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法華経摩尼珠譚

とある国がありました。その国を治めている大王が居ました。その大王は世界万民に尊敬され四方八方から賢者等や王族等がお目にかかる為だけにわざわざ国を訪れて来ました。そんな位の高い御方にも関わらず、その大王は智慧満載でその上、大変慈悲深い御方で一切の万民を乞わなく大事にしてました。その大王が持ってる種々の宝の中で大王が一番大切にしてたのが壮麗な白蓮花が中央に組み込まれた摩尼でした。その摩尼は他の宝飾と競べようがないほど実に見事な出来で他より光輝いてました。ある時、大王は使用人を呼びました。その使用人は大王持つ摩尼の素晴らしさを充分理解してました。そこで大王は使用人に云いました:

「この摩尼を万民に見せて廻りに行きなさい。もし、その中でこの摩尼の真の美しさ、素晴らしさが分かる者がいたら私に報告しなさい。」

使用人は大王の仰せの通り彼の摩尼をお借りし、外に出ました。歩いているうちに宝飾を全く身に纏っていない人々の一行に出くわしました。彼らに摩尼を見せると彼らは口々に:

「こんなのただの石じゃないか。何の価値もない。」

と、言って歩き去りました。次に様々な宝飾を身に纏った人々の一行に出くわしました。彼らに摩尼を見せると彼らをは口々に:

「美しい宝珠だ。しかし、そのような珠玉は私達も持っている。特別な物ではない。」

と、言って歩き去りました。次にまた、様々な宝飾を身に纏った人々の一行に出くわしました。しかし、前の一行とは少し違い、心底では自分たちが今身に着けてる宝飾より遥かに見事な宝が存在することを知っていました。そこで、使用人が持っていた摩尼を見せると彼らをは口々に:

「なんて美しい宝珠なんだ! こんな宝物、今迄見たことない。どこで見つけたんだ?」

と、摩尼を見つめながら使用人に問いました。使用人は彼らに事情を説明し、一刻も早く大王もとに戻り、彼らの事を報告しました。大王は大いに喜び、すぐさま象や馬が引く立派な車を彼らのもとへ送り出し、大座に招きました。個々の車で到着した彼らの前で大王をこう告げました:

「お前達はこの摩尼の真の美しさ、素晴らしさを覚った。そこで、お前達が今身に纏っている宝飾を全て大宝に変えてやろう。」

そう云って、大王は彼らの宝飾を一つ一つ身から離し、壇の上に置きました。すると、個々の宝飾一斉に莫大な光を放ち、以前とは比べ物にならない大宝へ姿を変えました。その大宝を個人々々に返しずつ、大王はこう述べました:

「例えどれほど華やかであろうが眩しかろうが、この摩尼の真の美しさ、素晴らしさは一切の宝飾を以前より遥かに壮麗な大宝に変るであろう。ならびにこの摩尼の真の美しさ、素晴らしさを覚り、心に持つ者がその大宝を身に纏うとその者たちは以前より遥か祐福に見えるだろう。さぁ、次はお前達もこの摩尼を全国民に見せて廻りなさい。その中でこの摩尼の真の美しさ、素晴らしさが分かる者が他にいたらその者たちの宝飾も大宝に変えてみせよう。」

この大王とは如来のことで、その御方が治めている国が娑婆世界です。如来の意である法華経こそが壮麗な白蓮花が中央に組み込まれた摩尼であり、他の種々の宝飾である他の経品を否定することなく一切を擡げ、悉く大宝に変えます。そうゆう法華経の優越性をいまいちよく知っているのが如来の使用人である、法華経の行者です。四安楽行を心に持ち、人々に法華経を解き、正法を通して一乗に乘せることこそが法華経の行者の役目です。

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