見出し画像

ハイドクナイフ~あとがき

画像1

「ハイドクナイフ」ご観劇ありがとうございます。

今回は覚悟と努力、そして運がなくては、
乗り越えられない公演でした。

上演のハードルを上げている原因は、もちろん例の感染症です。

一日の間に、何人の人と接しますか?
家族や仕事先、移動中で出会う人など、
接すること無しでは生活が成り立たない相手がいると思います。
そして、その相手にも同じように、毎日必ず接する人がいて…

演劇公演を一つやり終えるまでに、沢山の人間が現場に関わります。
関係者の人間全てと、その人達が接する人達も含めて、
誰か一人でも陽性の人が出てしまえば、
安全のため、他の関係者にも検査する必要が出てくる。

その間は稽古をストップさせなくてはならない。
そのストップ期間の長引き方によっては、公演の中止を考えねばならない。
(実際にそういったことが起きた団体も見てきました。)

そして、もし本番中に起きてしまえば、そこで公演終了もあり得る。

プロデューサーが上演決定を決めた後も、
この理不尽な状況で上演するなんて、無理過ぎる…というのが、
正直な感想でした。

開き直るしか無かった。
上演が決定されたなら、初日に向けて準備を進めるだけ。
途中で終わったとしても、仕方ない。
今はまだそういう状況なのだ……

いつ終わっても悔いが無いよう、
毎日、しかと作り込んで行こう。
もし途中で中止になって、後悔を味わう事になるなら、
最悪の後悔を味わってやろう…

後ろ向きだけど、前向きな覚悟を決めた記憶があります。

無事に千秋楽を終えましたが、
公演終了から約2週間は、
まだ油断してはいけない期間である事は変わりません。

そして演劇に限ったことではありませんが、
リスクに抗わねばならない現状は、何も変わっていません。

ですが、何はともあれ、
半分のキャパながらも全席満員で、千秋楽までやり通せた奇跡に、
安堵し、感謝しております。

さて、感染症の話題はこれ位にして、
ここからは今作のあとがきとして、
「ハイドクナイフ」を作るにあたった
経緯など書いていきます。

今作を作るに際して、ひとつの衝動がありました。
それは
「女性が作品の中心になるもの」を作りたい!
という思いでした。

そういった作品は、すでに世に沢山あります。
女性キャストだけで構成される「ガールズ演劇」のジャンルが、
まさしくそれですね。

ただ自分は女性だけ(もしくは男性だけ)で、
構成される物語を作るのはあまり好みでなく、
老若男女・妖怪・亜人・モンスター・AI・ロボット・宇宙人、等々…
様々なキャラクターが入り乱れた物語だけを
書いていきたい信条です。

女性キャストが中心となる舞台を作る場合に、
ネックになるなぁと思ったのは、演劇に置ける客層です。
演劇に置ける客層とは言いましたが、
“ENG”における客層という言い方のほうが正しいかもしれません。

これまでの上演を客席後方で観てきましたが、
男性客よりも女性客の割合が多いように思えます。

また多くの女性客の方は「推しの男性キャスト」のために、
足繁く劇場に通ってくださっている所もあると思います。

もう10数年くらい前になりますが、
とあるオリジナルアニメの脚本会議に参加していた頃、
シリーズ構成の作家さんが、作品の方向性を決めるために、
「頂点読者」という話をしてくださいました。

その作家さんは、過去に雑誌編集に携わっていたので、
その時に得られた知識という事から、
(アニメの会議ですが)「読者」という言葉を敢えて使って、
紹介してくれました。

演劇に言い換えるならば「頂点観客」になりますね。

その作品を一番観て貰いたいターゲットを“頂点観客”として、
具体的に想像することで、
作品の方向性を定めて行く方法論です。

しっかりとデータを取った訳ではないので、
自分が観客席から見た主観に過ぎないのですが…

“ENG”の観客で一番多いのは、“F2層”、
次が“F1”、三番目が“M2”だと感じています。
(のぶPに聞いたら、正しいデータがわかるのかなぁ…)

そこで今作の「頂点観客」を
F2層(35~49歳の女性)で、
観劇も好きだが、漫画やアニメ・乙女ゲームや特撮も好きな、
会社務めのA子さんに、決めてみました。

そこからは、A子さんが好きになってくれそうな物語やキャラクター、
(今回はラブストーリーなので)A子さんが好む恋愛物語を想像して
大まかな方向性と狙い所を、定めました。

ちなみに「クレプトキング」や「ラストスマイル」を作ってる時は、
頂点観客の事は考えて無かったですね。
「こういうの面白くない?」の感覚オンリーです。


自分は去年くらいまで、乙女ゲームである「イケメン戦国」の
舞台版に関わっていたのですが、
脚本・演出だったので、ゲームの原作ストーリーはもちろん隅々まで、
何度も読み返していました。

乙女ゲームのストーリーはまさに、
女性に楽しんでもらう事に特化した物です。

ここまで女性を満足させられる恋愛ストーリーや描写は、
自分の感覚や物書き力だと到底追いつかない…
もしこれをゼロから書けと言われたら、
ものすごく苦戦するか、ギブアップだろうな…

やはり乙女ゲームは「女性による女性のための物である!」
と、痛感しました。

ちょっと話がそれますが、
自分が「イケメン戦国」の舞台から離れたのは、
上記のような理由があります。
“謙信編”まで関わってみて、
この仕事には自分よりもっと相応しい人がいるはずだ、
と思ったからです。

話を戻します。
「頂点観客」のA子さんは、乙女ゲーム系のお話が好きそうですが、
そのフィールドで戦うことは、自分に向いていない、と判断しました。

そこで次は、
女性の登場人物が中心で、
女性にも(そして男性にも)人気がある作品を、
思い浮かべることにしました。

やはりトップに思いつくのは「セーラームーン」。
更に「魔法少女まどかマギカ」。
ハリウッドならば、「チャーリーズ・エンジェル」。
等々…

また恋愛物語についても、乙女ゲームばりの濃厚さはムリでも、
ラブコメならば、自分の筆力でも行けるなぁ…と
(ラブコメは大好物です。)
また自分、「セックス・アンド・ザシティ」好きなんで、
その要素も盛り込みたいなぁと…
そうして作品の目指す所が、朧気ながらも姿を現してきました。

ここまで書いてみて、
男性客への意識がゼロのようにも思えますが、
ここに関しては、変な自信がありました。

自分が男性であり、
中学二年生な男の子向けの物が、大好きである以上、
どんなにA子さん向けの作品を作ろうが、
自分の地の部分が意識せずとも現れて、
その部分は必ず男性の観客に届き、楽しませてくれる。
そんな確信めいた自信です。

だからこそ今作を創る時は、
A子さんへの意識を忘れないようにしなくてはいけないのですね。


また自分が舞台作品を書く時、
キャストに向けて、大事にしている事があります。
それは

「キャストが登場人物を演じる事に、
何よりも、やり甲斐と楽しさを感じて欲しい。」

という事です。

「演劇に置ける会話は、
台詞や身体をもって相手の領域に侵食し、
次々と相互の間で感情の化学反応を起こす事が一番だ。」
と思っています。

ジャンル的な制限などで、その部分を潰してしまいたくない。

もし、あなたの目に映ったハイクナのキャラクター達が
自由に…! 開放的に…! 生きているように見えていたのなら、
その試みは、成功したのでしょう。

取り留めもなく長くなりましたが、
企画段階で、自分の頭の中で起きていた試行錯誤をまとめました。

今作が目指した物は、

女性が好きになって、憧れられる――女性キャラクターが真ん中にいる
女性向けの成長ラブ(コメ)ストーリー!

だったワケですが、しっかり狙えていたでしょうか…


さて、長くなってきましたので、
そろそろ、締めに向かって行こうと思います。

以下は、パンフレットに書いた自分の挨拶文からの引用です…

―――――――――――――――――

マスクの仮面としての役割が、見えなくなった今、
彼女(猫石計)とマスクの関わり方は、
共感され、受け入れられるのだろうか…?

結果として、当初の設定やキャラクターを崩す事はしなかった。

そして、自分が肌で感じた“今”を切り取り、
“コロナ前”の物語に、
“コロナ後”を体験したからこそ伝わる表現を、隠す事にした。

それは透明になっているが、
同じ“今”を、体験したあなたにならば、
きっと透けて見えてくるだろう……

――ハイクナ・パンフレットより引用——

人はどんな理不尽な事が起きても、
答えを探し求めてしまう生き物だと思います。
今に安心するために…

ただ、今年起きていることは、人の認識能力を超えているので、
考えれば考えるほど、疲労と不安が溜まっていくだけ…

不安にかられた人々は、生き残るために様々な行動を起こします。

自分の命を守るための行動は正しいはずなのに、
世の中は、なんだか殺伐としたものに……

幸い自分には、ハイクナを作るという仕事があったため、
家からほとんど出られずとも
(むしろ作家として缶詰になれるのは好都合)、
仕事に打ち込む事で、精神的に健康でいられましたが、
そんな中でも、”生き辛さ”は常に感じていました。

ハイクナの企画は、
コロナ前に始まりましたが、
コロナ後に書かれた作品です。

なので、気付けば作中のあちらこちらに、
ご時世に負けずに、前向きになれような言葉を
散りばめていました。

観客を元気にしたいという動機よりも、
自分が元気になるために、それらの言葉が必要だったから
書いたのだと思います。

ハイクナを観てくれた皆さんが、
少しでも、三日間くらいでも、元気で楽しくなれたら幸いです。
こんなご時世、エンタメにできることなんて、
それ位だと思いますので……


そしてもし、今作を気に入ってくださったなら、
あなたの好きな人に勧めてやってはいただけませんか…

今回は上演が終わった後も、
配信でしばらく視聴できるという
自分の演劇人生で初めての事が行われています。

口コミの力は強いと思いますので、
どうかハイクナの未来(続編)のためにも、
よろしくお願いします。
(ちなみに、次の話は、〇と〇〇の〇〇が〇〇〇〇〇〇〇〇〇…)


4カメは初日だけで、他は1カメでの定点撮影です。
「実はこの回が面白いの!」と、
お気に入りの回を教えてあげるのもいいですね。

自分は“日昼”がお気に入りです。
作品としての出来がすごくいい回だったのですよね。

情報・宣伝のリンクを最後に貼らせていただきます。
長文、ここまで読んでいただき、まことにありがとうございます。

いつかまた、
猫石計と仲間たちの物語を書ける日が来ると願って…
信じて…確信して…

―――――――――――――――――――

配信チケット
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2064553
※配信の購入は10月21日まで。
ご購入後の閲覧は10月25日までとなります。

ハイクナ情報まとめ
https://note.com/yagimiya/n/n52d25da0ca97
各キャラのキービジュアルのまとめや、
家紋や衣装の製作過程であったり
取材など、さまざまな情報のリンク先がございます。

また自分の同人サークルで、
ハイドクナイフ・オリジナルグッズを販売しています。

https://dmfactory.thebase.in/

観劇の思い出に、お手元に置いていただけたら幸いです。

▼クリアファイル

ハイクナファイル(オモテ)

ハイクナファイル(ウラ)

グッズ宣伝_マスク

グッズ宣伝_Tシャツ


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?