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腎機能が低い人が、夕食に食べていいお肉の目安量は…?


在宅療養している腎臓患者とその家庭では、「食事制限」「食事の楽しみをどう作るか?」に悩みを持っている人が多いのではないかと思います。

我が家は、父の腎機能の低下が顕著となり、母は食事の栄養管理を一生懸命おこないました。
腎臓病の食事制限の本を読んだり、専門病院のセミナーに通い、自分なりに父の体質を考えた食材の選定、調理と、料理の工夫の始まりです。

このnoteでは、そのあたりの考え方、工夫、体験をまとめたいと思います。
少し医学的、栄養学的なことにも触れます。私自身は医師との会話、書籍やインターネットをもとにした知識なので、科学的根拠や個人の症状については必ず医療機関の判断を仰ぐようお願いします。


腎機能の低下は、要は尿毒症の進行を誘発します。
腎臓糸球体のろ過能力が低下(=目詰まり)してくると、様々な血液成分がろ過・排出されず、腎臓からら体内に再循環し始めます。
外見から見えるのは水分(尿)の排出低下、水分の再循環によるむくみ、進行が末期に至ると水分の滞留による体重増加、最終的には心臓への負荷で血圧上昇が起こります。血液中の老廃物がろ過されないことで、様々な障害が出てきます

一方、体内ではカリウムの排出低下により高カリウム症が起こります
これを放置すると心不全の要因となるとも言われています。
それ以外にも、カルシウム、マグネシウム、クロール(塩素)の排出低下、血液中の濃度増加が顕著となり、様々な内蔵機能低下の遠因となります。
とくに、アンモニア、尿素窒素(BUN)の体外への排出低下は、老廃物、腐敗物であるアンモニアの体内再循環となり、尿毒症が顕著となります。

体内を再循環するアンモニア、尿素窒素の増加を抑えるためには、腎臓移植による解決か、人工透析による人為的排出しかありません。でも、これは、ある程度、進行した段階の治療であり、軽中症段階や延命処置をしない患者には選択肢となりません。では、在宅で尿素窒素対策はないのか・・・・・

進行の初期段階では、食事(入口)でたんぱく質の摂取を抑制(=タンパク質の含有量の多い食品の摂取を抑制)することが効果的です。
一方、タンパク質の摂取を抑制しすぎると、人間の体は、本来の代謝に必要なタンパク質を摂取しようと、体内に蓄積されている既存のタンパク質(=内蔵、筋肉)を分解し始めます。つまり、過度のタンパク質制限は、体力低下、体重減少を誘発します。

そのため、食事制限は、心不全や高血圧症を抑制すべく、カルシウム、カリウム、マグネシウムや塩分などを制限。一方で体力に見合うよう、タンパク質を適正量、摂取し、同時に過度な抑制をしないことがポイント。

また体力を確保するため、エネルギーの摂取(=油脂)も欠かせません。エネルギー(kcal)の摂取は、タンパク質の摂取と連動するので、エネルギー効果の高い、油脂を調理に使うタンパク質含有食材を選択することが大事。


……前置きが長くなりました。

栄養管理においては、体重、体力、腎機能のレベルに応じた、バランスよい栄養摂取がポイントです。
危険成分を何でもかんでも抑制すればいいというものではないのです。
人間の体は広範な栄養素を必要とします。塩分カット、カリウムカット、タンパク質カットは、病気には効いても、人間そのもの、とくに生きる楽しみとしての食事の楽しみや意欲を殺してしまうことになります。

プロの栄養士のつくる病院給食と、素人が作る食事制限の違い、素人の限界は、ここにあります。在宅で栄養制限食をつくる場合は、必ず栄養士の指導を受けた、病状に応じたレシピを用いるように、と言われるのはこのような背景があるからです。


で、タイトルにある「夕食で食べてもいいお肉の量は?」の答えは……

<回答>
豚肉(肩ロース)100g
 ※脂身付き・焼きの場合(日本食品標準成分)
エネルギー328kcal/タンパク質26.7g/脂質22.7g/カリウム400mg/カルシウム6mg/マグネシウム27g/食塩0.1g/重量変化率72% 

老人なので1回に調理前の風袋で50gを料理とすると……
50gの生肉は、目安の100gの半分なので、焼くと36g、エネルギー164kcal、タンパク質13.3gになります。
目安の1/3、35gだと、焼くと25g、エネルギー115kcal、タンパク質9gです。

実際の許容量として父の1日摂取タンパク量は30gを目安としていました。
夕食1回でタンパク質は1/3強の12gが目安。肉で言うと夕食に(調理前)風袋45gの豚肉のソテーを食べていい、という換算です。
90歳の高齢者が、毎夕食に45gの豚肉はちょっと多めかな、負担かなという量です(実際には、1日換算で110gの焼き肉に相当)。

父の血液数値が悪化して、家庭でできることは本格的に食事制限を展開することだけ、ということになり、私が夕食の栄養管理を行うことにしました。

<夕食の栄養管理>
手順1
 1週間の母の作る3食の献立、食材、調理方法を記録
手順2 食品栄養成分で1日の摂取許容な食品成分量を推計
手順3 望ましいメニュー、食材、調理方法をモデル化(パターン化)
手順4 エネルギー、タンパク質など不足分の増強、過多分の削減
手順5 握り鮨、てんぷらなど、お楽しみご飯の栄養を算定、献立に反映

こんな風に1日の食事量を設定し、腎機能状態に応じた適正基準値を設置。(油脂、エネルギー量のアップ、カリウム、塩分は抑制、タンパク質は適量設定)これを、栄養成分ベースではなく、調理前の食材の風袋に換算しなおし、数値化して表示、確認します。

この結果、父の好みや高齢の母でも調理可能な、食べていい料理、望ましい調理方法、食卓での味付けや、毎週の夕食の献立がはっきりしてきました。
握り鮨が週1回、てんぷらが週1回、海老天うどん(昼食)が週1回など、食事のラインナップが立ってきました。

<実際の食事>

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【お肉】野菜と合わせて、味付けはポン酢でサッパリ食べやすく
【野菜】カリウム制限のため、水にさらす、たっぷりの湯で煮る、煮こぼし、煮汁を捨てる、味付けしなおすなど工夫します
【てんぷら】海老天、あなご、かき揚げ
【握り鮨】
ちょっと高級な刺身の盛り合わせ(ホンマグロ、ブリ、シマアジ、エビ)を購入し、たんぱく調整米の酢飯で素人板さん(私)が握りました。1貫でお米12g、8貫で96g(タンパク調整米なのでタンパク質1g以下)、ネタは1貫の風袋5gで、タンパク質1.3g、8貫で10g、タンパク質合計10g/8貫・一食 酢飯とワサビ、ちょこっと醤油。
これを塗りの重箱に盛って完成。味も合格点です。

※写真はありませんが、フライ系なら牡蛎、白身魚、鳥、トンカツも一口ならOK、タンパク質と油(エネルギー)合格!


タンパク質が意外と多い(腎臓食の陰の曲者)のはお米とパンです。お米やパンのタンパク質を抑制するため、たんぱく調整米、たんぱく調整パンを購入し、3食置き換えることにしました。

そうすると、ごはんやパンからのタンパク質摂取(普通のお米やパンだと、1食で6~19gのタンパク質含有=これが、お米が完全食品と呼ばれるゆえんだけど、腎臓患者には天敵)が実質ゼロ。
タンパク質は、おかずで全量摂取可となり、食卓、味付けが豪華になりました。要は、たんぱく調整米のご飯、おかず(お肉、魚、豆類など)は2倍食べても、食事全体としてはタンパク質摂取が規定値以内となりました。
工夫するといろいろできるものです。

実際に購入している商品はこちらです。(画像に楽天のリンクが貼っておきます)

<たんぱく調整米>

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<たんぱく調整パン>

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在宅療養している腎臓患者の悩みの一つである食事制限、食事の楽しみがこれで大きく改善されました。


以上、今日のnoteでは、腎機能の弱い人の夕食におけるお肉の量と、我が家でおこっている食事管理方法をまとめてみました。
似たことでお困りの方の参考になると嬉しいです。

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