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【エッセイ】例のメロディ

 やばい私マナーモードにしてたっけ。息抜きに街中のカフェでコーヒーを啜っているとどこからか突如、携帯の着信音が耳に入り、慌ててズボンのポケットに手を入れる。
 てれれん、と鳴れば、急激に心臓が引き締まり、サイレントスイッチをオフにしたかの、設定の確認を連鎖的に余儀なく誘われるのだ。公共の場で周囲に対して迷惑がかかるから、そんな風な、罪の意識に近しい後ろめたさで人目を憚るかと思いきや、案外そうでもなく、テレビの再現ドラマ等で流れたとしてもやはり咄嗟にスマートフォンを握ってしまう癖があり、現代病の類を疑う。何故か妙に身体に沁みついてしまった。
 外出先で急に、大雨に見舞われ予定を切り上げて帰りの電車に乗った。暫くすると立て続けにアラームが車内で鳴り響き、乗車客は皆、土砂崩れや、川の氾濫などの注意を呼び掛ける緊急速報メールに釘付けになる。例のメロディじゃないだけでより異常を察せる。