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老親の"財務三表"を試算して10年。たどり着いたやり方

株式会社の会計で「財務三表」というものがあります。
会社勤めの人、投資をしている人ならなじみがありますね。

この仕組みは、個人の会計(家計簿、資産、資産運用、相続財産の管理)でも参考になります。とくに個人は、むやみに資産を増やすことはできませんし、増やすことはいいことばかりではありません。資産を移動させることで、無理して増やさない工夫にもなります。


自分の価値観、金銭観、年齢、家族構成に応じ、適正な資産を適正な価額で保有し、場合によっては、組み替え、処分していく優先順位を図る、という観点に立つ時、個人会計の財務三表は有効です。
また、相続や資産継承(分割)の視点でも効果的です。
その人の人生観を表現するものとも言えます。

老親は夫婦ともに90歳を超えていますので、明日にでも最期の日が来ます。

人生の最終段階での金銭感覚、お金に対する考えを明らかにしておくことは、その人の生い立ち、生き方、生涯を語るとき、お金をどう使っていたのか、どう残していたのか、という価値観を浮き彫りにしてくれると思います

このnoteでは、私が老親のために85歳以降、この10年間で作成、進化させた財務三表の要点をご紹介します。


個人会計の単位

①損益計算書(PL、単年度収支表≒家計簿)
年金収入、税金、支出(食費)などは世帯単位なので、損益計算書(単年度主旨)の会計単位は世帯で一つ、会計年度は、年金、社会保険が4月-3月なので、期首:4月1日、期末:3月31日
②貸借対照表(B/S、資産・負債台帳)               資産は、必ず個人名義で預託されているので、父、母、個人単位
ちなみに貸借対照表は、亡くなった時の相続財産、相続税の計算をするときの基本となります。年次は、年度末と半期末、四半期末。
③キャッシュフロー(C/F、資産運用収益)
個々の資産が、年間どのくらい損益を生み出したか、運用はうまくいっているかを示すものなので、個別の資産単位、個人単位。          医療・介護費の財源(保険料、自己負担)に充当

この表からわかること、気を付けることは、
10年前は、下記のような疑問があり対策をしました。(=わかったこと)
その後、改善を加え、今の形にたどり着きました。

損益計算書:世帯単位の家計簿

【わかったこと】
➊月次単位の収入(年金、配当)、年金のある月とない月で収入が凸凹  ➋支出の穴埋め(の財源)を確保するため、月ごとに過大な予備費    ➌年間を通じて臨時的出費(支出:冠婚葬祭、家電買い替え、設備の修繕)が想定されていない                         ➍年間通して収支(とその動向)、年間余剰金(or不足額)の目途がない ➎預金や資産残高を記帳(紙)で管理、定期的に銀行へ通う必要

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【改善したこと】
➊ 銀行、郵便局、証券会社、クレジットはすべてネット登録、自宅PCでリアルタイム管理、入出金、送金(紙の記帳は月1回)          ➋家計は年金支給月ごとの2か月単位でバランスさせる。        ➌年金4か月分(年金回数で2回)のみ、普通預金に残高を確保。    ➍それ以上の余剰金は「運用資金(待機資産)」として、貸借対照表の流動資産(運用資産-待機資産)に定期的に繰入(仮に不足の場合は運用資産を解約し、普通預金に異動)。                     ➎銀行・郵便局の普通預金⇄証券会社ATM(PCにょる無料入出金)    ➏年間収入、月次収支で、収支が見えるよう、経常費(経常収入・経常支出)、臨時費(臨時収入・臨時支出)を費目設定し、年間の予定額も設定。➐さらに、配当収入、普通預金の解約、余剰金など、貸借対照表との関係が見えるよう家計簿の費目を整理


貸借対照表:個人単位の資産・負債台帳

【わかったこと
➊普通預金、定期預金が多く、金利が付かない資産が多い。       ➋医療費など、増大する医療費保険料、自己負担料(夫婦で月8万円、年間100万円)の支出(≒資産減=解約)が確実。              ➌相続財産における生命保険控除の特例枠が活用されておらず、相続財産が過大に計上されている。

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改善したこと】
家計簿の支出見通し、年金収入以外の普通預金取り崩し額を明確化   普通預金を、                           現金・普通預金(非運用)⇄待機資金(短期運用)⇄運用資金(長期運用)に3区分、別々の口座で管理。                    ➌生命保険(死亡保険)に加入し、長期運用(元本保証)と相続税節税(妻+子の3人で1,500円資産圧縮)。                   ➍月々の銀行引き落としの経常費(固定的支出:税金、公租公課、光熱費、宅配、新聞、テレビ、パソコン等)はクレジット会社に一元化、決済時期の先送りと、ポイントget。                      ➎すべての金融機関、クレジット会社、銀行紐づけの支払先の台帳作成。 ➏相続時の相続財産を月次年次で把握、相続税をリアルタイムで監視。

C/F:資産運用と損益管理

【わかったこと】                          ➊資産名目額が横ばいか、低下、年金不足分は貯金取り崩し状態。    ➋増えないけど減らない(減らさない)資産運用が必要。

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【改善したこと

➊待機資金(短期運用)は証券会社のATM(MRF)で管理。     ➋為替を見ながら米国公社債投信(MMF)に投資、円安に振れたら円転し利ザヤ稼ぎ                             ➌証券会社のネットバンクで短期定期預金で、わずかながら金利を確保。 ➍運用資金(長期運用)は、米国債、ドル建て社債を償還時期を分散し購入。➎円高の時は放置し、円安の時だけ円転で、為替差損を回避。

こんな感じです、資産運用を、ジャンボ飛行機でアクロバット飛行をしている感じです。ただ、方針が固まれば、為替を月1回程度見ておけばいいのでそんな負担はありません。


<まとめ>個人家計の財務三表のポイント

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①家計簿の費目に経常費、臨時費、資産繰入
収入
-経常収入/臨時収入/基金取り崩し、支出-経常支出/臨時支出/基金繰入、で構成し、母が記録している家計簿の要点のみ管理

②資産はバランスシートで管理
資産の部:金融資産
-現金預預金/待機資金(証券会社ATM)/運用資金(公社債の運用)、固定資産:土地/建物/自動車など維持費の発生するもの、負債の部:借入金、クレジット未納金/未納税、の構成で管理

③資産運用は債券投資で
医療費(健康保険、介護保険の保険料、自己負担額)は債券の利金で元本保証しつつ確保

④家族がファンドマネージャー
父、母の通帳、資産管理、代理人とし、資産を運用。月次報告書を老親に提出。所得税、住民税の確定申告も代行。

⑤老親のお金に対する考え方(資産運用の方針)
✅月次、年次の収支見通し、資産・負債の全体像が分かると経常的な支出、臨時的な支出は、使っても安心
✅資産が減るのは避けたいが、株などわかりにくいもの、変動が大きいものには、年取ったら行わない。元本が安全なもので運用(=債券)
お金や社会情勢で一喜一憂、振り回されない(テレビや新聞の影響)


ここまで読んでいただいて、いかがでしょうか…?
ちょっとやりすぎじゃないかと、思うかもしれませんね。
あくまで、私と老親の事例です。
家庭によって「相続の話はまだ」「通帳は渡せない」「この年で為替は危険……」などなど事情が違うと思います。一つの例としてお聞きくださいね。最大の効用は、私自身の資産管理でいろいろ気づいたことです。


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