見出し画像

1st LIVE DVD「ぼくたちアンディモリ」という奇跡と、後藤大樹について

※この記事はandymori大好き人間による100%のダイマ記事です。

はじめに、andymoriは、2009年のメジャーデビューから2014年に解散するまでの5年という短い期間に、全5枚のライブDVDを出しています。

まず前提としてですが、andymoriというバンドは活動期間の中でも一年違うだけでかなり雰囲気が変わっているバンドです。簡潔にまとめるとこんな感じ。


2009年~2010年 1st LIVE DVD ”ぼくたちアンディモリ”
アルバム:『andymori』『ファンファーレと熱狂』
ドラムス後藤大樹が脱退する前の、シニカルで破滅的、焦燥感を強く感じられる時期。
    ↓
2011年 2nd LIVE DVD ”秋の楽園ツアー”
アルバム:『革命』
メンバー変更や心境の変化を経て光を志向し始め、儚さと明るさが同居する時期。
    ↓
2012年 3rd LIVE DVD ”FUN!FUN!FUN!”
アルバム:『光』
音楽と向き合う中で希望や明るさを切望し、ひたすらに純粋な表現や愛を求めた時期。
    ↓
2013年~2014年 4th LIVE DVD "ひこうき雲と夏の音"
アルバム:『宇宙の果てはこの目の前に』
新旧織り交ぜの集大成的なアルバムが作られ、バンドが終わりへと向かっていく時期。
    ↓
2014年10月15日 LAST LIVE DVD ”ラストライブ日本武道館”
不安定だった小山田壮平が脱法ハーブ騒動や飛び降り騒動を乗り越え、ひとつの到達点としてandymoriの活動に終止符を打った時期。


全5枚のライブDVD、アルバムが、大体こんな感じでそれぞれの時期を切り取っていると考えてもらえれば大丈夫です。

その中で、今回取り上げたいのは①の時期にあたる、1st LIVE DVD「ぼくたちアンディモリ~日比谷野外大音楽堂 ライブ & ドキュメンタリー~」です。


言うなれば、前期andymoriの終着点であり最高到達点。

前ドラム・後藤大樹が脱退を発表した、2010年9月25日、日比谷野外音楽堂で行われたワンマンライブの様子をノーカットで収めたものです。5つのライブDVDの中で唯一、後藤大樹が演奏するandymoriの姿を観ることができます。

このライブDVDの何が凄いか、といえば、「最強のandymoriが観れる」ということです。

勿論、他のDVDにもそれぞれの良さがあります。しかし全てのDVDを購入して観た感想として、少なくとも自分にとっての最強のandymoriが観れるのはこの一枚でした。

とりあえず、自分が他人にandymoriをオススメする時によく見てもらう映像を貼っておきます。これが「ぼくたちアンディモリ」に収録されている2010年日比谷野音のライブの一部始終です。

激しさや熱、焦燥感や疾走感。andymoriの魅力としてよく語られる要素を200%発揮した、圧巻のライブテイクが最強の布陣で揃っています。

というのも、このライブ、全34曲を演奏していますが、1stと2ndアルバムの曲をすべて網羅しています。

それだけではありません。

・後に3rdアルバムに収録される三つの楽曲を、後藤大樹の演奏と異なったアレンジで収録
・くるりの「ロックンロール」のカバー
ここでしか聴けない未発表曲「三万日ブルース」「マイアミソング」「アイラビューベイビー」が収録

などなど、とにかく目白押しですべてのチャプターでテンションが上がるような無敵のセトリです。

もしあなたが、後藤大樹がいた頃のandymoriが好きで、まだこのDVDを観ていないというのなら、これ以上の幸運はありません。是非観てください。andymoriの曲をすべて聴いていなくても、なんとなく3rdアルバムくらいまで聴いたことがあれば楽しめます。

出来れば、事前にセトリを確認せずにまっさらな状態で、本当にライブを観に行く気持ちで一度観てほしい。保障します、最強の一時間半です。

全体としてとにかく暗く重く、焦燥感と熱をもって走り抜けるandymoriを観ることができます。叩きつけるように叫び、揺さぶるようにうたう小山田壮平の声とギター。凄まじい迫力の後藤大樹によるドラム。うねるような寛のベース。全部メチャクチャカッコイイです。

疾走感のある演奏に挟まる、一転して彼ららしいお茶目さのあるMC。あっという間に過ぎ去っていく時間。あっけらかんと脱退を告げる後藤大樹と、狼狽に静寂を掻き切るように響く「マイアミソング」の鋭いギター。全曲で語れるくらい、最高のモーメントが盛りだくさんです。

正直言って、このライブテイクを知っているかどうかで色んな曲の評価が変わります。少なくとも、自分はアルバムに収録されている十数曲のイメージが大きく変わり、大好きになりました。

今でこそほぼすべての曲が大好きな自分ですが、最初は「1stアルバム好きだけどちょっと影が薄い曲も割とあるなぁ」とか、「ファンファーレと熱狂、こぞって名盤って言われてるけど、正直そこまでピンと来ないなぁ」くらいに考えていた人間です。

この「僕がハクビシンだったら」や「ビューティフルセレブリティー」、「Weapons of mass destruction」を聴くためだけにこのライブDVDを買う価値が、確かにあります........本当に全曲で語れてしまうので割愛しますが、この体験を是非味わってみて欲しい......…。

そして、初見の人がなにより気になるところなのは、未発表曲の三つではないでしょうか。

全部名曲です。いずれもメチャクチャ好きです。

※軽くどんな曲か触れるので、見たくない人は読み飛ばしてください。



三万日ブルース
三万日、それは凡そ人の一生に相当する時間。一方、産み落とされて三十時間で消える命に、何を思うでしょうか。翻弄されながら生きる命の儚さを、素朴な情景の中から巧みに描き出した名曲です。

マイアミソング
andymoriの前身バンド「bgms for departure」時代の曲。”マイアミ”と”鎌倉”というふたつの場所を独特の情景描写で歌い上げる、陽気でノリがよくもどこか懐かしく寂しい雰囲気を纏った名曲です。

アイラビューベイビー
曲名や歌詞に反してじっとりと暗い曲調が印象的で、かなり鬱っぽい曲です。どこか不穏で、重い空気を纏いながらも途方もない美しさを湛えた力強い曲です。



とにかく伝えたいのが、andymoriというバンドを音源だけでなく、こういった形でも観てみませんか、ということです。自分は、歌声も演奏も何もかも、全然印象が変わりました。

わざわざ4000円出してDVDを買わずとも、公式Youtubeのショート動画で上がっているこの時期のライブ映像を見るだけでもとっても素晴らしいので是非...…。


さて、ここからはライブDVDの内容から離れ、もう少し踏み込んだ余談的な話になります。

今回、記事のタイトルに「奇跡」とやや大げさな表現を使いましたが、曲を聴き、インタビューを追い、andymoriというバンドの実態を追えば追うほど...…この時期のandymoriというバンドは奇跡だったんだ、という実感が強まっていくんですよね。

andymoriを語る上でやはり欠かせないのが、ドラムス後藤大樹の存在です。

彼は元々別のバンドに所属していて、小山田壮平からのラブコールにも応じる気はなかったと言います。ある夜、酔っぱらった佐藤哲郎さん(写真家でandymoriと仲が良かった)に呼び出され、「明日はバイトがあるから」と帰ろうとしたところを、そのバイト代のかわりに一万円札掴まされて勢いのまま結成したというのが、andymoriの結成秘話だそうです。(インタビューで本人たちが証言)

さらに、andymori前期の「FOLLOW ME」や「ベンガルトラとウィスキー」などの作曲には、後藤大樹が深く関わっていたという話もあります。こちらの真偽は定かではありませんが。

後藤大樹、意外と知られていない事実ですが、andymori脱退後にティエラトムレイというバンドをやっていました。それも、ドラムではなくギターボーカルで。

あの激しいドラムプレイからは想像できない繊細で綺麗な歌声とメロディセンス。小山田壮平に比肩するほどの、巨大な輝きを感じます。

ティエラトムレイの曲は音源化こそされていませんが、Youtubeにいくつか、出所が本当に不明な映像が転がっているのでよければそちらも調べてみてください。とっても素敵な音楽たちです。

小山田壮平と後藤大樹。一時はその方向性の違いから関係が少し悪化したこともあったようですが、後にALで一緒に音楽をやっていたり、それは致命的なレベルでの決別ではなかったものと思われます。

なんなら、ティエラトムレイで後藤大樹が使っているCasinoは、小山田壮平が2008年頃に使っていたサブギターをあげたんじゃないかとすら考えていたり...…。

(ティエラトムレイの「パンクロック」曲中で”免罪符は無いけれどギターを借りてきました”というフレーズがあったり、2012年のラブシャで使っているものとはカラーリングが違うから、譲ったあとにまた手に入れたとするとつじつまが合う)

参照元:https://www.youtube.com/watch?v=2gqbi2rlh5k
参照元:https://andymori.exblog.jp/9073709/

閑話休題。

いくつかのインタビューで本人たちが語っていることですが、小山田壮平はその根底にフォークのエッセンスを持ち、一方の後藤大樹はパンク的な表現にある種のこだわりを持っていたといいます。

後藤大樹脱退前後での音楽性の変化はよく取り沙汰されることですが、後藤大樹が脱退したことでandymoriが変わってしまった、というような見方はすごくナンセンスに感じます。

andymoriの変化、後藤大樹の脱退は、語弊を恐れずに言えばまったく自然なことだったのだと思います。元々、根底の部分で相容れないところがあるふたりだったのかもしれません。インタビュー中に熱が入り、口論のような状態になることもありました。

小山田壮平と後藤大樹というふたつの超新星が、一時的に、たまたま交わって生まれていた刹那的な輝き。どうしようもなく奇跡と呼びたくなってしまうそれを、この「ぼくたちアンディモリ」で垣間見ることができます。

1時間半の奇跡。ロックンロールの魔法。興味が湧いた方は、是非、鑑賞をご検討ください。


以上、andymori大好き人間による100%のダイマ記事でした。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?