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NEWS「NO,8 早すぎる辞任」 

1,早すぎる辞任

トラス首相は20日に突然辞任発表した。トラス首相の目玉政策であった大規模な減税政策の大半が撤回され、彼女の言葉を借りるなら「職責を果たせなくなった」ため辞任に到った。就任から辞任までは僅か45日であった。
 タブロイド紙であるデイリー・スター(Daily Star)はトラス首相が辞任するのとレタスが腐るのとどちらが早いかを競わせる「賞味期限」レースを実施した。この様な“お遊び”が実施されるほどトラス政権は虫の息であった。上記の政策の失敗を財務相一人に押し付けるだけでなく、大臣規範に違反した内務相からは後ろ足で砂を掛けられる様に辞表を提出された。
 現代政治では市場に対して特に気を配らなければならない。安倍元総理が長期政権を築けた要因の一つに市場との関係が良好であった点がある。トラス首相の政策は債権市場を混乱させポンドの急落を招いた。これに伴い英年金基金がマージンコールを要求されたり、イングランド銀行が当初予定していた量的引き締めの一時停止を余儀なくされたりと完全にシティに嫌われてしまった。
 

2,トラス首相の評価

トラス首相はオックスフォード大学を卒業し2010年の選挙で国政入りを果たした。その後は環境大臣や外務大臣を務めた。外務大臣時代にはロシアのウクライナ侵攻に対して強硬な姿勢をとった。また、中国の人権問題に関しても強行的な立場をとる人物である。
 彼女自身は保守党員であるが、彼女の両親は労働党支持者である。政治的指向は両親の影響を受けやすい。子供は多くの場合、両親が支持していた政党を大人になった際に支持する傾向にある。実際、幼少期は労働党を支持していた。また、学生時代は自由民主党に入党している。更に、EU離脱には反対票を投じたものの現在は賛成派に回るなど意見が変わりやすい人物であることが窺える。
 

3, 次は誰?

ジョンソン前首相が退任してから2ヶ月も経たずに後任者が辞任を発表したことにより、保守党は4ヶ月で2回も党首選を実施せざるを得なくなった。そもそも前回の党首選にて各ステージにて討論会が行われてトラス首相を選任したにも関わらず、再び党首選を実施しなければいけなくなったことは残念である。保守党の人々には猛省を促したい。トラス首相の後任者として名前が挙がるのはスナク元財務大臣、ウォレス国防大臣、そしてジョンソン前首相などである。
 しかしながら、現在の保守党の支持率は労働党に劣ってあり誰が選出されても火中の栗を拾う状態であり前途多難であることは疑いようの無い事実である。
 話は変わるがイギリス議会では活気ある論戦が繰り広げられている。先日もトラス首相とスターマー労働党党首(Sir Keir Rodney Starmer)との論戦にてスターマー党首が「Gone」と発言する度に労働党議員が呼応する場面があり、日本では粛々と論戦を交わすのと対照的であり面白い。ぜひ機会があれば議会での論戦にも注目していただきたい。


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