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羅刹の紅(小説投稿) 第九十四話

○あらすじ

普通を愛する高校生「最上偉炎」は拳銃を拾ってしまう。パニックになった彼を謎の女「切風叶」に助けてもらうが、町で悪行を繰り返す組織「赤虎組」に狙われることになってしまった。それに対抗するため偉炎は親友である「北条優雷」、さらには不登校だったがかつてこの国の財閥に君臨していた今川家の令嬢である「今川雪愛」と切風の四人で校内に「一般部」を結成。災厄の日常へと突き進む。
赤虎組は資金を確保するため偉炎たちが通う広星高校の地下金庫を襲撃することを決めた。その情報を手に入れた偉炎たち一般部はそれを体育大会当日に迎え撃つことになった。そして体育大会の当日を迎えた。
 正午になった頃、偉炎がミスをしてしまい赤虎組は学校の近くまで接近してしまう。それに対し一般部は総出で立ち向かう。ついに一般部と赤虎組の戦闘が始まった。しかし、人数的に不利な一般部はついにフォーメーションが崩れた。もはやこれまでとなったが、切風の部下と名乗る集団が一般部に加勢する。そして、ついに切風の正体が明らかになる!!(詳しくは前話で)

〇本編

「言って大丈夫なのですが、まだ早いかと思われますが。」
 カミングアウトした切風に対して緑色の服を着た一人の男が近づいてきた。名前は東沙座、切風の部下である。
「いいのいいの、いつか言わないといけないことだったからね。それよりも状況は?」
 切風は何事もなかったように話を続けた。
「・・・赤虎組の構成員たちは我々機動隊‘蜂‘によってほぼ殲滅です。奴らが使用している武器は接近戦に長けている物が多く我々の遠距離戦闘とは相性が悪かったようです。敵が少人数だと過信していたのでしょう。」
「そうね、少人数なら大人数で接近した方が有利かもだしね。まぁこのまま順調なら最後に後始末だけして退散でいいね。」
「あの・・・その後始末はもしかして・・・」
「?もちろん君たちがやるに決まっているでしょ?」
「切風さんは・・・」
「私は子供たちの面倒見ないといけないしー、しかも保健室の先生として体育大会で怪我しちゃった可哀想な生徒さんたちの面倒を見ないといけないもーん!」
「・・・」
東沙座は無言になってしまった。実際、この後処理がかなりしんどいのだ。広大な森林が広がるこの丘にある全ての人間、武器、血なども含めすべてをきれいにして戦闘前の状況を作り出さないといけないのだ。めんどくさいというのは誰でも分かる。しかし命令だ、やらないといけないことなのは承知だ。
「というわけで後はよろしく。私は戦闘が終わりそうだから子どもたちに私の事を説明しようと思う。」
 切風はその場を離れるために合理的な理由みたいなことを言ってしまった。
「いやいやいやいや!どういうこと!?」
 偉炎はほぼほぼ理性を失っていた。
「とりかく!偉炎!優雷!雪愛!君たちはよくやった!任務完了だ!あとはこの緑色の集団どもに任せて帰ろう!」
「分かりました!切風さーん!」
「分かった。」
 そう言うと何も知らない優雷と雪愛は目の前にいた赤虎組の構成員を一人倒し、切風の方に向かった。
「ちょっと待て、ちゃんと説明してくれ!なんで警軍であることを隠していた!?」
「あーはいはい、分かった。きちんと説明するから。」
 切風はようやく自分が言ったことの面倒さに気づいて少し後悔しつつ、丘を登り学校に戻ろうとした。

 しかし、ここで災厄は終わらない。残念ながら、一難去ってまた一難は日常でよくあることだ。たかが一回、奇跡的に助けが来てそれで問題解決なら苦労はしない。赤虎組という存在を少々なめすぎではないか?

「報告します!下から新たな敵が二百、こちらに向かっています。赤虎組です!」
 


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