2022年6月は「ぐうたらの月」とし、バー業務をお休みします。(かわりに毎日文章を投稿します。)

●ぐうたらの日

『ドラえもん』14巻に「ぐうたらの日」という回があります。
 時は6月1日。のび太の有名なぼやき。↓


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「日曜のほか一日も休めない こんなつまんない月があるか!」(藤子・F・不二雄『ドラえもん』てんとう虫コミックス14巻103ページより) *それにしても……。ここのドラえもんの演技(表情と身振り)は逸品ですね。「なぜ?」をセリフなしで表現し、即座にのび太に引き取らせています。


 この後のび太は、道具を使って翌6月2日を「ぐうたら感謝の日」と制定。その日は決して働いてはいけません。遊ぶことさえ「ぐうたら精神にそむく」という理由で推奨されません。


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「いっしょうけんめい遊ぼうなんて、ぐうたら精神にそむくことになるんだぞ。」(藤子・F・不二雄『ドラえもん』てんとう虫コミックス14巻106ページより)*このドラえもんの表情! さっきとほとんど同じです。


 この回は非常に人気があり、よく話題にのぼります。やはりみんな、ぐうたらしたいのでしょう。自分で勝手に祝日を制定し、好きなだけぐうたらしてよい。夢のような話です。
 6月を迎えるたび、この話を思い出す。そういう人はけっこう多いのではないでしょうか。知らなかったあなたも、きっと来年から「あああ、ゆううつ…。」とつい感じてしまうでしょう。『ドラえもん』の愛読者はみな、そういう呪いにかかっております(たぶん)。


●ぐうたらの月

 バーの経営者というのは「自分で勝手に祝日を制定する」のできる立場です。僕がいま、「あす6月2日はぐうたらの日として、夜学バー(当店)をおやすみします!」と宣言したところで、「ああ、そうなの」で済んでしまいます。
(もちろん「行こうと思ってたのに」と残念がる声は多少あるかもしれません。それが申し訳ないので、ふだんは臨時休業をほぼしませんが、いつでも休みたい時に休める、というのは個人のお店のすごいところです。)

 そこでこのたび、「ぐうたらの日」なんてケチなことを言わずに、「ぐうたらの月」を勝手に制定してしまおう、と思ったのでした。

 東京・湯島の夜学バーは、2022(令和4)年6月を「ぐうたらの月」とし、店主尾崎はバー業務をほぼお休みします。

 6月は働きません。「夜学バー店主としては」ですが。開業から5年間、だいたい平均して月に20〜25日くらいはお店に立っているのを、ほぼゼロにします。

「ほぼ」というのは、現実としてすこしは働かざるを得ないため。たとえば6月5日(土)は高校生がカウンターに立って「夜学バー」を運転する(詳細)のですが、高校生だけでバーを管理させるわけにはいきませんので、付き添い、もろもろの手助けをします。
 また、高校生(たち)は20〜21時くらいに帰るのですが、お客さんたちは消化不良になってしまうでしょうから、その後は僕がお店に残って、お片付けなどもすることになると思います。
 そのように「もののついで」で働くようなことはあると思いますが、「自分一人だけでお店を営業する日」というのは一切なくすつもりです。

 今のところ、6月の夜学バーの営業日は前述の5日(日)に加え、7日(火)、21日(火)、28日(火)の4日間しか決まっておりません。(これら火曜日はかつて働いてくれていた「あすか」氏が19時から23時のあいだ担当します。)
 まちくた氏(件の高校生)が「もう1日くらいやりたい」と言ってくれているのと、ほかの希望者も(ありがたいことに)いるので、もうちょっと増える予定ではあります。水曜昼は通常通りです。

 墨田区京島の「喫茶 夜学バー」のほうは、2日、9日、23日、30日の4日間(すべて木曜日)開店します。


●なぜ休む必要があるのか


 休みたい、ぐうたらしたい……もちろんそれが一番の理由ですが、「夜学バー」というお店を良き空間として維持するためには、僕が積極的に休みを取ることが不可欠なのです。

 なぜかというと、お店にずっといると、「仕入れ」ができないからです。ここでいう仕入れとは、「自分が魅力的であるための入力(インプット)」みたいなもの。
(参考:夜学バー ホームページ「読みもの」–「『仕入れ』について」「『常連』という概念について」など)

 いつでも、何があってもお店で待っている「洞窟の隠者」のようなものにも憧れますが、まだ早いでしょう。今のうちは外で経験を積み、知見を深めるべし。いつかおじいさんになった時、薄暗い混沌とした店の奥で、来るとも知れぬ客を静かに待つ妖怪や妖精のような存在になりたいものです。(今も多少はそうですが。)

 少なくとも若いうちは、時にお店を離れ、いろんな人やもの、土地や空気に触れながら、新鮮な考え、発想を取り込み、また育んでいく。友達もほうぼうに増やす。それが長い目で見れば、この夜学バーというお店を豊かにしていくと信じます。
 大学教員にも「サバティカル」と呼ばれる研究休暇がありますが、夜学バーも一つの高等な(?)教育機関なのですから、そういうことがひと月くらいあってもいい、いや、あるべきなのです。
 お店にずっといる僕よりも、たまに休んで好き勝手なことをしている僕のほうが、たぶん面白い人間なのです。僕の場合はたぶんそうです。

「豊か」だの「教育機関」だの「面白い」だの、いろいろ偉そうに言っておりますが、この辺りについてもこれから1ヶ月書いていこうと思います。
 というわけで


●6月のみ毎日17時にnoteを更新します(計30本)


 ただ休んでいるだけではつまらないし、ここ最近で興味を持ってくださった方にも申し訳ないので、この5年間の営業を踏まえて、このお店のことを改めて文章にまとめてみようと思い立ちました。

 ホームページにはすでに膨大な文章があるので、あえて趣向を変えてnoteで。僕ははっきり言って、このサービスが好きではありません。横並びの「アカウント」上での、借り物のスタイルでは、オリジナルなことはできないと思っています。
(「本当のスタイルはオリジナルであるコト」三浦大知『Free Style』)

 いまだに時代遅れの「ホームページ」なんぞをコツコツ、ちまちまと更新し続けているのは、オリジナルでありたいから、その一心にほかなりません。よそにはないとくべつなお店でありたい。だったらTwitterもnoteもやんなきゃいいじゃないの、と思われるかも知れませんが、「たくさんのすばらしい友達とめぐりあいたい」というのも、もう一つの一心。その人たちは、SNSにいるかもしれない。
 SNSやこのnoteなどをきっかけとして、最終的には現地(店舗)においでいただけたら幸いです。あるいは、ホームページをお読みいただき「なるほどねえ」と思っていただくだけでも、いや、できればその旨を何らかの方法で表明していただけたら、これもまた大いなる幸いです。

 文章は毎日17時に投稿され、1日から30日まで計30本の予定です。いつも(今みたいに)長くなってしまうので、目標は「短くまとめる」こと。お付き合いいただけたら。7月以降noteを更新する予定はありません。元通りホームページと実店舗を中心に展開していきます。ただし、翌年以降にまた「ぐうたらの月」をやるとしたら、もしかしたら。

●その間、収入はないわけです

 夜学バーの固定費は均して月15万円くらい。4〜5日は営業するとはいえ、10万円以上の赤字が出ることはすでに間違いないと思われます。墨田区京島の「喫茶 夜学バー」は計4日営業しますが、こちらは現状、やればやるほど赤字です。のんきに「ぐうたら」だの「仕入れ」だの「サバティカル」とか言っている余裕は本来、ないはずなのですが、そろそろ休まないと僕は、また僕の「面白さ」はもたない気がするのです。

 というわけでかつて大活躍した「存在への対価」を再びご紹介いたします。文章が面白かったらnoteからの投げ銭も可能ですが、手数料が高いのでおすすめはしません。
 また「インターネットの文章等は無料であるべき」という個人的な意見から、有料設定にはしません。それとはべつにお金をくださるのならば感謝しかありませんし、感謝したからとて僕のその人への態度や関係の持ち方は何も変わりません。ご安心を。(返報性撲滅運動)


 ちなみに夜学バーは、2020年から2022年までの「緊急事態宣言」や「まん延防止等重点措置」を受けて休業したことは一度もありません。ずっと細々、営業を続けていました。2017年4月から2020年の年末まではたった1日しか休日はなく年中無休でした。2020年末(12月後半)からは従業員削減とともに休日を作るようにしましたが、長期にわたるお休みは今回が初めてです。
 ゆえに「バーはここ2年間、休みまくってたのでは?」というのは夜学バーにはあたりません。むしろほとんどお客の来ないなか孤独に営業し続けるつらさを深く深く味わいました。くたびれた、さすがにそろそろ休みたい、ようやく休める、という喜びと安堵ともに、せっかくだしちょっと特別なことをしてみようと思ったわけです。これが逆に負担にならないよう、「簡潔に」文章をまとめていきたいのですが、すでにこんなに長くって、ハテサテどうなることやら……。

夜学バーbrat
東京都台東区上野2−4−3 池之端すきやビル301
http://ozjacky.o.oo7.jp/brat/

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