10 ものを反射する(テーブルを介す)

 カウンターの機能の一つとして「反射する」ということがあると思っています。
 一対一で、向かい合って話すのはよっぽど仲がよくたって緊張します。たとえば友達とファミレスに行ったとして、お互いの目を見て真っ直ぐ向き合って話すか? というと、みんなけっこうドリンクバーのグラスの氷をストローで突っついたり、髪の毛をいじったり、店内や窓の外を何ともなく眺めたりして話しているんじゃないでしょうか。
 直接、まっすぐ、直線で話すのではなくて、グラスや髪や、景色などを反射して話す。

 内容についても、「あんたってサァ!」とか「オレってさあ!」と、お互いのことを話すことはそう多くはないと思います。(それなりにはあると思います。)
 そうではなく、友達の話とか、学校の話、仕事の話、家族の話など、お互いの間に「話題」があって、それを目の前のテーブルに置くようにして話すことが多いでしょう。

 目の前のテーブルに、「話題」を置いて、それをお互いが見つめながら、それについて話す。


【図5】
 ●→  ←○
  テーブル

【図6】
 ●↘︎   ↙︎○
   話題
  テーブル


 図5は、よほど真面目な話し合いをするときの向き合いかたで、たいていは図6のようにお互いはお互いをではなく、「話題」を見つめているものだと思います。

 テーブルの上の「話題」が緩衝材となって、緊張せずに話せる。僕はこのテーブルを小さな遊び場のように思っています。いっしょに砂でお城を作るみたいなイメージにも近いです。

 原っぱ、空き地、公園、河川敷。そこを自由に駆け回るように、小さなテーブルの上でも、目まぐるしく変わっていく「話題」が、仲良し同士の遊びになります。
 夜学バーは狭いので駆け回ることはできませんが、「話題」で遊ぶことはできます。カウンターの上を駆け回る「話題」。入ってもいいし、見ているだけでもいい。なんなら眠っていたっていいかもしれません。公園もけっこうそうだと思います。だけど誰もさみしくないように、誰かが入りたいときには(よほど非礼でなければ)いっしょに遊ぶ。 


 物理的には、夜学バーに所狭しと並んでいる本やもの。そういうものもよき反射材となります。すなわち「話題」。一対一で、相手の話や自分の話をするのもいいけれども、それはそれで。何かを反射して話すのも気楽でよいです。そこからどこへでも飛翔していけるなら。



【定型文】
 2022年6月のみ更新されるnoteです。毎日17時に投稿され、一定時間経過後にTwitterで告知されます。(企画詳細
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