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羅刹の紅(小説投稿)第八十三話Part2

〇あらすじ

普通を愛する高校生「最上偉炎」は拳銃を拾ってしまう。パニックになった彼を謎の女「切風叶」に助けてもらうが、町で悪行を繰り返す組織「赤虎組」に狙われることになってしまった。それに対抗するため偉炎は親友である「北条優雷」、さらには不登校でかつてこの国の財閥に君臨していた今川家の令嬢である「今川雪愛」と切風の四人で校内に「一般部」を結成。災厄の日常へと突き進む。
六月下旬、偉炎と優雷はハンドボール部の大会に出場していた。試合に勝った偉炎たちは応援していた切風と雪愛と合流して居酒屋で食事をするのであった。そこでの話題は七月に行われる体育大会になっていた。
一方、赤虎組は度重なる任務の失敗(主に一般部が原因)のため五大幹部の会議が行われていた。そこでは偉炎が通う高校である「広星高校」の地下にある財宝を強奪することが決ってしまった。

〇本編

御影の目が光った。彼は途轍もなく切れているのだ。任務に失敗したことを、失敗した原因がわずか数人であること、燿華にいじられたこと、そして失態をしている自分自身に、
「決行は来週の予定です。早めに決行します。」
「おいおい、いいのかよ。また失敗しないか?」
 御影の発言に燿華が挑発した。
「その日は広星高校の体育大会がある。警備含め一番油断している日であることには変わりない。そこをいっきに叩く。」
 「叩く」というと同時に御影は強く机を叩いた。
「なるほどねー。それは悪くないと思うぜ。」
 燿華が頭に腕を組みながら言う。
「あぁ、作戦としては悪くない。ただ、ポイントなのはどの部隊が学校に攻撃を仕掛けるのかが問題だな。」
 さきほど発言した五大幹部のうち一人が発言した。
「・・・私が出る。」
 御影が迷わずに申し出た。
「今度こそ・・・作戦を成功させて見せる。」
「いいのか?チンピラたちを使わずに五大幹部の部隊が出てしまったら赤虎組の素顔が出てしまうのではないか?」
「いいや、それでいい。」
 組長がゆっくりと席を立った。
「隠れてコソコソするのはもう終わりだ。ここで赤虎組の悪名がこの町に広がったところで期限内に財産をあの方に渡せなかったら、どの道赤虎組は全滅だ。今更隠す必要もなくなった。」
「・・・分かりました。では、私の部隊が・・・」
「いや、俺も行くぜ。」
ここで燿華が出てきた。
「・・・なぜおまえが出てくる。」
 御影は嫌味な感じで聞いた。
「お前のためだよ。一回失敗しているお前だけの部隊だけだと何するか分からないからな。それに・・・この高校には誰か知らないが俺には向かったやつがいるからな。」
 燿華は覚えていた、広星高校にいる何者と商店街の裏路地で激突したことを。そして、彼もまた自身と同じ拳銃も持って息をひそめていることを。
「なら、今回の作戦は御影、燿華、そして、有坂の三部隊でいくように。特に有坂は他二名の言動にはくれぐれも注意するように。」
 こうして日曜日の会議は終わった。町では相変わらず平和が続いている。これが来週も見られることも心から願っている。

「えーとういうわけで、今回の体育大会の振り分けを行います。」
 広星高校の二年三組では学級活動で体育大会の段取りが決められていた。クラスにはおよそ三十人の生徒がいるが、それぞれが必ず何かしらの種目に参加しなければならない。
「はーい!俺騎馬戦やるー。」
 クラスメイトの安藤が叫ぶ。騎馬戦は最終種目として人気の種目だ。誰しもがやりたいと思うものである。しかし、その分倍率も高い。
「俺もやる!」
「いや、絶対に俺!」
 高校生とは思えない行動である。なぜ騎馬戦をしたいのかは明白で・・・・女子に良い所を見せたいからだ。騎馬戦は男子のみの種目で上半身裸の状態で敵の頭の鉢巻きを取るのだ。自身の筋肉に自信がある人は特にラッキーだ。(安藤は太っているが・・・)
(何がいいのか・・・?)

 偉炎は戸惑っていた。ちなみに彼は騎馬戦には絶対に参加しない予定だ。なぜなら、参加する人たちは全員クラスの中心人物で彼はそれに該当しないからだ。
「「あなたは出なくていいの?」」
 偉炎のAIコンタクトにメッセージが来た。発信元は雪愛からだ。彼女は同じ一般部として連携を取るために連絡先を交換しておいたのだ。
「「いや、さすがに出ないな。逆にどの種目に参加する?」」
 偉炎はスマホで文字を打って送信した。体育大会は少なくとも一人二種目以上にでなければならない。ただ、偉炎はもう決まっている。
「「私はダーツ投げと障害物リレーの予定よ。あなたは?」」
「「短距離走とドッチボール。」」
「「平凡かよ」」
 この二つの種目を偉炎は去年も参加した。理由は一番地味だからである。短距離走は少し走ればよく、ドッチボールもクラスで十人も参加する一人の価値が少ない。偉炎にとって相性がいいのだ。しかし、雪愛はそれを平凡で終わらせた。
「俺だ。この北条優雷が騎馬戦に出る!」
 しかもここには異性へのアピールなど気にせず熱意で騎馬戦に出る者がいた。名前は自身で言っているので割愛するが、彼のクラスからの信頼は高かった。
 結局、一時間の話し合いの末、一般部の三人はこのような種目に出ることになった。
 偉炎 短距離 ドッチボール
 優雷 棒倒し 騎馬戦
 雪愛 ダーツ投げ 障害物リレー

だが、この体育大会に魔の手が近づいていることにまだ気づいていない。そして、その手が内部からも湧き出ていることに。

「はぁ、騎馬戦に出たかったな~。」
「本当にな!このまたまだと彼女いない高校生活で終わってしまうぜ・・・」
 安藤と小山が一緒に帰っていた。彼らは偉炎と同じクラスであるが騎馬戦を他に取られてしまったことをかなり残念そうに話し合っていた。時刻は午後六時、部活を終わって夜になるにも拘わらず、太陽はまだ水平線上にいた。夜というにはまだ早い時期になってきたようだ。
「こんにちは。」
 何者かが二名に声をかけた。
「え?俺たちですか?」
 いきなり声を掛けられて驚いたのか、小山が一度確認した。
「えぇ、あなたたちのことです。」
 その人は静かに語りかけた。
「いきなり失礼しました。私は有坂(ありさか)という者です。」
 彼は有坂と名乗った。
「「はぁ」」
 二人は戸惑った。背の高い紳士的な男性に声を掛けられても彼らは何をすればいいのか分からないからだ。しかし、その有坂という人物はどうすればよいのかを語った。
「あなたたちには少しお願いしたいことがあるのですが・・・」
「え?何ですか?」
「あなたたちの通う高校に金庫があるのは知っていますか?」
「いえ・・・知らないです。」
「どこにあるのか探してきてくれませんか?」
「はぁ・・・でもあなたは一体何者ですか?」
「ですから私は有坂と・・・」
「そうではなくて広星高校とどのような関係があるのですか・・・?」
 安藤と小山は疑い始めた。初めて会った人物がいきなり高校の情報を聞き出そうとしているのだ。有坂という人物が気になるのも当然である。
 しかし、これも有坂の策略なのである。わざと相手に疑念を持たせてグッと攻め込むのが得意なのだ。

 詳しく教えてくれませんか?


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