田舎の閉鎖性の内実

「田舎の閉鎖性」とはなんぞや?

「田舎って暮らしの幸福度を高めるための環境は良いけど、特有の閉鎖的な雰囲気がある」というとは、地域活性分野ではよく語られる言葉だと思います。

確かにそういう側面があることは確かなんだけど、実際に住んでみて、その言葉に引っかかってるところもあって。その内実は少し違うような気がしている今日この頃。

上記で語られている「田舎の閉鎖性」って、例えば「昔から地元に住んでいる人はよそ者を嫌う」みたいなことを一般的には言ってると思うんだけど、これって実は住んでてもあまり感じません。当然だけど田舎のみなさん個人個人は良い人がほとんどだし、よそ者の私も排除されてる感なんてないんです。(その辺はたぶん都市でも田舎でも日本全国大差ないかと。)要は『個人としての排除の雰囲気』はない、ということです。

じゃあ何が引っかかるのかというと、それは『組織としての排除の雰囲気』です。

いわゆる「(都市部などの)外」から「(縁のない)田舎」に一年以上住んだことのある人は、感覚的にわかるかと思いますが、例えばもともと地域で組織されている自治会とか町内会とかって、しょっぱなは結構入りづらくないでしょうか?

この「入る」というのは必ずしも組織内部の一員となるという意味だけでなく、ただ単に何かしらの用事があって自治会の事務所に入る、というレベルの行為にも当てはまります。もっと具体例をあげると、例えば地域組織の寄り合いなんかでは、よそ者の私なんかが議題に対して発言したり「それは違うんじゃないでしょうか?」なんて反抗することなんて、とてもじゃないけどできない雰囲気があったりします。


実際こんなことがつい先日ありました。うちが貸し出している貸会場である教室をされている方(Aさん)がいました。会場利用終了後、Aさんがすぐ隣にある自治会事務所に用事がある、だけど初めてなので一緒に来てくれないかということで、私が案内しました。事務所には3人ほど地元自治会のメンバーがいらっしゃり、雑談を交えながら無事要件は済みました。

事務所から出て開口一番、Aさんが口にされたのが「あの事務所に入るのはなんとなくハードルが高い」という言葉。さらに「(私の名前)さんが一緒にいないとなかなか入れない」とも。

事務所内では他愛もないほのぼのとした雑談がなされ、それらを話している人もとても良い人たちばかり。さらに言うと、貸会場は月に一回でもう半年以上続けている教室なのでお互いの存在は認識していました。なのにハードルが高いという。

瞬間「ああ、そうか、これだ」と思いました。

入りにくさの原因は、個々人の人の良さや雰囲気、話す内容など、いわゆる個人的な何かが原因なのではないのです。地域の人たちが集まった組織(別に組織立ってなくてもグループやチームのようなものでも同じ)は、「地域の組織」というだけで”無意識的に”そこに所属している人たち以外を外してしまう傾向にあるのではないか。そう考えました。
※「排除」というと聞こえが悪く大げさでですが、本当にその表現が合っているなと感じることもあるため使用させてもらいます。

もちろん、当の本人たちはそんな事は思っていません。排除だなんてとんでもない、むしろ受け入れようとしている、と思っているのではないでしょうか。だけどそれは「個人として」です。地元の人たちだけで組織されたこの団体は、これまでもこれからも地元の人たちだけが関わるべきものだ。…そんな潜在意識が少なからずあることも、この3年ほどの移住生活で非常に感じました。本人たちも「個人」と「組織」がごっちゃになっているのかもしれません。なので第三者から見たら全くわからないかと思います。

大事な事なので繰り返しますが「個人として」の田舎はとても良いのです。ただ「組織として」となると、まだまだかなあと。多様性であったり違いを受け入れる感覚、違う組織や個人と手をとって何かをする、という意識は残念ながら乏しいような気がします。

現に、よそ者であるAさんにとって事務所のドアは重い扉だったわけです。
Aさんに限らずこれまでも何度かそのようなことは言われてきました。
そこには何かしら他人を寄せ付けない雰囲気がある、ということかと思います。

そのあたりを地域の各組織が自覚しているかどうかで、よそ者が入る間口は格段に差が開くと考えています。逆に言うと、開かれた地域組織はよそ者にとっては大変嬉しい存在であり、かつ、他地域にはない大きな魅力になる可能性がある、ということです。

まあ、とはいえ田舎の閉鎖性も色々なはずで、私が経験した地域では「組織としての閉鎖性」が強かった印象だっただけ。その性質は各地域によって異なることでしょう。

純粋にうちの住んでいる地域はその点が「もったいないなあ~」と思う次第です。新しい人が入ることで単色だった色に、じんわりとグラデーションがかかることを期待していきたいですね。

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