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プロブロガーは夢のあと

10年ぐらい前から、「古い考えに凝り固まったオッサンの支配から脱却して、ネットを活用して生きていこう」みたいなブームがあったけれど、ここ最近はかなり静かになってきたな、と思う。具体的には、その頃にブログブームというものがあって、「プロブロガー」みたいなノマドな生き方がもてはやされていた。最近、その界隈のその動きがいったんひと段落したというか。
 
結局、蓋を開けてみると、「オッサンを敵対視」していた人は敗れて、「オッサンとうまくやっていった」人が成功しているような印象がある。僕はネットバブルで興った企業のなかで一番興味があるのがサイバーエージェント社で、代表の藤田晋にすごく関心がある。著作を読んでいるとわかるのだが、いい具合に「青臭い」ところがあり、それでいて「ドライ」なところもあり、「理論的」なところもあれば「根性論」みたいなところもあって、ものすごくバランスがいい、というのが僕の印象。若い人が「ついてこれない」部分もあるだろうな、と思う一方で、「これはついていきたくなるだろうな」と感じる部分もあったり。


自分はもう32才で、少しずつ20代の感覚から離れつつあるのでなんとなく客観的に「若者」を見ることができるのだけれど、若い人というのは本当はもっと「がんばりたい」んじゃないかと思う。「がんばりたい」と思ってはいるけれど、「ここはがんばるところじゃない」と感じるからつらいのではないかと。ブラック労働はダメだ、法律を守らない経営者は失格だ、という風潮がある一方で、若者が勤めるIT企業は徹夜もいとわずサービス構築をしていたりするので、なんだか極端だな、と感じる。
 
結局、ブラック企業の何が問題で、何がそんなに若者を疲弊させるのかというと、「オッサン(経営者、権力者)を儲かり、肥え太らせる一方で、若者が搾取され、疲弊する」という構図が問題なんだと思う。とはいえ、某プロブロガーのように、「そういうサラリーマン(社畜)から脱却しよう」と扇動しても、最終的には成功に至らない。なぜならば、真実として、この世界を実質的に支配しているのはオッサンだからだ。敵対するのではなく、協力しあうべきで、うまく立ち回った企業だけが生き残っている。かなり主観的な見方だけれど、僕はそんな感じで捉えている。
 
有名な話だけれど、いまではIT業界の大ボスとでもいうべき孫正義も、起業前夜はマクドナルドの藤田田氏にアポイントをとって会いに行ったらしい。結局、どれだけイノベーションを興したとしても、最終的には経済界のボスにぶちあたるのだから、そこと敵対していると潰される。もちろん孫正義や藤田晋がメディアの知らないところでどういう立ち振る舞いをしているかはわからないけれど、実際は相手の顔を立てて、リスペクトし、相手に不利益をもたらさないようにして、敵にまわさないように振舞っているのではないか、と想像する。


現実問題として、若者は「弱い」。若者には「若さ」しかなく、経験も人脈もない状態はとても脆弱だ。経験も能力も勝るオッサンとどう交渉し、どう協力しあっていくのかがとにかく大事になるのかな、と。
 
もちろん、そういうものに立ち向かっていく起業家精神というのがあるのが前提として、ということだけれども。そういう「立ち回り」がうまくできて、はじめて一流の経営者なのかな、と。

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