#303 溜め込んでた想いが多すぎる女
マサオが校舎裏に行くと、ミキが緊張した様子で立っていた。
「マサオくん。来てくれたんだ。」
マサオに気づいたミキは笑顔になった。
「急に呼び出してごめんね。」
「ううん。話って何?」
「実は私、マサオくんのことがずっと好きでした。」
「え?」
マサオは驚きと嬉しさが入り混じった表情になった。
「マサオくんになんて言われるか不安で、ずっと言えなかったんだけど。ずっと前からマサオくんのことが好きで。きっかけは去年の文化祭の時だったんだけど。去年同じクラスでさ、一緒に実行委員会やってクラスの出し物の準備したでしょ?」
「ああ、したね。」
「2人が実行委員会に選ばれたその日に初めて喋ったら、マサオくんがすごい優しい人だってことに気がついて。でもその時はまだ好きじゃなかったんだよ?でも次の日も、その次の日もマサオくんと一緒にいるとなんだかすごい楽しくて。実行委員になって3日目には、家に帰った後とかもマサオくんのこととか考えちゃって。もしかしてこれが好きってことなのかなって気づいてはいたんだけど、なぜだかその感情から目を背けてる自分がいたんだ。でもその次の日、マサオくんが風邪で学校をお休みしてたでしょ?その時に、マサオくんがいないのがすごい寂しくて。マサオくんのことがとても心配になっちゃって。授業中もずっとマサオくんのこと考えちゃって。やっぱりこれって好きってことなのかなって思ったんだけど、なぜだかその感情から目を背けてる自分がまだいて。それで・・・」
「えー、好きになった経緯全部喋ってくれるの!?嬉しいけど、すごい長くなっちゃわない!?」
「で、また次の日。マサオくんの風邪が治って学校に来た時、すごく嬉しくて。マサオくんの顔を見た時にすごいドキドキしちゃって・・・」
「え、これまだ去年にいるよね!?しかもまだ5日目くらいでしょ!?文化祭があったのは去年の9月!今も9月!ちょうど1年あるけど!てかよく覚えてるね!まあ嬉しいんだけどさ!」
「このドキドキって、もしかして好きってことなのかなって思ったんだけど。でもなぜだかその感情から目を背けてる自分がまだいて・・」
「そんでいつ好きと向き合うの!?ずっと目を背けてるけど!」
マサオはミキに呼びかけた。
「ごめん、ちょっと俺この後塾あるんだけど!17時から!」
「ごめん!それまでには終わらせるから、最後まで聞いてほしい!」
そしてミキは再び話を戻した。
「で、えーっと・・・あれ?どこまで喋ったっけ?」
「え?」
「あー!じゃあもう1回最初から話すね!きっかけは去年の文化祭の時だったんだけど。去年同じクラスでさ・・・」
「あー、なんでなんで!?」
「文化祭の実行委員を・・」
「ちょ、ミキちゃん!!」
「え?」
「あのー、もう大丈夫だよ!俺の答えはもうOKって出てるから!」
「ホント?うれしい!でも私の気持ち、最後まで聞いてほしいんだ!」
「じゃあせめて好きと向き合った後からにして!長くなっちゃいそうだから!」
「うん。わかった。私がマサオくんを好きだって気づいたのは、実行委員になってちょうど2週間後だったんだけど・・」
「あー、結構序盤で向き合ってた!まだ去年の9月じゃん!思ってたよりだいぶ早かったな!」
「マサオくんのことを目で追っちゃう自分がいて、これが好きなんだって事に気がついて!マサオくんにずっと気持ちを伝えようと思ってたんだ!マサオくん、好きです!付き合ってください!」
ミキは頭を下げた。
「え?あ、思ったより早く終わった。」
マサオはほっと胸をなでおろした。
「ミキちゃん。実は俺も前から・・」
「そうやって気持ちを伝えようとは思ってたんだけど。なかなか勇気が出なくて・・」
「あー、まだ話の途中だった!」
「好きです、付き合ってくださいってずっと言えなくて・・」
「話の一部だった!紛らわしい!」
「それから10月、11月、12月と過ぎていって。冬休み中もずっとマサオくんの事考えちゃって。冬休み明けの1月、2月、3月も過ぎて・・・」
「あー、でも話の進むペース上がってきてるよ!いいよそのペース!」
「4月になってクラスが替わったら、マサオくんと離れ離れになっちゃって。すごい寂しかったんだ。でも隣の席にいたヤマグチくんが、すごい優しくしてくれて。ヤマグチくんは私のこといっぱい笑わせてくれてさ。なんか気がついたらヤマグチくんのこと、すごい考えちゃってて。」
「あれれ!?」
「家に帰った後もヤマグチくんのことすごい考えちゃって。これってもしかして好きってことなのかなって思ったんだけど。でもなぜだかその感情から目を背けてる自分がいて。」
「おいおい嘘だろ!?え、やめてくれよ?」
「でも次の日もヤマグチくんと喋ってるとすごい楽しくて。」
「おい、ヤマグチとあんま喋んなって!」
「これって好きってことなのかなって思ったんだけど。でもその感情から目を背けてる自分がまだいて・・」
「向き合うなー!向き合わないでくれー!」
「そしたらその日のお昼休みに、マサオくんと廊下ですれ違って。その時に、やっぱりマサオくんっていいなーって。その時再確認して。」
「よしよし、オッケーオッケー!」
「でもその日の帰り道、たまたまヤマグチくんと一緒になって。2人でゲームセンターに行って、それがすごい楽しくて。」
「えぇ・・。」
「これが好きなんだって事に気がついて・・・」
「えええええ!!!!向き合っちゃった!!!!」
「それで私、ヤマグチくんに気持ち伝えようって思ったんだけど。なかなか勇気が出なくてさ。だからマサオくん。私の代わりに、ヤマグチくんのこと呼んできてくれないかな?」
「嘘だろおおおお!!!!そのパターン!?」
「って言おうと思ったんだけど、でもそれはさすがにマサオくんに申し訳ないなーって思って・・・」
「ああああ!よかった!そのパターンじゃないの!?」
「自分でヤマグチくんのところにいって告白したんだ。」
「ええええ!!!告ったの!?」
「そしたらあっさり振られて・・」
「そんで振られてたの!?」
「悲しくて泣いてたら、その時優しくしてくれたのがゴトウくんで。あれ?これって好きってことなのかなって思ったんだけど・・」
「あー、もうなんなのこの話!!」
「え?」
「結局ミキちゃんは何が言いたいの!結論だけ言ってくれないかな?」
マサオがそう伝えると、ミキはうなずいた。
「・・・わかった。じゃあ言うね?」
「うん。」
「そういうことだからさ。iTunesのプリペイドカード、5万円分買ってもらってもいいかな?」
「あー、全然話見えなくなってる!!!告白ですらない!!!ヤマグチに振られた4月から今までの約5ヶ月間で一体何があったんだ!!!」
「よろしくね!」
「いや俺買わないよ?」
「え?でもマサオくん、さっきOKっていう答えは出てるって言ってくれたじゃん!」
「いや言ったけど!まさかこんなことだと思わなかったから!告白されると思ってたから!」
「告白?」
「うん。」
「え?じゃあそのOKっていうのは・・・もしかしてマサオくん、私のこと・・?」
マサオは黙ってうなずいた。するとミキは頭を下げた。
「ごめんなさい。」
「えぇ・・。」
「私もう彼氏がいるの・・。」
「ええええ!!!」
マサオは膝に手をついた。
「マジかよ!もしかして、その彼氏って・・・」
「西高のヒロシくん。」
「おい、ゴトウですらないのかよ!!!」
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