羅刹の紅(小説投稿)第七十五話Part2
「優雷、今お前なんて言った?」
「え?部長の言う通り、大聖堂まで移動するんだろ?」
「そこじゃなくて!なんで僕が部長ってことになっている??」
偉炎は自分が一般部のトップに君臨していることを即座に否定した。
「えー、お前でいいじゃん、偉炎。」
「そうね、この部で一番まとめるの上手そうだからあんたでいいわよ。」
「は?絶対嫌だぞ!あんな顧問の部活で色々しないといけないとか、それこそ普通でなくなってしまう!」
高校生三人は話しまくった。しかし、そんな隙を見せて良い敵でもなかった。
「何ゴソゴソ話している!?」
「なめてんのか!あ!」
すかさず三人に襲い掛かたる大人たちだが、そんな正面からの攻撃を防げない子どもではないのも事実だ。
「「「うるせー!」」」
三人それぞれ持っている武器で一蹴した。その後、彼らは部長の件を話すよりも今の状況を何とかする方が先決と暗黙で理解した。
「大聖堂まで移動だ!!司祭たちを助けつつ、敵を殲滅する!!」
「「おお!」」
三人は今にも壊れそうな司祭館を抜け出した。
「とりゃ!」
優雷が蜻蛉切を大きく振って突破口を作ると三人は一斉に司祭館を飛び出した。ただ、外には外で数人の敵がいた。
「くそ!まだいるのか!」
偉炎は拳銃を構えた。
司祭館の外は大きな広場となっている。そこにあるのはただの草やら花やらのみで身を隠せるような場所は一切なかった。これは俗にいう白兵戦であったのだ。
「どうするかなり不利な感じだけど。」
雪愛が偉炎に問い詰めた。白兵戦において人数が多い方が有利なのは自明の理である。戦術などがあればもしかしたら、色々と変わるかもしれないがたった三人の戦力でそれをこなすにはさすがに頭数が少なすぎた。と言っているのもつかぬ間、偉炎たちはさっそく敵に囲まれてしまった。
偉炎はゆっくりと呼吸をしながら
「・・・自分の前の敵だけ倒そう。」
圧倒的絶望の中で自身の仲間を信じた。
「そして、それぞれが背中を向け合うんだ。そうすれば後ろから攻撃されることはない。」
「なるほど、背中を他の二人に合わせる、いわば一蓮托生というやつね。あんたたちを間然に信じるにはまだ早いけど悪くない作戦ね。」
「おーーいいじゃないか!それで行こう!!」
部員の二名は同意した。
「その状態で少しずつ大聖堂まで行くぞ。それでいいか!?」
「「了解!!」」
ここで偉炎は少し笑ってしまった。それはごく自然に出てしまった。
(え?今、僕笑った?)
正気ではない行動と言える。今すぐに殺されてしまうかもしれない時に笑ったのだ。普通なら背筋が凍るほどまずい状況であるといえる。そんな中で彼の心の中には戦闘での緊張感に慣れてしまったのか、何やら面白い衝動に駆られていたのだ。
(僕は・・・この状況を楽しんでいる!?そんなはずはない。そんなことだといつの日か殺人鬼みたいになってしまうのでは!?それだけはまずい、まじでまずい。)
偉炎は新たな感情をどうにか押し殺そうとした。しかし、そんなことをしている余裕もなく。現実で彼は敵に刺殺されそうになっていた。高校生三人の戦闘は夕日が傾き様々な物が薄赤色に変わろうとしていく中で終盤へと向かおうとしていた。
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