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羅刹の紅(小説投稿)第九十一話Part2

○あらすじ

普通を愛する高校生「最上偉炎」は拳銃を拾ってしまう。パニックになった彼を謎の女「切風叶」に助けてもらうが、町で悪行を繰り返す組織「赤虎組」に狙われることになってしまった。それに対抗するため偉炎は親友である「北条優雷」、さらには不登校だったがかつてこの国の財閥に君臨していた今川家の令嬢である「今川雪愛」と切風の四人で校内に「一般部」を結成。災厄の日常へと突き進む。
赤虎組は資金を確保するため偉炎たちが通う広星高校の地下金庫を襲撃することを決めた。その情報を手に入れた偉炎たち一般部はそれを体育大会当日に迎え撃たなければならなくなったのだ。そしてそれぞれが準備を整え、ついに体育大会の当日を迎えた。
 正午になった頃、偉炎は学校の外で昼食を取りながら見張っていたが、最近の疲れからか眠ってしまった。しかしその間に赤虎組は学校の近くまで接近してしまったのだ。
失態をしてしまった偉炎はその瞬間、かなり落ち込んんでしまうが雪愛はそんな彼に声をかけるのであった。

○本編
彼女の声は本物だった。雪愛はダーツ投げで注目を集めているにもかかわらず、そこを抜け出して赤虎組のいる方に向かっているのだ。
「切風がそこまで来てる。早く拳銃とプロモーター(見た目は銀の板だがそれを四肢につけると人の動きを数倍上げてくれる装置)をつけて戦わないと。」
「でも、、、」
「わかってる!!だけどそんな反省はいつでもできる。今でもできることではなく今しかできないことをしなさい!!大丈夫!!一般部がいるから。」
 偉炎は雪愛の励ましによって少しずつ元気になっていた。
「…ありがとう。がんばれそう。」
「ならよかったわ。現場で落ち合いましょ。」
 そういうと、雪愛は通信を切った。
(ここで学校を守らないと僕の普通が終わる。)
 偉炎は今すぐ動きたいところを一旦止め、手を胸に押し当てた。
(やってしまったことは仕方ない。あとで、切風にぼこられよう。)
 そして、今しかできないことに専念することを心に誓った。
「僕の日常を、普通を守る!!」
 彼は屋上の階段を勢いをよく下がっていった。
「偉炎!!」
 学校の外に出るとそこには行き雪愛と切風がいた。
「状況は?」
 偉炎はすぐに質問する。
「あんまり良くない、というよりまずい。百人ぐらいの赤虎組が丘を登り始めている。このままだとあと三分もしないで学校に侵入してくる。対抗しているのは優雷だがあいつは武器を持っていない。普通に死ぬかも。」
「は!」
「だから早く武器を装備して急行するわよ!」
 そう言うと切風は手から拳銃とプロモーターを出して偉炎に渡した。
「とにかく私と雪愛は先に行く!早く来るように!」
 そう言うと切風、雪愛両名は丘を下った。ちなみに二人ともすでにプロモーターを装備しており、数秒の内には先頭に入りそうだ。
「僕も頑張らなければ・・・!」
 プロモーターを四肢に取り付けながら偉炎は何とか押し殺していた負の感情をさらに抑え込むため独り言でやる気を上げる。彼にできることはもう決まっている。

 ここで災厄を終わらせる!

 偉炎は現場に直行した。

学校では午後の種目が始まっていた。しかし、偉炎たち三人は午前中の種目のみしか参加していないため体育大会で迷惑をかけることはない。実際、プログラムは順調に進んでいた。
「さぁ、やってきました!今度は・・・ドッチボールです。各クラスの出場者は体育館に集合してください!」
 涼子は午前中の勢いそのままに場を盛り上げていた。そして、生徒含め学校のすべての人間が楽しみにあふれていた・・・四人を除いて。
 偉炎は赤虎組を目視するとドッチボールではなく弾丸を相手の体に当てた。
「うぎゃーーー!」
 一人が倒れる。そしてその異変に気付かない程敵もばかではない。
「こいつらだ!多分俺たちの邪魔しに来たぞ!」
「教会では拳銃を使うやつがいたと聞いていたがこいつで間違いなさそうだ!」
「有坂さんの言った通りになった!向かうつぞ!」
 さすがに相手も把握してからか偉炎の行動に驚きはしない。赤虎組の構成員は山を登り続ける。それに対してすでに優雷達が応戦していた。
「おらぁ!」
 優雷は切風に渡されたであろう蜻蛉切(優雷の武器、伸縮可能の槍で電流を流すことができる。)で相手を一閃していた。そして、身に着けているプロモーターでさらに戦闘力が増していた。
「こいつ・・・!なんてパワーだ。」
「こっちは数だ!押し倒せ。」

どうやら赤虎組は数で対抗するようだ。確かに現状、四対百だ。冷静に考えればいじめに等しい。そして四人の内三人はまだ高校生である。普通に考えれば圧倒的に不利を強いられているようにも思える。
ただ、偉炎たちはいくつか有利である。まずは地形だ。戦闘場所は森には木がたくさんありそれを駆使すれば隠れながら敵の隙をつくことも可能だ。そして、赤虎組は下から上に登らないといけないが偉炎たちは上から待ち構えていればいい。武器も四人の内二人が飛び道具(偉炎の拳銃、雪愛のナイフ)を使用しているため、撃てる限り、投げられる限り、シューティングすればいいのだ。そして、プロモーターの存在は大きい。森の中でプロモーターを使えば、素早く木から木に動くことも可能であり攻撃にも防御にも使える。(もちろん赤虎組はそんな最先端のものを見に着けていない。)これは状況を変えるには十分の装置なのだ。
 一般部と赤虎組は本格的に衝突を始めた。
「フォーメーションはいいわね!?私と優雷が左で接近戦、偉炎雪愛は右で遠距離戦闘よ!」
「「「了解」」」
 そう言うと切風は優雷のいる左に移動し、腰に携えていた日本刀を取り出した。ちなみに切風の戦闘は久しぶりであるため一応記しておくと切風は戦闘の際に日本刀を使用する。もちろん常に持っているわけではなく保健室の床に隠している。だが、その技術はずば抜けている。
「さぁ、やろうか!」
 そう言うと切風は登ってくる赤虎組の一人を脇から斬り捨てた。そして、斬る時にできた遠心力で自身の体を回転させ、別の敵をそのまま斬る。わずか三秒で二人の命を取った。
「・・・やばい。」
「何だこのガキ女!弱そうな身なりしているくせに!」
 赤虎組の構成員たちは驚く。しかし、そんなことを言っている間に切風はプロモーターの力を利用して木の幹に足を置いた。そして、充分にしゃがみバネをつけてから、今度は横に飛び少し遠くにいる油断した敵に急接近し、
「うあああああ!」
 そのまま斬った。


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