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#241 怒る時、気を使わなきゃいけない男

「お前さあ、ホント何やってんだよ!」

部長はものすごい剣幕で部下を怒鳴りつけた。

「すみませんでした。」

部下は沈痛な表情で頭を下げる。

「マジで何やってんの!?俺聞いたこと無いよ!会社のパソコンでエロサイト見てウイルスに感染しちゃうやつなんて!」

「すみません。」

「ふざけんなよ!仕事中に何やってんだよマジで!」

「ついムラムラしちゃって。」

「ムラムラすんなよ、仕事中に!お前自分が何やったかわかってんのか!?前代未聞だぞ!」

「前代未聞!?」

「そりゃそうだろ!今までそんなやついなかったもん!どうするんだよ!なあ、どう責任撮るんだよ!」

部長が詰め寄ると、部下は腰に手を当てた。

「あー、やばい。クラクラしてきた。」

「ああん!?」

「やばい、頭痛い、、」

「いや、いいからそういうの!こっちは会社のパソコン使えなくなってんだよ!なあ、どう責任取るんだよ!」

「気持ち悪い、、吐きそう、、、」

「ホントいいってそういうの!わかってるか?俺怒ってるんだよ!」

「怒ってる?うわあ、、、」

部下はその場にしゃがみこんでしまった。

「おい、聞いてんのかよ!おい!!!」

「マジで吐きそう、、、」

「おい!!!!」

「うわあ、、、、」

「え、大丈夫?」

部長は思わず優しい口調で部下に尋ねた。

「え、大丈夫?」

「吐きそうです、、、」

「え、マジ?なんで?」

「部長が怒るから、、、」

「・・・え?」

「なんかすごい怒るから、、、追い詰められちゃって、、、、」

「いやいや、それはだってお前がさあ・・」

「ああ、やばい吐きそう、、、、」

「・・・・ごめん。」

部長は思わず謝った。

「ほんと良くないですよ。あんなに怒るなんて。」

「でもとんでもないミスだったから。さすがに怒らないわけにはいかなかったっていうか。」

「だとしても怒りすぎですよね?あんなのダメですよ。」

「・・・うん。でも前代未聞だったから。」

「ああやばい。吐きそう、、、」

「え、なんでなんで?」

「僕、前代未聞になりたくないんですよ。」

「え、どういうこと!?」

「前代未聞の看板背負いたくないです、、プレッシャーです、、、吐きそう、、」

「いや意味分かんないんだけど!そもそもお前が・・」

「前代未聞取り消してもらえます?」

「ん!?どういうこと!?」

「だって前代未聞って、前例がないってことですよね?なんかその事実が「あれ?もしかして俺とんでもないことやっちゃったのかも?」っていう気持ちにさせるんですよね。」

「まあ実際とんでもないことやっちゃってるからね。」

「吐きそう、、、」

「いや吐きそうじゃなくて!」

「・・・・・救急車呼んでもらえます?」

「え、大丈夫?」

「前代未聞でいる以上大丈夫じゃないです、、、、吐いてもいいですか?」

「・・・・・・あれ?そういえば、いたかもなぁ・・。」

「え?」

「そういえば昔、仕事中にエロサイト見てウイルスに感染しちゃったやついたかも!」

「え?ホントですか?」

「お前前代未聞じゃないかも。うん、大丈夫かも。」

部長がそう言うと、部下は開き直った。

「いやなんなんすか!?前代未聞じゃないんですか!?」

「うん、違ったかも。」

「なんなんすかマジで。ありえないっすよ。」

「・・・・ごめん。」

「そもそも部下が失敗したくらいでこんなに怒るとかありえないっすよ。謝ってください。」

「え?」

「謝ってくださいよ。」

「・・・・いや、でも元はと言えばお前が・・」

「謝ってください!!!」

「・・・・・・・ごめん。」

「まあわかればいいんですけど。」

「え、ごめんちょっと待って?なんで俺が・・」

「あ、待ちたくないです!」

「は?いや待ちたくないじゃなくて!」

「待ちたくないんで!」

「なんなのお前!」

部長は思わず怒鳴った。

「そもそもお前がとんでもないミスしたからいけないのにさ、それなのに・・・」

「あぁ、吐きそう、、、」

「いや吐きそうじゃなくて!」

「謝ってほしい、、、、」

「なんで俺が謝らなきゃいけないんだよ!お前がさぁ・・」

「救急車呼んでください、、、、」

「ごめん!!!!!!!!!!!!!」

部長はものすごい勢いで頭を下げた。すると部下はイラつきながら言った。

「まあわかればいいんですよ。」

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