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道警、裁判所にヤフコメを提出(ヤジ排除国賠 第二回期日報告)

 みなさん、こんにちは。ヤジポイの会です。

 コロナ禍が猛威を振るう中、今月のはじめにヤジ排除問題の国家賠償請求訴訟、第二回期日が開かれました。今回は、二人目の原告となった女性(桃井)による意見陳述が行われました。また、その後に開かれた報告集会では、道警側が事前に提出した書類(準備書面)についての解説が行われました。これらについて、簡単に報告します。


 まずは裁判を報じるHTBのニュース映像をどうぞ。 


裁判

 今回の裁判期日ですが、まずコロナ対策で傍聴席が大幅に制限されました。本来80席ある法廷の傍聴席が30席にまで減らされ、さらにそのうちの12席が記者クラブ用とされたため、実質入れるのは18人となりました。傍聴のための抽選には75人ほどが詰めかけため、倍率は4倍となりました。

 抽選券をもらうための順番待ちは、これまたコロナ対策で、間隔を開けて並ぶことを裁判所から指示されたため、やたらと長い列になったようです。札幌地裁では、職員の中にコロナ感染者が出たためか(3月前半)、対策には神経を尖らせているようでした。裁判所に来た人の中でマスクをしていない人がいると、裁判所側からマスクがもらえます。このご時世には大盤振る舞いです。

 さて、そのような事情で座席がスカスカのまま始まりましたが、原告以外のヤジポイメンバーは全員抽選に漏れました(悲劇) 前回同様、メディアによる撮影タイムが終わった途端に、道警側の代理人が入廷します。こっちは原告として人前に顔を出しているのに、向こうの代理人はカメラを避けてコソコソしていて恥ずかしくないのかと思います。

 今回は、二人目の原告である桃井が、裁判に臨む意気込みや思いを滔々と読み上げていきました。裁判長側を向いて喋りながら、ときどき視線を道警側に向けていました。

 なにを語ったかの詳細は下記のリンクから読んでいただければと思いますが、道警側の出してきた不誠実極まりない主張を強く批判しています。



道警側の準備書面(ヤフコメ文書)について

 今回の期日の直前には、道警側が大杉を排除したことについての主張を説明した文書が裁判所と原告側(こちら)に送られてきました。しかし、その内容は荒唐無稽で、滑稽というほかないものでした。

 ツッコミどころは数え切れないのですが、大まかな論調としては排除を正当化するものです。個人的に(大杉が)気になった箇所を指摘させてもらうと……

①ヤジを「罵声」と表記

 大杉が排除の当日に現場で叫んだ言葉は、「安倍やめろ」「帰れ」「バカ野郎」の三種類です。このうち、「バカ野郎」は確かに罵声と言えるかもしれません。が、それも含めて、「安倍を支持しない」というメッセージを伝えるための、政治的言論・論評の一種です。
 しかし、道警としては、これは「罵声」にあたるらしいです。道警側は「主張内容で排除したわけではない」と言い張っていますが、そのわりにはヤジを「罵声」と表記し、「言論と呼ぶにふさわしくないもの」という価値判断を加えていることが透けてみます。

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(期日後の報告集会では、弁護団による解説が加えられました)


②光線を照射

 三越前で大杉を排除した場面での説明です。

 文章をそのまま引用すると…

「原告が警護対象者である安倍総裁やその周囲の候補者らに対して、物を投げたり発射する、液体やつばをかける、光線を照射する、大音響を鳴らす、爆発物を爆破させる、ひいては選挙車両に登って直接危害を加えるほか、同車両を蹴るなどする犯罪行為を行う危険性が極めて高いと警察官らが認めたのは、過去の事件に鑑みれば当然のことである」(道側準備書面のpp32-33)


 個人的に面白いのは、「光線を照射」です。ビーム?? 人間にはそんな機能があるんでしょうか?? もちろん、真面目な人は「レーザーポインターは目に当たると危険だよ」というかもしれませんが、そんな素振りはこちらにはありませんでした。こちらがやったのは、単なるヤジであって、それ以上でも以下でもありません。具体的で差し迫った犯罪行為が行われようとしていない以上、警職法5条を適用しての「制止」は違法です。

 参考までに動画も載せておきます。見ればわかりますが、ヤジった途端に排除されているので、他に何かをする余裕も時間もありませんでした。この動画を見て、大杉の体からアベに向かってビームが照射されそうに見えたら、あなたも道警警備部で働けるかもしれません(適当)



③凶器となりうる自撮り棒

 札幌駅前での排除を正当化するくだりで出てきます。警察によると、ヤジを飛ばした大杉は、周囲の安倍支持者によって暴力を加えられそうになっていたらしい。そして、そこから「避難」させるために排除した、というのが警察の主張です。
 そして、警察によると、大杉に暴力を振るおうとした男性は、「凶器となりうる自撮り棒」を持っていたというのです。

 いや、1万歩ぐらい譲って、自撮り棒は凶器にならないことはないかもしれません。細くても「棒」ですからね。でも、みんな平和な目的のために使ってる自撮り棒を、「凶器となりうる」って……というか、そんな人があの場にいた記憶は全くないんですけど、誰の話をしてるんでしょうか。
 警察の警戒心にかかれば、そのへんの通行人全員を犯罪者として捉えることも朝飯前なんでしょうね。自撮り棒を持っているみなさん、北海道に遊びに来る際は、警察に職務質問されないように気をつけてくださいね。

 それにしても、字面が面白いですよね。「凶器となりうる自撮り棒」!アハハ~……

って、「凶器」を持ってるヤツがいるならそいつを排除しろよ!!

ア ホ か ! ! ! !


④ヤフーコメントを証拠として提出

 極めつけはこれです。

 今回の事件では、原告と被告の言い分が食い違っています。そのため、「原告の主張は誤っている」と主張するならば、被告はその根拠となる資料を提出する必要がありますが、道警側の出してきた書面には、動画や画像など、現場の状況がわかる証拠が何一つ添付されていません。

 その代わりに道警側が証拠として裁判所に提出したのは、なんとヤジ排除を報じるヤフーニュースの「コメント欄」だったのです。そうです、ヤフーニュースの下に書き込まれた、匿名のコメント欄。通称「ヤフコメ」。記事本文をろくに読まないで書かれた罵詈雑言やヘイトスピーチにあふれ、「便所の落書き」以下の掃き溜めのようなアレを、道警は印刷して提出してきたのです。


 

これにはもう、弁護団も含めて原告側全員が脱力しました。

 こっちは真剣に法律に基づいて議論をしようとしたら、法律となんの関係もない、誰が書いたかもわからないヤフコメが提出されてきたのですから。こんなものを真に受けるのはネトウヨだけです。

 しかも、提出されたコメント欄には、「ヤジは演説妨害だ」といったものも見られ、そもそも道警の主張していないことも書かれています。こんなものを出して、いったい何が言いたいのか……

 この裁判で道警側の代理人弁護士を担っているのは、齋藤隆広(齊藤祐三法律事務所)ですが、彼は北海道大学の顧問弁護士なども務めています。おそらく「権力側」の仕事を担うことが多いのでしょうが、しかし、いくらなんでもこんなことして恥ずかしくないのか……余計なお世話ですが、北大も金払う相手を考え直したほうがいいのではと思います。

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(報告集会の様子。弁護団も道警の文書にドン引き)


「警察官の特定」を先延ばしにする

 警察側の出した準備書面にはまだツッコミどころがあります。そこでは、現場で排除に関与した警察官10人の証言が載っています。いわく「警察官Aによれば~」といった形で、AからJまであります。

 しかし、問題はここに載っている者が一体誰なのか、書面を読んだだけではわからないことです。別に名前がわからなくてもいいのですが、せめて顔や現場のどこにいたのかがわからないと、こちらとしては反論もなにもできません(こちらが出した書面には、証拠として現場で撮影した警察官の顔写真が載っています)。

 そのような事情で、原告側弁護団が「誰が誰なのか特定してください」と要望(求釈明)を出しますが、道警側弁護人の齋藤は「特定できるかどうか持ち帰って検討します」「検討した結果を6月に出します」と返答。
 こちらは、「いやいや、遅すぎだろバカか?」と心のなかで悪態をつきます。原告側弁護人が「特定するつもりがないんですか」と聞くと、向こうは「そんなことは言ってませんよ」と即答。嫌な感じです。

 結局、裁判官からの促しもあり、「特定できるかどうかの回答を5月(連休明け)に提出」「それを踏まえて次回の期日は6月15日」ということになりました。

 繰り返しになりますが、書面の警察官が誰かわからなければ、そもそも議論ができません。にも関わらず、それを「特定できるかどうかの回答をする」までに一ヶ月かける、というのはさすがになめてます。というか、おおもとの事件(ヤジ排除)はそもそも2019年7月のもので、そこから道警側が法的根拠を示すまで7ヶ月以上もかけていました。現時点でも時間がかかりすぎているのです。少しでも誠実さがあるなら、いたずらに時間をかけず、事実を明らかにするために即座に応じるべきでしょう(あ、でもそもそも誠実じゃないから裁判してるのか)

次回期日について

 ということで、次回の裁判期日は2020年6月15日(月)14:00から札幌地裁にて。コロナで裁判自体が中止にならない限り開かれると思います。札幌近郊にお住まいのみなさんはぜひ傍聴に訪れて、道警の滑稽さをその目で確認してみてはいかがでしょうか。


メディア報道について

 これについては、新聞・テレビの各社が報じていましたが、フリージャーナリストの小笠原淳さんの「弁護士ドットコム」に載った記事が、分量も多くてわかりやすいのでおすすめです。


新聞テレビ各社

(テレビでは、NHKやSTVなどでも取り上げられていましたが、4/19現在、視聴期限が切れているようで、見れなくなっていました)


(2021年12月25日追記)

ヤジ排除問題における当事者であり、原告である「藤根」(仮名)については、裁判の途中から本名である「桃井」名を公表・使用することとしたため、この記事内の「藤根」という表記もすべて「桃井」に変更しました。

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