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#246 危ない車に乗ってる男

コウジくんと付き合い始めてから初めてのドライブデート。私はいつもよりおしゃれをして、ウキウキしながら待ち合わせ場所の駅前ロータリーに向かった。

プップー!!

クラクションの方を振り返ると、コウジくんが運転席の窓から顔を出して優しい笑顔で手を振っていた。私がコウジくんの車の方に向かっていくと、コウジくんはわざわざ運転席から降りてきて助手席のドアを開けてくれた。

「お待たせ。」

コウジくんの声はとても優しかった。

2人で車に乗り込んでシートベルトを締めて、目的地の公園に向かって車は走り出した。窓から差し込んでくる太陽の光が白くキラキラと輝いていていた。

「温度大丈夫?寒くない?」

コウジくんは気を使って私に尋ねてきた。コウジくんのこういう優しいところが私は好きだ。

でもこのドライブデートに来て、一つ引っかかってることがある。

まあそんなに気にすることじゃないのかも知れないけど、コウジくんの車のナンバーが8888だった。

まあきっと私の思い過ごしだと思うけど、そういうナンバーにしてるってことはコウジくん、ちょっと痛い人なのかな?

まあでもこんな優しいコウジくんに限ってそんなことあるはずないか。いや、普段は優しいけど運転すると人が変わっちゃうタイプなのかも知れない。そういう人、たまにいるっていうし。

いやでもやっぱりコウジくんに限ってはそんなはず無い。私はそんな事を思いながら運転席のコウジくんを見た。

「シート狭くない?全然倒しちゃっていいからね?」

コウジくんはやっぱり優しかった。でもまたこのタイミングで一つ気がついたことがある。

コウジくん、白くて太いハンドルカバー付けてる。

まあ別にどんなハンドルカバーを付けようが人の勝手なんだけど、でもナンバーのことがあったし。まあきっと私の考えすぎだよね。

でもなんかこの車、煽り運転とかしちゃうような人の仕様なんだよな。

嫌だなぁ。コウジくんが煽り運転とかするような人だったら。コウジくんが煽り運転とかした挙げ句、車の運転席から降りていくようなことがあったら、私はやっぱりその隣で携帯のカメラ回さないとなのかなぁ。嫌だなぁ。

いや、きっと考えすぎだよね。コウジくんに限ってそんなはず無いもんね。

私はネガティブな考えを振り払うために、首を何度か横に振った。その時私の目にあるものが飛び込んできた。

窓際にぶら下げられた、大麻の形の芳香剤が。

なんだかパズルのピースがだんだんと揃っていってる気がするなぁ。

そういえば待ち合わせの時のクラクション鳴らす感じとかも、今思えばすごいダサかったな。

「眠くない?もし眠かったら全然寝ちゃっても大丈夫だからね?」

なんだか今はもうこの優しさもちょっと怖く感じるな。

あと今気がついたけど、なんかずーっとスピード出てるな。ここ30kmって標識あるのに、57km出てるな。

コウジくんて、やっぱり痛い人なのかな?

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