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「いつか」の話 1

学生の頃、とてもとても好きな人がいた。
彼と結婚するものだと思っていた。
数年つきあって、自然に「いつか」の話を二人でした。

だけど、壊れた。

彼には知らない一面があって。
器用に他の女性ともつきあっていた。
私に会わない日は彼女の家に通っていた。

びっくりした。
ただただびっくりした。
私の、大好きで大好きで、「いつか」が当たり前の彼は、
そんなことができる人じゃなかったから。


だから。
もう、この人は私の好きな「彼」ではないから。
さっぱり忘れられる。悲しくもない。
そう思った。

その一面を知るまでには、別れてから時間が経っていて。
あの時は、そういうことだったんだ、と後から知った。
喧嘩をしただけで別れてしまったと思っていた日から、
その事実を知るまでは、毎日がつらくてつらくて、何を見ても彼を思い出してしまって…
私の世界からは色が消えてしまっていた。

でも、その一面を知った時に、
憑き物が落ちるとはまさにこういうことかと思うくらいに、
すっきりした。

その後も、何度も何度も恋をした日を思い出したけれど、
それは、その日々が恋しいだけであり、その相手は彼ではなかった。

彼と結婚していたら・・・そんなことを想像することもあったけれど、
それは、「彼」であって、本当の彼ではない。
本当の彼とそんな風に結ばれていたら、きっと私は寂しかった。
ずっとずっと寂しい気持ちを抱えたまま、
ただ好きという気持ちにしがみついて、
暗い感情に振り回されながら歳を取っていただろうと思う。