小説パート3(1)



衝動的な怒りで殺人を犯す者では無く、計画的に殺人を実行する者の気持ちとは如何なるものか。
個人的な恨みをもつ者。
社会の不合理に憤りを感じ
革命やクーデターを起こす者
宗教、思想による無差別テロ

如何なる理由であっても、殺人は許されない行為だ、個人的な恨みで人を殺す気持ちなど、分からなかった。今までは。

そんな自分に事件は起きた。それは、法律を使っての合法的な詐欺。
正確に言うと法を使っているのだから、詐欺では無い。

道徳、倫理、人との約束や信頼、そんな事よりも、事実をねじ曲げ、嘘をでっち上げても裁判で勝てば、それで良いのだ。此の国は。
私は道義的に悪い事は何も無いのに、裁判で負けた。
詳細は記さないが、それは、余りにも理不尽な、判決であった。
一つの原因は、こちらの弁護士は人道的には正いが、あまりにも無能。
相手側の弁護士は悪徳でいて、非人道者であった。

私を、騙した女に如何に復讐するか?そればかりを考えて
いると、
頭が混乱して、仕事も生活も出来なくなった。犯罪を起こせば、裁かれる。
こんな時に、必殺仕掛け人は居ないのかと思っている矢先、
一通のダイレクトメールが私の元に届いた。

「バーチャルで叶えます。貴方の希望を、」

というタイトルが私の目に中に飛び込んできた。
一体なんだ?
これは、実現出来ない事をバーチャルで実現させて上げます。
と言う内容であった。



「バーチャルで叶えます。貴方の希望を、」のタイトルの後、書かれていたのを
 要約すると、叶える事の出来ない現実をバーチャルで体験してみませんか
 と言う内容だった。
 確かに、夢はそう簡単に、叶える事はできない。
 でも、夢を夢でに終わらせても、つまらない。
 今の私にとって、憎きあの女を殺す事が最大の夢だが、
 やるからには完全犯罪。
 仮に捕まっても、法律で裁く事の出来ない犯罪。
 この事ばかりを考えていた。しかし、どの様な人間でも生きる権利はある。
 此の、矛盾を如何に解決するか、本当に悩んでいる時に、此の様なタイトル   を見たのだ。
 バーチャルで犯罪を起こしても、罪にはならない。また、女も死んでいない。
 此のタイトル通りなら、気持ちだけでも収まるかも知れない。 
 悩んだ末に、
 私はその書いてある住所に足を運んだ。
そこは、古い4階建てのビルだった。いわゆる雑居ビルで何軒かの会社名が書いてある。その中の一つに「夢工房」とある。そこに私は行った。
4階建てなのに、エレベーターも無い。不運な事に「夢工房」は4階だ。
私は、息を切らしながら、その扉にある、インターホンを押した。
案内され入ると、若いが太った女性が出てきた。
「ご用件は、何でしょうか」とぶっきらぼうに聞いてきた。
此の様なメールを送ってきていながら「要件は何」と聞くかーと思ったが、
ここは、大人の対応だ。
メモに書いて於いた「貴方の希望をバーチャルで叶える事」の紙をデブに渡した。デブ女はその紙を見て、「本気にしたの」と言う表情を浮かべ私を見て笑った。様に私には見えた。「先生を呼んできますので、しばらくお待ち下さい」と言ったが、こんな小さな部屋なら直ぐに分かるでしょう。待つほども無い。と思っていたところに、先生登場。



先生はスタイル抜群の綺麗な女性だった。歳は分からないが、アラ40位か?
もう少し若いかも知れない。私よりも歳は上だろう。ちなみに私は28歳、
独身。彼女無し。
女性は綺麗に着飾る事も出来るし、化粧でごまかせる。
その点男は、いつもすっぴん。化粧してる男は、水商売、芸能人、ぐらいしか思いつかない。私の男友達にはいない。こんな事を考えていた時に、
先生は私に名刺を出してきた。名刺には
夢工房 社長 大島玲子 と有る。後は電話番号と住所が書いてあったが、
仕事の内容は書いて無い。
「ご用件は」と聞かれので、
私は、今まで考えていたことを、正直に話した。
それは、「恨みに思っている人がいるのだが、実際には殺す事は出来ない
バーチャルでもいいから復讐したい」
美人の先生は「このメールを見て信じてくれたのは、貴方だけです。」
そう言って僕の手を握ってくれた。
(嘘臭い)と私は一瞬そう思ったが、女の人に手を握られるのは、久しぶりなので、少しドキドキした。
「どの様にしたらバーチャルで人を殺せるのですか?」と聞いた
先生が言うには「いわゆる、催眠術と同じで人の脳には入り込み、その意識に幻覚を与える」との事であった。
そういえば、以前 誰から聞いたことがある。
お爺さんの記憶を頭の中に転送されて、迷惑した。と言っていた。
悪い冗談だと思っているが。


 








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