普通を愛する高校生「最上偉炎」は対抗するために校内に一般部を作った。部内には見た目は子どもであるが途轍もない身体能力と頭脳を持ち、素性が全く分かっていない顧問の「切風叶」と偉炎の親友で馬鹿力を持っている馬鹿である「北条優雷」がいた。そして、同じクラスでありながら不登校になってしまった「今川雪愛」を新たな仲間に入れようとした。雪愛はこの国でトップに君臨している五大財閥のひとつである今川家の令嬢であったが、祖父の謎の死によって財閥の地位をはく奪されている。そんな彼女の依頼として祖父の遺した財宝が眠っている教会を探すことになったが、その財宝にも赤虎組の手は伸びていた。


雪愛が偉炎の結論を理解する前にそれは現実となってしまった。偉炎たちがいた司祭館の扉や窓が一瞬にして破られた。それと同時に凶悪な姿をした人間がぞろぞろと入ってきたのだ。
「「おら!ここに宝はあるか!?」」
「とにかく探せ!もし、邪魔する奴らがいれば潰してしまえ!」
 教会おいてこんなにも大胆に行動するのは間違いなく天罰などを一切気にしない罪人しかいない。そして、そんな集団はこの町に一つしかいない。
「やばい!」
 偉炎はとっさにバックの中から拳銃を取り出した。そして、最悪のシナリオに沿って行動することに決めた。
「こうなったら大聖堂まで行くぞ!どうせ逃げられない。なんとしてもここで生き延びるんだ!」
「もし、こいつらが攻撃して来たら・・・」
「反撃しても構わない!」
「「了解!!」」
 偉炎の指示に二人は即座に同意した。ここで偉炎は「反撃してもいい」という言葉にまとめていたが、これは「殺しても構わない」という風にも置き換えられる。これは優雷と雪愛の二人がこの場面で手加減することができないのを理解しているからだ。偉炎が目視できるだけでも司祭館に入ってきた人間は十人を超えている。外にはもっといるかもしれない。そんな状況で少しでも油断したら却ってこっちの身が危険になってしまう。命をとることより命を取られないことを優先したのだ。そのため、これは実質、殺人を許可したことになってしまう。
「何だ貴様ら!いつからこんな場所にいた。」
「子どもだろうと関係ね!邪魔する奴らは神官みたいにぶったおせ!」
 三人の高校生をそれぞれが目視すると容赦なく一斉に襲い掛かった。
 もしここで、普通の高校生ならあまりにも絶望過ぎて気絶するレベルだろう。作者の私なら背筋が凍って身動きもできまい。しかし、ここにいる三人は短期間とはいえ、くぐってきた修羅場が違う。
 まず先手を取ったのは優雷だった。彼は自身の持っている蜻蛉切を即座に起動して、大人たちの脇腹をえぐった。
「ひっ!」
 それを見た周りの人間が一瞬動揺した。その隙を見逃さずに雪愛は懐に隠していたナイフを正確に、かつ鋭く投げた。これによって司祭館に乗り込んできた敵は全員戦闘不能、気絶、もしくは死亡した。
「・・・余裕ね。」
 雪愛は余ったナイフを元に戻そうとした。しかし、ここで油断した。背後の床に倒れていたうちの一人が最後の力を振り絞って自身のメリケンサックをつけた拳で雪愛に攻撃しようとした。
 
 ズギャーーーーン


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