見出し画像

「殺人ロボット」(続編) その後の大塚愛子3

23

「・・・」
何も言わずに俯く愛子。
…あの人の事を話してもいいのだろうか?
本当の事を言えばあの人は殺人の犯人になってしまう。どうしよう……


「どうしたのですか?愛子さんの知っている人なのですか?」
と、女刑事は苛立ちを見せる。
髭面刑事は、黙って見ている。

暫くして、愛子は涙顔を上げた。

「知らない人です」
小さく弱々しい声であったが決断した声でもあった。

「・・・。本当に知らない人ですか?・・・」

「その人の顔、・・・暗くて見えなかった・・・それに怖くて目を塞いでいたのかも知れません。見たとしてもはっきりとは、覚えていません。」
今までの言い方とは違い冷静に話しをする愛子。

……この人は、嘘をついている。男を知っているはずだ……
瞬間的に、女刑事の勘が働く。

「知らない人が、貴女を抱きしめて、乱暴な事もせずに
優しくキスだけして出て行ったのですか?
可笑しく無いですか?人を殺した犯人が現場を見られている人を
そのままにして置いて、何もせずに出て行った!
そんな事は考えられない」

と、今までの優しい声では無く、興奮し問い詰める。
強い言い方である。

「私はその人の顔をはっきりとは見えなかった。
でも、その人が私を知っていたのかも知れません。」

「そうですか?・・・犯人が貴女を知っていた。
なるほど、そうですね。その可能性もありますね。」

「婚約者の死因は何でしょうか?何故、殺されたのでしょうか?」
と、愛子は昨日から感じていた疑問を初めて言った。

「死因は解剖しないと、まだ解らないのです。殺された理由も解らないのです。ただ『彼を殺した』と、自首して来た男が昨日この警察署に来ました。」

「自首して来た男?・・・。その人、自首して来たのですか?
今はどちらにいらっしゃるのですか?」

……この女、やっぱり嘘をついている。その男を知っているはずだ!
今の言葉で判ったわ。私の目を誤魔化そうと思っても無理よ。……

「その人は死にました。私達の目の前で・・・」

「・・・・・」
言葉も出ない愛子。
……加山さんが死んだ?!・・何故死んだの?……
愛子の表情は悲しみに覆われていた。


その愛子の姿を冷静に見つめる女刑事。

…愛子の沈黙は悲しみの表現か、それとも驚きの為か?もしかすると、愛子さんは死んだ犯人を愛していた?
だから嘘をついた?
だとすると、婚約者を殺したのは計画的な犯行か?二人が共謀して婚約者を殺した。
 考えられる。……

愛子に疑いの目を向ける女刑事。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?