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羅刹の紅(小説投稿)第九十六話

○あらすじ

普通を愛する高校生「最上偉炎」は拳銃を拾ってしまう。パニックになった彼を謎の女「切風叶」に助けてもらうが、町で悪行を繰り返す組織「赤虎組」に狙われることになってしまった。それに対抗するため偉炎は親友である「北条優雷」、さらには不登校だったがかつてこの国の財閥に君臨していた今川家の令嬢である「今川雪愛」と切風の四人で校内に「一般部」を結成。災厄の日常へと突き進む。
赤虎組は資金を確保するため偉炎たちが通う広星高校の地下金庫を襲撃することを決めた。その情報を手に入れた偉炎たち一般部はそれを体育大会当日に迎え撃つことになった。
 体育大会当日、偉炎がミスをしてしまい赤虎組は学校の近くまで接近してしまう。それに対し一般部は総出で立ち向かう。ついに一般部と赤虎組の戦闘が始まった。切風の部下を名乗る精鋭部隊も加わり有利に思えたが、相手はさらに人を増やしてきた。苦戦を強いられることを予想し、切風は一般部の三人に次の作戦を指示する。だが、赤虎組にも作戦があるそうで・・・

〇本編

しかし、現実は切風の想像を少し超えた。いや、正確には想定内の想定外が起きたのだ。赤虎組のこの後の行動とすれば旧式の銃で下からひたすら撃ってくると想像した。しかし、やつらは案外簡単に勝負を決しようとしたのだ。
「全員、突撃!!」
 比較的若い人の声が聞こえるとこのまま赤虎組二百人が突撃を開始した。そしてサプレッサーもついていない銃を撃ち放ちながら丘を駆け上がってきた。
「報告します。赤虎組の全員が急接近!もうすぐそこまで来ています。」
 切風はかけているメガネを外した。そして、見ている世界をはっきり見るかのように目を大きく開いた。
「・・・っふ、なるほど。」
 切風はある程度状況を理解したのか、すぐさまコマンドマイクをオンにして部下たちに命じた。
「各自戦闘準備、こちらも迎え撃つ!なお、銃弾数は確認した上で使える分使って構わない。こちらの方が武器や装備に関しては上だ。全力でチャージ!」
「「「「了解。」」」」
 ついに【蜂】と赤虎組が前面に衝突した。普通に行けば数で多い赤虎組が接近戦だと有利かもしれないが【蜂】は全員プロモーターをつけている。機動性では負けていない。戦場は言葉通り血の沼と化した。もちろん、切風も参加した。彼女は持っている日本刀とプロモーターを使い、敵の首やら腕やらを一刀両断する。
(このままだとこっちも被害が大きそうね。)
 切風は頭の中でそんなことを思いながら数メートル離れている敵にプロモーターで急接近し、胴を斬った。(まぁ、私がここ片づけるわけではないし、いっか!敵がそう来るなら私が五十人ぐらい殺して勝利エンドということで)
 切風は少し微笑みながら敵の身体を縦に真っ二つにした。まさに悪魔だ。もはや切風にとって、これぐらいのことは今日起きた出来事のうちにしか思わない。おそらく数時間も経たないうちに殺した人の顔も忘れてしまうだろう。
 しかし、ここで再び想定内の想定外が起きてしまう。ただ、先ほどと違い彼女でさえも成功する可能性が低くない出来事である。
「・・・行くぞ。」
「言われなくてもそうするわい!」
 そう言うと赤虎組であるはずなのに赤い服を着ず、自由に動いている謎の二名が別行動をし始めた。二人は戦場になっている場所から離れるため大きく左に移動した。もちろん、切風はそれを認識した。
(あーそういうことね。比較的強いあの二人の少数で学校にある地下金庫に侵入しようというわけか。)
 もちろん疑問点はある。広星高校は前にも述べたが高校の財産をすべて地下金庫で現金のまま保管してある。仮に二人の侵入を許しても二人だけで大金を運べるとは思えない。それに二人が金庫のある場所を知っていたとしてもそこは厳重にロックされている。よほどのことがない限り、それを突破することは不可能だろう。
(にもかかわらず二人だけを向かわせる理由はなんだ。彼らには特別な何かがあるのか。)
 切風は持っている日本刀を冷静に振り回しながら考えに考えた。そして、思い出した。

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