キシカン

岸本さんをラーメンに誘った。
行きましょう!と彼愛用のオンボロAudi 助手席に身を預け、向かう。
店内で待つ間、丁度TVの出演者と目が合った。TVを観ない2人なので、雑音に過ぎないかやや心配だったが、とりわけ彼は興味津々で席の選択があっていたことに安堵した。
帰路、公園に向かった。曰く渡り鳥と鯉がいるからと、敢えてファミリーマートに寄り道し、5枚切りの食パン1斤を抱えて。
7月なのでおざなりな鴨とアヒルが1匹ずついるだけだったが、それは兎に角食パンを撒いているうちに大量の雀が出没しており、その頃には一種の作業化していた。知らない男の子、おそらく4歳ほど、人懐こそうに或いはややたどたどしく、彼の意図を伝えてきたので、食パンを分け一緒に撒いた。メンズはずっと喋っていた。母親から「ありがとう」を貰った。
岸本さんが小さい頃、矢張餌巻きをした事実は、今も偶像のままらしく、彼が大きくなった頃我々のことをきっと覚えてるよ、と愉しそうに軽んじる彼。
垣間見えた彼を反芻しつつ、私は帰り際の重ねた指のごつさまで覚えている。

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