23 夜学バーの成立要件(3) 立地、どうして湯島になったのか

 夜学バーの今の物件(台東区上野2−4−3 池之端すきやビル301)は僕が探して、選んだものではありません。

 2015年8月31日、自分でつくった西新宿のお店(「19」参照)が取り壊しでなくなって、路頭に迷った僕は新宿中央公園で無店舗バー(野外飲み会)を催すなどしておりました。冬場はそれもできないのでぼんやりしていたら、僕の自費出版本の読者でありお店のお客さんでもあった友達が紹介してくれたのです。

「バーをやっている友達が、引き継いでくれる人を探しています。ジャッキーさんどうですか?」
「場所はどこでしょう」
「湯島です」
「湯島! 湯島ってめっちゃカッコイイですよね、字面が。興味あります!」

 僕もお店を再開する機をうかがってはいたのですが、困っていたのは立地。僕のやりたいお店のスタイルは「ご近所型」ではなく「わざわざ型」です。
「ご近所型」のお店の集客は「毎日のように来るお客を10人」捕まえるのが肝心ですが、僕のいう「わざわざ型」のお店は、「月に一度来るお客を200〜300人」というイメージ。
(このほかに「観光型」というのもあって、「一生に一度しか来ないようなお客を無数に」というスタイル。もちろんこれらのハイブリッド形態も存在します。)

 徒歩圏内に自宅や職場のあるお客さんをできるだけ多く、というのではなくて、わざわざ電車に乗ってやってくるとか、自転車で小一時間走ってくるとか、旅行や出張のついでに、あるいはもう、わざわざそのお店のために飛行機に乗っちゃうとか、そういうお客さんを多くもちたい。

 となるとやはり東京の、多くの路線が乗り入れるターミナル駅でなければ成立しにくいわけです。たとえば新宿、渋谷、池袋。

 新宿にいた時間が長すぎて、渋谷や池袋はなんとなく水が合わない気がしていました。中野や高円寺など中央線沿いも考えましたが、偏りそうだし、地方から遊びにきた人がわざわざ訪れるにはちょっと遠い。

 そこで「湯島」すなわち上野・御徒町エリア。秋葉原、御茶ノ水、神保町、本郷、谷根千、浅草といった文化的な街に近く、アクセスも抜群。地下鉄は4路線、京成線もあって、JRには新幹線まで止まるのだ! 空港も行きやすい。目から鱗が落ちるというか、「その手があったか!」という気持ちでした。
 新宿に慣れた人たちには遠いかもしれませんが、月に一度とか、年に一度ならちょうどいいはず。それ以上に、東京東半分のお客さんを獲得できることのほうが大きい。
 新宿は西に強く、南西と北西にも強い。上野は東に強く、北東と南東にも強い。管轄がちょうど逆という感じ。両方をおさえるに越したことはない。

「湯島」という土地について、調べれば調べるほどそのアクセスのよさと、独特な文化度の高さについて惹かれていきました。「うむ、ここしかあるまい。」と心を決めるまでにそう時間はかかりませんでした。

 何よりの決め手は湯島天神と湯島聖堂。どちらも学問の聖地。すでに学校の先生をやっていたのもあって、「ちょうどいい」と思ったのでした。前のお店も「尾崎教育研究所」だったし。

 物件を決めた時はまだ、「夜学バー」という言葉は浮かんでおりませんでした。店名が決まるまでの顛末と、店内構造についての話はこの次の回で。




【定型文】
 2022年6月のみ更新されるnoteです。毎日17時に投稿され、一定時間経過後にTwitterで告知されます。(企画詳細
 この1ヶ月はお店の営業がほぼありませんが、僕(店主尾崎)以外の人が何かをやっていることもあるので、ぜひホームページ等をご確認ください。僕もいるかもしれません。
「ぐうたらする」ゆえ今月は6桁の赤字が見込まれております。よろしければ存在への対価というおねだりページをご覧くださいませ。あるいはなんらかの方法で。

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