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羅刹の紅(小説投稿)第九十九話 Part2

○あらすじ

普通を愛する高校生「最上偉炎」は拳銃を拾ってしまう。パニックになった彼を謎の女「切風叶」に助けてもらうが、町で悪行を繰り返す組織「赤虎組」に狙われることになってしまった。それに対抗するため偉炎は親友である「北条優雷」、さらには不登校だったがかつてこの国の財閥に君臨していた今川家の令嬢である「今川雪愛」と切風の四人で校内に「一般部」を結成。災厄の日常へと突き進む。
赤虎組は資金を確保するため偉炎たちが通う広星高校の地下金庫を襲撃することを決めた。その情報を手に入れた偉炎たち一般部はそれを体育大会当日に迎え撃つことになった。
 体育大会当日、一般部と赤虎組の戦闘が学校の近くの森で始まった。しかし苦戦を強いられることを予想した切風は一般部の三人に次の作戦を指示する。そして、赤虎組の幹部である御影と燿華が別働隊として学校に侵入をしたのだ。しかし、切風に指示されていた三人は先に学校に回り込み、学校にある地下金庫で衝突する。ついに最終決戦が行われようとしていた。偉炎は御影と戦闘になっていた。

〇本編

「は!馬鹿じゃねぇの?発砲する拳銃のバレルを持ったら、そりゃとんでもない衝撃が手に来る!それでしばらくはその左は痙攣したままだ!」
 そう言うと御影はすかさず拳銃を放つ。優雷はあまりに近くで撃たれてしまい、痙攣している左手を撃たれてしまう。
 彼の左手はとんでもない状況だ。ただでさえ、発砲の衝撃で痙攣しているのに今度は弾丸を手の甲に受けてしまった。あたり場所が悪ければもう彼は左手をまともに使えないかもしれない。
「優雷!」
 さすがの雪愛も心配したのだろう。すかさずナイフを燿華に投げる。
「おっと、こっちにも敵がいたと。」
 そう言うと燿華はナイフを軽々とよけ、今度は雪愛に向けて拳銃を放つ。しかし、雪愛はプロモーターを使ってコンテナの陰に隠れそれを回避した。
「可愛いレディーに向かってそれはまずいのではないかしら。」
「ハハハハハ!ナイフを持っている可愛いレディーなんて見たことないけどな!それにお前本当に高校生かよ!身長も俺より大きいし、年齢詐称していないか!?本当はババアだったりして!」その瞬間、周りが凍り付いた。いや、別に雪愛は大人と思われることには全然抵抗はない。現に、雪愛は大人と見間違えられることはかなり多い。しかし、ババアはよくない。これには切風という存在が大きい。四十代後半にして未だに中学生のような見た目をしている彼女に対してわずかながら嫉妬しているのだ。そして、雪愛は切風のことが少しというよりかなり苦手だ。だからこそ、切風より先にババアと呼ばれることだけはどうしても心が許さなかったのだ。
「てめーーー!」
 可愛いレディーが暴言を吐きながらナイフを燿華に投げる。しかし、燿華も同様に別のコンテナを盾にして自分の身を守った。
「いいか?もう一人の方を助けなくて。正直、俺よりあっちにいる御影さんの方がやばいぞ!」
 燿華は優雷と雪愛に向かって警告する。
(ちょっとあの二人を相手に戦うのはしんどいな。)
 燿華は一人でもいいから御影の方に加勢に行ってほしかった。本人的にはどちらか一人なら倒すのに苦労しないがさすがに身体能力抜群の槍使いと柔軟性のあるナイフ使いを同時に相手にするほど余裕はない。それに二人の組み合わせは妙にバランスがいい。
「これは・・・御影さんを待つしかないかな?」
 燿華は二人を相手にするのはしんどいと判断したのか時間稼ぎに変更することにした。おそらく御影はすぐに敵を倒し、こちら側に来ると思っている。時間稼ぎは本来するべきではないがそこは仕方ないのだろう。燿華は一息だけため息をした。
「はぁ・・・」
 そして、拳銃を再び携えてコンテナの陰から出て行こうとした。そして雪愛と優雷両名に対しての時間稼ぎを行おうとしたのだ。
「さて、あと一息だけがんば・・・」
 しかし、こちらもこちらで現実はうまくいかなかった。

 なめているのか?目の前には優雷がいた。そして、なぜか復活している左手を使い、蜻蛉切を燿華に一閃させた。
「やば!」
 さすがに受け身を取るだけで精一杯だった。燿華は拳銃の鉄の部分で槍を受け止めた。しかし、優雷の槍の勢いはすさまじく、槍は拳銃を破壊しそのまま燿華の腹部を軽く切り裂いた。
「うぎゃーーー!」
 そして、燿華は遠くにあったコンテナまで飛ばされた。さすがに想定外すぎただろう。もし赤虎組の幹部にたった二人の高校生が勝つとなれば赤虎組側からしたらとんだ大誤算だ。
 ただ別に燿華は生きているし、えぐられた腹部もそこまで大きくない。ただ今そこに、コンテナに座り込みながらぐったり状態であることに本人は何とも言えない気持ちになっていた。
「おーい!なんで左手を動かすことができる?お前の左手は確かに打ち抜いたはずだが。」
 遠くではあるが燿華が優雷に質問する。
「そんなもん!たまたまプロモーターを手の甲に着けていたからだ!」
 人の動きを補助するプロモーターは薄い鉄の板でできている。それを四肢につけることによって動くたびにそこから電気的なエネルギーが全身に伝えられるのだ。そして、優雷はたまたまかどうか知らないが手の甲にプロモーターの鉄の板を着けていたのだ。そのお陰で燿華の放った弾丸を防ぐことができたのだ。
「でもそもそもお前の手は痙攣していたはずじゃ・・・」
「そんなもん!三十秒あれば治る。」

いや、普通は治らない。優雷が特殊であることだけ書いておく。
「かー!これは完全に俺の負けか!拳銃も壊されてしまったし!」
「ならあなたを殺すわ。」
 雪愛はそう言うと隠れたコンテナが姿を現し、ナイフと殺意を持ちながら燿華に近づいた。
「これはこれは!顔怖すぎでしょ!」
 燿華は笑いながら手を横に振った。
「私の事、ババアって言った事忘れていないわよね?」
「うん!言ったね。」
「死ね。」 
 そう言うと雪愛は燿華にナイフを投げた。そして、自身もプロモーターで燿華に接近し、懐にあったナイフを手に携えて急接近した。
「はぁ、君本当にかわいくないね!」
 燿華はため息をつきながらゆっくりと起き上がる。
「そこに俺のことを馬鹿にしているでしょ?この状況なら俺の事を倒せると思った?」
 なんと燿華は履いているビーチサンダルで飛んでくるナイフを蹴り落した。どうやらまだまだ終わっているわけではなさそうだ。そして、近づいてくる雪愛をもう一回脚を使い、容赦なく蹴り飛ばした。

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