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目次とあらすじ ユナヘルは石に閉ざされた夜道を走っていた。 胸が苦しくて、頭はくらくらしている。 喉の奥からせりあがってくる悲鳴を飲み下すのに必死だ。 大通りを避け、果物屋の角を曲がり、入り組んだ裏路地に逃げ込む。 夜道を歩く物乞いが、何事かとこちらを見た。 街灯から遠ざかり、より深い暗闇の中へ身を投じていく。 脚を止めることは出来ない。 追っ手の気配はすぐ背後まで迫っている。 ユナヘルの顔は、汗と涙と鼻水でぐしゃぐしゃになっていた。