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アートとカラービジネスの共通点

村上隆さんの「芸術起業論」で、考えるテーマをたくさんもらいました。
本書に出てくる「芸術・アート」という単語を、カラーなど自分のビジネスに置き換えれば、カラーだけでなく、ネイルや美容院などの「美」に携わるビジネスのヒントになると感じました。

村上隆さんは、日本のアート界のトップランナーですよね。フィギュア作品が16億の値を付けたり、ルイヴィトンなどとコラボしたり。
私はポップな作品のイメージしかありませんでした。
東大より入学が難しい、東京藝術大学で日本画の博士号まで取った、美術界のエリートなのですね。そんなアカデミックなエリートが、美術の歴史を研究し、考えに考え抜いた戦略と行動で、作品に価値を作り出しているからこそ、世界で認められる存在になっていることを、本書を通じて知りました
トップランナーの頭の中を覗ける良書です。

この記事では、参考になった部分をカラービジネスと関連させながら、無秩序に挙げていきます。

「自由に作る」は、芸術ビジネスで勝ち抜くのに、害でしか無い

どんなビジネスでも、文脈と歴史を知り、今、何を、誰が、何のために、どのように作るのか?サービスを提供するのか?が重要で、ルールの違う戦いではお金が取れない。

ビジネスの場合、自分がどんなルールの中でサービスを行い、戦っているのかを考えることは少ないと思います。私は深く考えたことがありませんでした。考えもせず、なんとなくルール内にいるだけだったので、考えるきかけになりました。

カラー診断というサービスでも、文脈と歴史を知って、自分(そのカラーリスト)が、誰に何のためにそのサービスを提供するのか?を考えていない人は、お金を稼ぐことはできません。カラー診断をする人はたくさんいますので。

芸術は人の心の救済。欲望の解消。そのためには、自分の欲望を知る必要がある

物が欲しい。お金が欲しい。権力が欲しい。有名になりたい。
これら人間の欲望を満たすからこそ、お金をもらえるわけで、自分の欲望が何なのかをはっきりさせないと、他人の欲望を満たすことはできない。
自分の中のドロドロとしたものを認識する必要がある。

カラー診断で言えば、解決できる欲望は
「自分に似合う物(服やメイク)が欲しい」
「きれいになって、ちやほやされたい。モテたい。他人に良く思われたい」
「似合うを知って、無駄な買い物を減らしたい。家の物を減らしたい」
など、色々とあります。

自分がなぜカラー診断など、そのサービスを提供したいのか。
自分の欲望を、自分の歴史(プロフィール)と掛け合わせ、なぜ自分を選ぶべきなのか、誰に対してそれを届けたいのかを明確にしているカラーリストほど、お客様に上手にPRできていると感じます。人気サロンのSNSやプロフィールは参考になります。

日本の美術ビジネスのお客様は、美大と美大予備校

日本では毎年、何十万人もの美大生(2006年の本なので、今はある程度減っているはずです)が生まれている。その何者になるかわからない、奨学金などで借金している人も多い若者からお金を取って、学校で「先生」という安定的な地位で給与をもらうことが、大部分の美術関係者の生計の立て方。美術手帖に一回でも載れば箔が付いて安泰。
アーティストとして、歴史や文脈としっかり向き合って稼げる人は、ほんの一握り。

カラーの仕事も、カラーを学びたいという、何者になるかわからない方からお金を頂いて、養成講座で教える「先生」になることが、生計を立てる一番の近道であり、正攻法です。養成講座は単価高いですが、仕事にするための、カラーの歴史や今の文脈、マーケティングや考え方などは教えてくれなません(大半の学校では)
個人のお客様をターゲットにして、高いビジネス・マーケティング力で次から次へと集客し、仕事を続けられる人はほんの一握りです。
カラーの持つ力を論理的に、かつクライアントが喜ぶ形で提供し、企業案件を獲得できるのも、ほんの一握りです。
ビジネス構造の共通点が多く、今まで構造を深く考えることがなかったので、参考になりました。

心の振り幅が価値を上げる

カラーだと、どんなカラーリストも、インスタ等に載せているビフォー・アフター写真。心の振り幅を感じるのには、効果的です。
今、こんな自分が、カラーで、こう見た目が変わって、自分の人生も変わるかも。と、その方の「今」の状態と、想像する「未来」の状態との差が大きければ、ワクワクできます。
お客様になってもらうには、単純にビフォー・アフターの写真を載せるだけでは不十分だと思います。そこにはストーリーが無いからです。
どんなバックグラウンドの、今どんな状態の人が、カラー診断で服装やメイクが変わることで、どう人生が変わったのか。それを知ることができれば、深く共感する人が増えます。その深さが無いと、予約にはつながりません。カラー診断できる人は何千といて、人気サロンの方が安心できますので。

概念・観念を作るのがブランディング

ルイ・ヴィトンなどの一流ブランドには、超一流の人たちが多くいて、その叡智を束ねて世の中に「概念」「観念」を作り、高値で販売するも、効率が良い商売とは言えない。芸術は、かなり知恵を絞らないといけない。

カラーも同じで、知恵を絞らないと残れません。今は先人の作ったものの上で商売をさせてもらっているだけで、そのルールに乗れば、今はお金を稼げます。例えば、これからメタバースが本格化すれば、バーチャル空間内でカラーの価値を生み出す必要があり、現在のルールは使えません。
新たな「概念」「観念」を作れるかどうか、それを最初に作った人が稼げます。知恵を絞るには、歴史や文脈を学んだ上で、今を分析し、適切な形とプロモーションで提供する必要があります。とにかく、時代に合わせて、多くの人達が心地よいと思う形にしなければいけません。

価値は偶然から生まれる

権力者やお金持ちの愛人などが「この絵好き。欲しい」と言ったのがきっかけで、価値が上がったりする。作品周辺の細部まで工夫を凝らして、お客様に楽しんでもらうことが必要。
絵なんて、紙に絵の具を乗せた痕跡でしかなく、それ自体には価値なんて無い。だから人間の「想像力をふくらませる」しかけが必要。

インフルエンサーが「買ってよかったものベスト10」をやると売れ、その商品の価値が上がったりします。案件もありますが、ものが溢れている時代、人に発信してもらえるくらい、楽しんでもらえるものでなければ、広まりません。
カラーのサービス価値の本質は、他人が同じ色をどう見えているかなんてわかりませんので、カラーリストがお客様に伝える言葉です。言葉でお客様の想像力をふくらませて、喜んでもらいます。

私の好きなエピソードで、箭内さんが佐藤可士和さんの仕事を
「この赤。はい1億」
というのがあります。

佐藤可士和さんが手掛けた、UNIQLOロゴの赤。
素人が「この赤がいですよ」と同じ赤を提案しても、「それが?」と価値は0円です。
可士和さんが、「これこれこういうコンセプトで、こうだからこの赤」と柳井社長の思いを汲み取って、歴史や文脈も考えに考え抜いた素敵なプレゼンをすると、それが1億にも10億にもなります。
同じ赤を提案する事実は同じですが、結果で生まれる価値は全く違います。
UNIQLOの場合は、柳井社長の想像力を膨らませて、喜んでもらったことになります。
もちろん、提案できる立場にあったというキャリアの賜物ですが、そのキャリアも、デザインというもので、人の想像力を膨らませて、喜んでもらうの積み重ねです。

みんな「誰かやらないかな」と思っていることは、正解が出ている

正解が出ているのだから、ただそこに進めばいいのに、やらない。だから成功できない。

娯楽に麻痺した現代人の完成を揺さぶる一撃を打ち込むには、よほどの能力が必要

ドラマが付加されれば、価値を生むことができる

ゴッホより、ボナールのほうが上手い。でも、世間的にはゴッホの方が有名。それは、耳を切り落としたという、簡単に他の人に話すことができるエピソード(副題)があるから。エピソードは、価値のプレゼン。

知識やスキルがあっても、稼げない人はいます。
知識もスキルもあまりなくても、「アイドルの○○さんが来た」「テレビに出た」というエピソードがあれば、稼げる可能性があります。

正直、お客様には、カラーリストの知識やスキルの良し悪しを判断するのは難しです。また、サービス提供者のカラーリストでも、他のカラーリストと比較する機会がまず無いので、自分の知識とスキルのレベルを知ることは難しく、常に不安に思う方か、「自分は正しい」という自信満々の方かの両方に分かれることが多いです。もちろん、稼げる確率が高いのは後者です。
後者のように自信があると、SNS等での発信に魅力が増え、接客にも説得力がまして、「メディアからのオファー」といった、エピソードトークできるような案件を獲得しやすいです。そうすると、より仕事が集まります。
駆け出しの場合であっても、自分がカラーをやりたいと思ったきっかけを、プロフィールと掛け合わせてエピソードにできれば、自分と提供するサービスの価値を、プレゼンすることができます。

文化の精神性を説明する

こんな面倒なこととしっかり向き合って、ちゃんとやれた人が世界に通用する。インテリは「わけのわからないこと」を論理で語れる。
「この絵は、これこれこんな文脈で、こういう解釈ができる」というようなことを語り合うのも絵の楽しみで、そんなインテリな自分すごいでしょう!とドヤれるものには、価値が生まれる。

カラー診断も、日本に定着した文化と言って良いと思います。そこには、日本人の精神性と大きく関わりがあります。
カラー診断の「価値」の根源が、日本の歴史のどこで生まれ、どのように変化して、今のカラー診断に至っているか。そして、アメリカから入ってきたパーソナルカラーという概念が、どのように日本に変化して定着し、現代人のどんな感情とフィットしているのか。
これを、しっかり説明できる人から、私はカラー診断を受けたいです。
この記事を読んでいるカラーリストの方へ。説明できますか?
私は自信を持って話せるほど、考えたこと無いです。考えます。

物事を好きになり始める動機より、続けるための動機の方が大切

まさに、その通りだと感じます。
私の場合、カラー教材の仕事は、好きで始めたわけではなく、ただの偶然なのですが、コロナ前までは、なんとなく行っていました。
コロナで、カラーリストに支えられて自分の生活があることを実感し、動機を考えるきっかけとなりました。

カラーリストの仕事をサポートする環境(インフラ)を作りたい

カラーリストは、人生を賭けて色と向き合っています。
その賭けた時間が、仕事になり、稼げることで、より充実したものとなりますが、全然稼げず、1年未満で辞めてしまう方も多いです。
カラーは、キラキラしたイメージとは裏腹に、仕事にするには難しいジャンルです。
当社の教材は、カラーを仕事するためのものですが、それだけあっても不十分です。スクールでは教えてくれない「仕事にするための知識やヒント」も必要だと感じ、オンライン講座や情報商材、このnoteも始めました。
続けるための動機が明確、というよりは、「これが動機なのだ」と自分を納得させられると、行動に結びついて仕事の内容が変わります。

続けるための動機次第を考えていなければ、惰性で続けるだけで挑戦も無く、カラーリストに新たな情報や価値を提供できなかったと思います。


村上さんの著書は、考えるヒントが沢山ありました。おすすめです!