気分を明るくするライト#ボケ学会(2〜3分で読める小説)➕ツッコミ
最近、気分が滅入って何も面白くない。
「笑いの壺」に話しかけても笑いの渦は起こらないし、
時間を戻す「大きな砂時計」は使い道が無く、
あれこれ思案している内に判ったのだが、
砂時計の底に使用期限があり、
[購入後5日以内]とある。
使用期限は、もうとっくに過ぎていた。
そんなこんなで、面白くも何とも無く毎日を過ごしている。
今日も来てしまった、あのユニシロ。
無意識のうちに、何故か来てしまう。
いつもの様に、店長が愛想を振り撒き、
揉み手をしながら僕を迎えてくれた。
「どうしたのですか?お客様様。
元気がない様なご様子ですが」
と、心配そうに笑いながら言う。
…この店でヘンテコな物を買わされたからだ!…
と、声を出して言いたかったが、弱気な僕は、
何も言えずに微笑んでしまう。
「お客様に良い商品がございますよ。
暗い気持ちを明るくさせてくれる、ライトです。
ご覧になりますか?かなり高額のものですが・・」
と、笑いを忘れたかの様に店長は真剣な眼差しを
僕に向けて話し出す。
…騙されていけないぞ!…
と、僕の心は静止をかけるが、
「どんな物ですか?
暗い気持ちを明るくするライトって?」
と、身体は好奇心の塊りとなって
反応してしまう。
「こちらへ・・・」
と、案内されるまま、
僕は店長の後を追う。
「これが世界初の気分を良くするライトです。
このライトを付けると、暗い心が急に明るくなります。」
と、いつもの様に元気ハツラツに店長は言う。
「ライトって言っても普通のスタンドの蛍光灯ですが?」
と、疑いの気持ちを込めて言った。
「確かにその様に見えますが、これが世界初の
気分を良くする
『浮き浮きライト』なのです。
騙されたと思って購入されて見てはいかがでしょうか?
今ならご購入の方にこのCDラジカセと、
このCDをプレゼントします。
いかがでしょうか。
ご注意して欲しいのは、このライトを点灯した時に
このCDも一緒に聴いて欲しいのです。
よろしいですか。一緒に音楽を聴くのですよ。」
と、念を押す様に言われた。
「で、お幾らですか?」
と、またもや僕は購入の意思を示してしまう。
「本来は5万円ですが、今日は特別価格で
3万円でご提供させていただいております。
しかもラジカセ、CDも付いてこの価格です。」
僕は、気の弱い男。
断ることもできずに言われるまま、
購入し家に帰った。
部屋に入って、早速ライトを点灯し、
CDの音楽を鳴らした。
このスタンドライト、小さいのに結構明るい。
聞こえてくる音楽も、心が弾む浮き浮きのリズム。
僕の心は何故か明るく
浮き浮きになっていった。
ユニシロで買った物で、今までに無い、
最高の満足感を得ている僕であった。
ツッコミ
音楽を止めてみて!
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