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調理経験ゼロの素人が星付きレストランを任される為にした事

今は違いますが、私はフランス料理に携わって14年の料理人をしていました。私が料理人の世界に入った時から考えると、料理人やレストランのスタイルは劇的に変化してきました。

退職率も高く常に人の入れ替わりがあり、非効率的な「しきたり」なども横行している飲食業界。

みなさんのイメージだと、料理の世界は「体育会系のノリ」というイメージが強いことかと思います。しかし近年では時代?に合った合理的でムダを省いたスタイルが流行っているように感じます。

パワハラ・暴力・根性論などは過去の産物。

いまの体勢は、現代の若い人にマッチしたとても効率的なスタイルだと思いますし、昔の感情論だけでは到底やっていけないのも現実ですね。飲食業界だけではなくてどこの会社でもこういった変化は起きているのではないでしょうか。

そんな中であえて、過去に私が実際に行ってきた泥臭いコトをご紹介したくなったのです。



もっと効率的にスマートにすればいいんじゃね?と鼻で笑われるかもしれませんが、これから社会に出て新しい生活をされる学生さんや転職や新規の職場に移られる方、何か新しいコトに挑戦される方に向けて書いてみました。

その一瞬一瞬に全力で向かうコトへの大事さやその見返りを自分の体験を通して伝えてみたくなったのです。

何かの「ヒント」や「やる気チャージ」が出来るきっかけになってくれれば幸いです!


<目次>
・ド素人の何気ない決意
・私が行った都内一流店へのアプローチ方法
・24時間全力疾走
・しだいに変化する目
・新しいコトにチャレンジする方へのエール


ド素人の何気ない決意

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当時の私は関西の下町で何のとりえもない少年でした。高校を卒業しては大学へ行くと言いいながらも勉強もせずにアルバイトをしながらフラフラしているような最低の生活をしていました。

その当時の毎日の食事は主に友人との外食。

吉野家、マクドナルド、餃子の王将、ラーメン屋さんなどといった偏りのある食事ばかりでした。

毎日が同じコトの繰り返しで、何の刺激も目標もない日々にしだいに飽きてきます。

そんな時にふと思いつきます。「沖縄に行こう!」と。。

当時は空前の沖縄ブーム。安室奈美恵を筆頭にスピード、DA PUMP、Cocco、キロロ、Maxなど沖縄のアーティストが盛り上がっていた時代でした。なんか楽しいかもしれないと単純な理由だったのです。

季節限定の沖縄リゾートホテルのアルバイトに応募して新しい寮生活が始まることになったのです。

アルバイト先は、ホテルのレストランに配属になったのですが、​当時の私はクソ生意気なヤツでしてお客様に笑顔を振りまくようなホールスタッフの仕事は絶対にやりたくありませんでした。

そんな意味不明の理由から消去法的に「調理」の世界に入ることになったのです。

それまでは料理なんてまったくと言っていいほどやった事がなく、それこそカップラーメンのお湯を沸かす程度でした。

恥ずかし過ぎるのですが、当時は「レタス」と「キャベツ」の区別さえ分かりませんでしたからね・・

先輩や上司に怒られながらも継続できたのは、プライベートが楽し過ぎたからかもしれません。

そんな日にある料理本を目にします。

その本の中で東京都内の某レストランのスペシャリテ(そのレストランの特別料理)を見て衝撃を受けるのです。

それはトマトのサラダだったのですが、その美しさと考えられない芸術性の高さ、しかもそれは食べ物であるという驚きの価値観が人生を変えることになるのです。

「自分もこんな料理を作ってみたい!」

そう思うようになります。そしてあんなに楽しかったプライベートの時間はフランス料理の勉強に費やされていくのでした。


私が行った都内一流店へのアプローチ方法

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人生ではじめて目標のようなものが出来てとても充実していました。あのお店に行きたいという目標です。

そのためにはある程度の実力をつけないとダメだと自分に言い聞かせては、日々の仕事に全力で取り組み出したのでした。

その働きっぷりが評価されたのか、ホテル側から社員として働いてみないかとお声がかかりめでたく入社することができたのです。

全日空系列の有名なホテルだったのも後々考えるとよかったのかもしれません。設備や扱う食材・スタッフなども一流どころがそろっていましたから。

いわゆる修業時代を2年ほど続けてついに決心し行動に移します。あのお店に行こうと。

お世話になったホテルを辞めて一度実家の関西に戻りました。

そこで準備として「中央市場」で働くことにしました。それは食材の勉強や魚のさばき方の練習のためです。それと平行してあのお店にアプローチをしていくことになるのです。

始めは電話でスタッフ募集の旨を確認してから働かせてくださいとお願いするつもりでした。しかしあんなに有名なレストランが名もなき新人コックを雇うはずがない!と思い何か良い作戦はないかと考えます。

そこでひらめいたのが「手紙作戦です」。

仮に電話でお願いしたら「スタッフは募集しておりません」と言われるか、もしくは過去の経歴を聞かれてその場でお断りされる可能性が高かったのです。いちばん伝えたい人物であるオーナーシェフにまで声が届くことはありません。

しかし手紙ならいちどは、オーナーシェフの元にまで届くことが出来ます。

まさか誰からか分からないオーナーシェフ宛の手紙を捨てるようなスタッフはいないと思ったからです。

その作戦がみごと成功して返信用の手紙に返事が返ってきました。それは1度電話をくださいというものでした。

嬉しくて泣きそうになりながらも電話するとあと2ヶ月後に新しいお店がオープンするのでその前に面接に来て欲しいという内容でした。

こちらの予定などは無いに等しいので、向こうサイドの都合に合わせて面接の日取りを決めてもらいました。期待で2ヶ月という時間はアッという間でした。そして面接当日になります。

慣れない東京の町にワクワクしながらも面接に向かいます。

憧れのスターシェフやお店に圧倒されながらも面接は進んでいきます。合格かどうか微妙な雰囲気の時になぜか自然とこんな言葉が出ていました。

「タダ働きでもいいので1ヶ月間働かせていただけないでしょうか?その後に雇うかどうかを判断していただけないでしょうか」

どうしてもこのお店に入りたいというアツイ思いからこんな言葉が出ていました。もちろん前もって考えていた言葉ではありませんでした。

その気持ちを汲んでいただけたのか、1ヶ月のあいだ無償で働かせていただきました。その頑張りのせいか、その後はめでたく入社することができたのです。

あとから聞いた話なのですが、本当はスタッフ募集は少し前に終了していたみたいだったのです。でもアツイ若者にいちど会ってみたくなったのだそうです。


24時間全力疾走

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はじめての社員としての出社日のことは今でも鮮明に覚えています。厨房に入った瞬間に「来るべき場所にいる!」と思いましたね。

そこからは全力疾走の毎日でした。

なぜそこまでするのと聞かれたコトもありますが、答えはいたってシンプルなモノでした。「単純に世界最高のスキルを早く吸収したかった」からです。

当時の始発時間5時15分に毎日乗り込み、6時前には厨房に入ります。

自分のやるべき仕事を即効で終わらせて、先輩の出勤を待ちます。そして先輩の仕事の手伝いを一緒にするのです。自分にはまかされていない高度なスキルを覚えることができるからです。

仕事中は常にこのスタンスは崩さずにいました。プライベートも違うフレンチに食べに行き勉強したり、本などで勉強し365日ほぼすべては料理のことを考えていましたね。

この経験から分かったことは、何でも無心で熱中してみるとハマる質が変わるということ。

中途半端な熱中にはない「楽しさ」「発見」「興味」「達成感」がドンドン溢れ出てくるのです。うまく例えられないのですが、一種の覚醒モードみたくなっているのかもしれません。

とにかく感覚が研ぎ済まされているのが自分でも感じられていました。


しだいに変化する目

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さすがに一流店だけあって周りのスタッフも凄腕揃いでしたが、努力の量だけは誰にも負けていませんでした。

そのおかげで、スタッフ全員から一目置かれるようになり頼りにされる場面も増えていきました。

上司やオーナーシェフからの信頼もアツく、先輩よりも早い出世&高いお給料をゲットすることも出来たのです。

あまり大きな声じゃ言えませんが、他のスタッフには内緒でオーナーシェフからたまにお小遣いをもらっていました。

シェフが休みのときはお店を仕切るまでにもなりました。

なにが言いたいかというと、新しい環境に入った時にもっとも大事なのは最初の段階だというコトなんです。

「全身全霊で頑張るのは初期段階に持っていくほうが絶対にいいです!」

入社から退社する数年間のあいだ常に全力疾走することは、体力的にも精神的にも不可能です。それならどこかで帳尻を合わせる必要があるのです。

それこそが初期段階に圧倒的な努力と成果を出すべきなんです。

そうすることによって、周りのイメージや態度が変化していきます。そうなると自分にとってとても働きやすい環境になってくれるのです。

ほぼ皆があなたの見方になるのです。

やりやすい環境を作るのはあなた自身なのです。


新しいコトにチャレンジする方へのエール

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これから新しい職場やお仕事・環境に移る方にはぜひ参考にしていただきたいことです。頑張るタイミングを最初に持ってくるだけで、その後の働き方が劇的に変化するはずです。

しつこいようですが最初に頑張るのです。

ここまで私の体験から訪れる変化や報酬をお話してきましたが、ここで各項目をまとめておきます。

<ポイント>
・ある本に出会う→自分の直感を信じる
・目標を立てる→逆算して計画を立てる
・手紙作戦→結果に最も近い方法を見つける
・無償労働→オンリーワンの印象をつける
・鬼の努力→初期段階の大切さ

過去の自分はここまで意識してやれていなかったかもしれませんが、いろんな経験をしてきた今だからこそ自分の行動には意味があったのだと確信を持てます。

だからこそ、これから頑張るあなたに届いて欲しいのです。

何も出来ない、何も知らないあなたにでも自分はもちろん周りの人たちや環境すらも変えることが出来るということを。









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