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夫(愛)か兄(国)か【日本古代史】私は面白いを優先する

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結城屋
【深堀】垂仁の時代chapter-01「狭穂の謀反」【歴史解説】

 動画の感想? いえ、膨らんだ妄想です。

 サホヒメは垂仁天皇イクメイリビコの最初の妻でした。

 仲のよい夫婦ですが、彼女は兄サホビコとともに天皇を裏切った話が、サホビコの叛乱といわれています。

「夫(せ)と兄(いろせ)とはいづれか愛(は)しき」

 古事記の引用です。兄サホビコがサホヒメにした問いかけですが、動画の鑑賞後から脅しにしか見えなくなりました。

 サホヒメの悲恋に胸が締め付けられます。

 兄はもちろんサホビコであり、夫はサホヒメが婚姻を結んだ相手、垂仁天皇イクメイリビコです。

 動画では、夫と兄とはどちらが愛おしいか? と訳されていました。

 「兄が愛おしい」と答えたことにより、彼女は二股したとか、夫を裏切り兄と浮気したといわれています。

 最初に言い訳しておくと、私は歴史解説や考察ができません。情報収集が苦手なんですよ。

 結城屋さんの動画を見たあと、よく調べたりするんですけど、サホビコの叛乱についても全くわかりませんでした。

 一応、わかったことだけをまとめると以下の内容です。

  • サホヒメは、ヒコイマスノミコとサホノオオクラミヒメの間に生まれた娘

  • サホヒメは第11代垂仁天皇イクメイリビコの最初の妻となった

  • サホヒメは同母の兄サホビコを選び、垂仁天皇イクメイリビコを暗殺しようとした

  • サホヒメはサホビコとともに死んだ

  • サホヒメは、ホムツワケという子どもを産み垂仁天皇イクメイリビコに託す

  • 垂仁天皇イクメイリビコの後妻にはヒバスヒメがなる

  • ホムツワケは天皇にならない

  • ホムツワケは出雲へ行った

 こんなもんです。古事記に書かれていた以上のことは、ほとんどわかりませんでした。

 当然、事実や正誤もわかりません。

 動画のほうが詳しく解説されていますよ。

 なぜ兄サホビコの問いかけが脅しに見えるのかというと、動画で語られるサホヒメの立ち位置からです。

 まず、サホヒメは狭穂の国を治める女系豪族の女王でした。

 当時、垂仁天皇イクメイリビコが頂点に立つ倭王権は、まだ日本全土を支配していたわけではありません。

 サホヒメの父であるヒコイマスノミコは天皇家の出でありながら、倭王権とは違う淡海王になったと結城屋さんでは推測していました。

 狭穂の国は、その一地域だと考えているようです。

 サホヒメは女系豪族の女王でした。

 つまり、父ヒコイマスノミコではなく、母であるサホノオオクラミヒメの跡を継いで、彼女は狭穂の支配者になったはずです。

 動画の内容に沿うなら、狭穂の国は父ヒコイマスノミコの統治範囲ですが、支配権は母サホノオオクラミヒメやサホヒメにありました。

 どういう経緯で垂仁天皇イクメイリビコとサホヒメが婚姻に至ったのかはわかりません。

 池のほとりで一目惚れしたとかなんとか、そんな伝承が残っているらしいです。

 当時、隠されていただろう女性と、どうして池で出会うことができたのか意味がわかりません。

 しかし、狭穂を統治する女王が天皇へ嫁入りしたということは、狭穂の国が倭王権へ屈したように見えます。

 狭穂の一族にとって、それはそれは悔しかったのではないでしょうか。

 古事記にはサホビコの叛乱と記されていますが、実は国同士の戦いだったのでは?

 倭王権が、婚姻によって狭穂を侵略しようとした事件です。

 垂仁天皇イクメイリビコは、妻であるサホヒメをとても大事にしたそうです。彼女は婚姻によって女としての幸せを掴みました。

 しかし、それを狭穂が許すわけもなく、一族を代表して兄サホビコが問いかけるわけです。

 夫の垂仁天皇イクメイリビコ(倭)と兄のサホビコ(狭穂)どちらを選ぶ? と。

 サホヒメは当然、「兄(狭穂)」と答えました。というか、そうとしか答えられないと思うんですよね。

 通説の二股でも浮気でもありません。狭穂の女王が、自国を裏切って他国を選ぶことができるでしょうか。

 狭穂は婚姻で倭に屈しましたが、ずっと逆転のチャンスを伺っていたはずです。それがこの問いかけだったのでしょう。

 兄サホビコは、女王サホヒメの統治を支える立場だったようです。

 たとえば、サホヒメを大統領とするなら、サホビコは副大統領といったところでしょうか。

 古事記では兄サホビコが主犯となっていますが、彼の後ろには母サホノオオクラミヒメがいたのではないかと私は疑っています。

 それはサホヒメが女系豪族の女王だからです。

 関係上、兄サホビコは意見できても、最終的には女王に従うしかありません。

 サホヒメにとって、逆らうことができないのは先の女王であった母親だけです。

 だから、兄サホビコはどちらを選ぶんだと、女王を脅すことができたのです。

 また、ヒコイマスノミコがサホビコの叛乱に何もしなかったのも同様の理由でした。

 支配権がないから、距離を置くことで倭王権へ自分に敵意はないと示したのではないでしょうか。

 後妻に孫娘のヒバスヒメなどを娶らせたのも、天皇家に対するお詫びの気持ちだったのかもしれません。

 さらに悪い見方をするなら、垂仁天皇イクメイリビコとサホヒメの仲の良さだって、彼の懐に入るための罠だった可能性もあります。

 ただ暗殺に失敗したということは、サホヒメは本当に垂仁天皇イクメイリビコを愛していたのかもしれません。

 サホヒメと垂仁天皇イクメイリビコは、相思相愛のカップルだったようなので、ひねくれた解釈ですが。

 反乱の中、産んだ男子のホムツワケを夫に託すのも、私の心はあなたにあると言っているように見えます。

 もしくは、女系豪族の女王として、生まれた子が女ではなかったから、男系の倭王権に渡したとか。

 兄サホビコとともに死んだサホヒメは、最後まで狭穂の女王であることも捨てられなかったわけでした。

 愛と国を天秤にかけられて、国を選んだのがサホヒメです。これは悲恋といわれるわけですよね。

 のちに、兄サホビコは甲斐国造の祖となります。

 それは彼が先頭に立っていただけで、反乱は狭穂の女系豪族が起こしたものだと考えられていたのではないでしょうか。

 反乱後、サホヒメが女子を残さなかったことで狭穂の一族だけが滅びました。

 その後、古事記ではサホヒメとの間にできた男子、ホムツワケの話に移ります。

 ホムツワケは大人になっても言葉を話せませんでした。大物主の祟りです。

 大物主をまつる出雲では、先代の崇神天皇に恭順を求められてから、倭に遠慮して祭祀を控えていました。

 それに怒った大物主が、天皇の子であるホムツワケを祟ったようです。

 でも、天皇に怒っているなら祟られるのは、垂仁天皇イクメイリヒコ、または後継となったヒバスヒメとの子になるはずです。

 サホヒメの子、ホムツワケは天皇になりません。母が倭を裏切って死んだので後ろ盾もありません。

 また当時、祟りというのは何よりも忌避されるものでした。触らぬ神に祟りなしといわんばかりに嫌悪されていたはずです。

 ホムツワケは垂仁天皇イクメイリビコから寵愛されていましたが、本当なら祟りにより寵が消えるどころか、殺されても仕方ありません。

 お伴をつけているとはいえ、旅だって危険な行為のひとつでした。古事記の記述通り、本当に祟りがあったのでしょうか?

 動画でサホビコの叛乱は、出雲復興をするホムツワケのための物語だったのではないかと推測していました。

 私は逆だと考えています。サホビコの叛乱があったからホムツワケは祟られました。

 先代の天皇によって神を奪われ、力づくで恭順を求められた出雲。

 このホムツワケの祟りによって、倭と出雲の融和が描かれました。

 一方で、ホムツワケは祟り以外にも、泣いてばかりだったり、蛇と婚姻して逃げたり、事あるごとに貶められています。

 古事記に登場する男性の多くは、ときに勇猛に、ときに乱暴に描かれていました。

 歴史書とはいえ、軍記物の側面があるからか、全体を通して権力や武力など力に対するこだわりが見えます。

 ホムツワケは、その対極にいると思いませんか?

 ここにサホビコの叛乱を起こした狭穂の国へ、倭王権の意図が見える気がするんですよね。

 母サホヒメと一族が犯した罪の尻拭いを、その子ホムツワケがさせられるわけです。それが出雲の祟り落としではないでしょうか。

 古事記には、ホムツワケが出雲から帰還した後の記述はありません。尻拭いが終わったので退場です。

 しかしながらスサノオになぞらえたような内容は、ホムツワケの立場とその後についても示唆しているように見えます。

 動画の内容によると、彼の祖父ヒコイマスノミコは海の神をまつる淡海王でした。側近も、淡海側の縁者が中心でした。

 おそらく彼は生涯、倭ではなくそちらに尽くしたのではないかと考えています。

 あるいは。

 もしホムツワケを主役とするなら、彼のために多くの氏族が作られていることから、本当は次の天皇にと望まれていたのかもしれません。

 出雲復興という功績を残すはずが道半ばで隠されてしまい、次の景行天皇のために祟り落としの話に変えられてしまったとか。

 母親によって継承権や天皇が変わるのなら、サホヒメも一緒に貶めて完成です。

 以上、ここまで全てが動画を見た私の想像でした。

 動画ではサホビコの叛乱は謀反ではなく、サホヒメとヒバスヒメの権力闘争だったのでは、などと推測していたりします。

 ホムツワケの出雲との繋がりとか、実は動画の内容と全然違うという。

 正直、サホビコの叛乱後、狭穂の国を得た父ヒコイマスノミコには、漁夫の利を掴んだ感じがしなくもありません。

 沈黙を守ったのは、このためなんじゃないの? なんて疑いたくなっちゃいます。

 でも、狭穂の一族は消えたのにサホノオオクラミトメが、息子の治める若狭で晩年を過ごしたのなら、夫ヒコイマスノミコが庇ったのかもしれません。

 何もしなかった、のではなく妻や他の子どもたちを守るために表立って動けなかったのでは?

 サホヒメと同母である、オザホノミコとムロビコは罪には問われていないようです。

 一方で、愛か国かと迫られるなんて、こんな感じの物語とかも面白そうじゃないですか。

 そう思ったら、いろいろな妄想が広がっていました。

 情報収集が苦手で、何も知らないからこそ空想がはかどるんですよね。

 サホビコの問いかけが、もう脅しにしか見えなくなって、我ながら安易だなと感じています。

 だから、男女のもつれは釈然としないなんてツッコまれるわけですよ。

 また、愛繋がりで考えると、垂仁天皇イクメイリビコのサホヒメに対する愛は、ヤンデレのような気もします。

 彼が妻を溺愛していたから、古事記では仲睦まじいと記していただけかもしれません。

 しかし、実は垂仁天皇イクメイリビコの一方通行で、サホヒメは嫌がっていたら?

 権力で女系豪族の女王を嫁にして子どもを作り、脱走して籠城する妻を力づくで取り戻そうとし、できなければ殺してしまう。

 愛というより執着っぽく見えません?

 ちょこちょこ調べてはいるんですが難しいです。動画や調べた内容すら理解していない、なんてこともあります。

 この記事の中にも間違いがあるでしょう。

 動画の考察を否定した部分もありますが、これだって理解していないから、そんなことしちゃうわけですよ。

 動画内には論拠がいくつも示されていますが、古事記の記述ですら、私は誰かの現代語訳で見ています。

 実は原本と違うことが書かれていたってわかりません。

 調べてもわからないことが多いため、わかった部分だけ無理矢理つなげて妄想に走ってしまうという…… 。

 いかに私が情報収集を苦手としているか痛感します。

 でも楽しい。すごく楽しい。古代史が好きです。

 情報が少ないからこそ、想像の余地があって、いろんな人の推測が見られます。気分は面白いを優先する野次馬です。

 真実を軽んじるわけではありませんが、そこに至る紆余曲折の過程を見るのも古代史の醍醐味ですよね。

 今回は狭穂の謀反ですが、彦坐王前後編や和邇氏とか、他の動画との繋がりもあわせて見ると、もっと面白いです。

 結城屋さんの動画のいいところは、意見と情報を区別しているところでしょうか。ずっと聞き流しています。説明がうまくて感心しています。

 何度聞いても飽きないってすごいですよね。

 ファンタジーな物語を見ているみたいで面白いです。

 古事記は上の巻だけしかわからない、と思っていました。

 このチャンネルの動画を見るようになってから、中の巻も下の巻も読めるようになった私自身に驚いています。

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