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大下英治「小泉純一郎vs.抵抗勢力」

政治ノンフィクション電子復刻。大下英治「小泉純一郎vs.抵抗勢力」。
https://www.amazon.co.jp/dp/B08LVPSFHJ/
 派閥力学を超えた党人事と閣僚人事で構成された小泉体制。構造改革を唱える小泉内閣だったが、そこには多くの抵抗勢力とトラブルが待ち構えていた。自民党、公明党、保守党の連立内閣に、自由党と民主党が野党として対決する構図だった。今読んでも胸がワクワクするような、激しい攻防。同じ党内とは思えないくらいの、激しい議論。抵抗勢力と称されて悪役となった議員たちにも、それなりの洞察や見識があったことが窺える。「自民党をぶっ壊す」と言い切った小泉純一郎の、類い稀なる党運営。これまでの自民党の派閥政治や談合を拒否した姿勢は、突然変異の決然たる姿勢であった。本書は、2005年の郵政解散への序章である。その戦いは、2001年の内閣発足から火蓋を切っていた。
 先ずは外務省。小泉内閣人気に一役買った田中真紀子外相だったが、国民的二世人気の一方で、反米姿勢と外務省閣僚との対立で物議を醸した。さらに北方領土返還の対露交渉で、当時の橋本派3プリンスの1人と言われた鈴木宗男と激突。結果的に田中真紀子の外相更迭、鈴木宗男のスキャンダルで逮捕と議員辞職。内閣支持率は急降下。
 そして目玉の特殊法人改革。石油公団の廃止。これは堀内実総務会長が先導。次に道路四公団の統合や日本道路公団の廃止と民営化。こちらは石原伸晃行政改革担当大臣と扇千景国交相が推進。激しく抵抗する道路族の古賀誠前幹事長。住宅金融公庫や都市基盤整備公団の民営化。これには江藤隆美と小林興起が反対。
 合間を縫って、3.11事件でテロ対策特別措置法の有事国会。ここでは民主党との攻防。この頃、YKK時代からの盟友である山崎拓幹事長の女性問題で、支持率が更に急落。小泉純一郎熱烈支持の山本一太は「改革決死隊」を結成して官邸に駆けつけた。次に後々の大問題となる郵政公社化さらには郵政民営化。これには郵政族である橋本派のドンである野中広務と総務局長である荒井広幸が反対の急先鋒。税制改革を進める甘利明には、抵抗勢力として小林興毅。そして税制調査会長の利権を離そうとしない長老の山中貞則。
 混乱する自民党に対抗するべき野党第一党の民主党は、代表選で船頭ばかりが多く候補者乱立。党首の鳩山由紀夫をはじめとして、菅直人、野田佳彦、前原誠司、松沢成文、河村たかし、岩國哲人、中野寛成、石井一たちが名乗りを上げる。若手議員が候補者を野田に一本化して、鳩山や菅を旧体制と位置付けたことが象徴的。推薦人集めなどを経て、結果的に鳩山、菅、野田、横路の4人が残る。投票結果から、一位、二位の鳩山、菅が決戦投票して、鳩山由紀夫が三選。
 小泉内閣のサプライズとして、北朝鮮訪問。森内閣時代から受け継いだ課題の具体的アクションは、大胆な小泉純一郎だからこそできたパフォーマンス。最後にデフレ対策を巡って金融機関の公的資金注入について、竹中平蔵経済財政担当相と柳沢伯夫金融担当相のバトル。結論を出すために内閣改造。派閥の推薦は一切受けない小泉流。後に反対派の首領となる亀井静香が腹に一物持つ人事だった。

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