見出し画像

“いいクラス” に乗ってみた

初めてメルセデス・ベンツを運転してみました。E200 4MATIC アバンギャルド。Eクラスと言われるミドルクラスのベーシックなセダンです。

いつか運転してみたいと思う輸入車があっても、その願いは容易に叶うものではありません。私の場合、所有することは財政的に不可能ですが、レンタカーなら借りられそうです。

そんなことを考えていたら、近くの(… とはいっても20km以上離れた)レンタカー店で、プレミアムカー(輸入車)の取り扱いがまもなく終了するという情報が…。

▲ Premium Car Rental(Googleストリートビュー)


なんでベンツ?

車が大好きだった子供のころから「高級車」のイメージで浮かぶのが、メルセデス・ベンツ。でも、ちょっと怖いような、近寄りがたいイメージもありました。

かなり以前のこと。メルセデス・ベンツ S124に乗せてもらったことがありました。グレーのステーションワゴンだったと記憶しています。その所有者は飾り気のない紳士。滑空場の雑草だらけのデコボコ道で、ウインチとグライダーの間をS124で惜しげもなく行ったり来たり働いていました。もちろん車は埃だらけで真っ白。車内も乱雑に散らかったまま。高級車をこんなふうに単なる足や道具として使うのって、カッコイイなと思ったものです。その車で最寄りの駅まで送ってもらったのでした。

さて、今どきのメルセデス・ベンツで運転してみたいと思う興味深い車種は? 実のところ特段ないのです。でも、この先レンタカーとして容易に借りることができなくなると思うと、もう一生運転することがなさそうな車には一度は乗っておきたいという気持ちが湧き上がってきました。

四輪駆動車が好きなので、ベンツでも少し特殊なゲレンデヴァーゲン(G350d)が選択肢に浮かんだけれど、ついオフロードで試したくなって傷付けても厄介…と脳裏をよぎります。流行りのSUVタイプってのには興味が湧かないし、Shooting Brakeはスタイルが嫌い。Aクラスだったらまだ運転するチャンスが来ないとも限らないからと除外して、普通のガソリン車セダンのEクラスを予約しました。


▲ メルセデス・ベンツ E200 4MATIC アバンギャルド

4MATIC というのは、ベンツのフルタイム四輪駆動システムのこと。実際に車を購入するのなら北国生活では欠かせない4WDなので、レンタカーでも運転してみるに越したことはありません。

ベンツ以外には、BMW320d xDrive Touring と Porche Macan のレンタカーにも興味を惹かれましたが、残念ながら空きがありませんでした(いずれも 4WDです)。


運転席


▲ E200 に乗り込む

座席に就いて最初にすることはシートの調整。ドアの内側に調整レバーが付いていました。シートの下の方を手探りしなくていいので合理的かもしれないけど、見栄えはイマイチな気がします。

「メルセデスの運転は初めてですか?」と貸し出しの女性に聞かれ、はいと答えると、セレクターレバーを教えてくれました。

▲ E200 のセレクターレバー

ステアリングの右側にあるレバーです。へえ~、こんなところにあるんだ。この位置が(Neutral)、下げると(Drive)で上げれば(Reverse)、ボタンを押すと(Parking)です。

下(前進)と上(後進)へは、しっかり深く押さなければなりません。でも、力を入れる必要はないのでとても楽です。ウインカーレバーと間違えることは一度もなかったけれど、車を動かすレバーなので ぼやっとして誤操作すると怖いかな。

手前に見える「」はマニュアルのパドルシフト。+でシフトアップ。ステアリング左側の「」がシフトダウンで、下りのエンジンブレーキで使いました。

トランスミッションは 9段ATの「9G-TRONIC」。9速って、やたら段数が多いね。一般道を60~70km/hで静かに走っているとき7速の表示までは見ましたが8速には入らず、9速なんて到底届きませんでした。100km/hを超えてクルーズするようなときにしか使わない変速ギアなんでしょう。


▲ E200 ステアリング左側のレバー

左側にある3本のレバーは少々厄介に感じます。何度も間違って触ってしまいました。

いちばん上のレバーは、1本でウインカーとワイパーを操作します。操作そのものはマークを見れば分かるので難しいことはありませんが、交差点などでウインカーを操作しようとして、いちばん下のレバーに触ってしまうのです。下のレバーというのはクルーズコントロールの操作用です。自分でコントロールしたい私の場合は、全く使いません。

真ん中のレバーはステアリング位置(上下、前後)の調整用で、やや奥まっていて短いため誤って触ることはありませんでした。

これら3本のレバーの向こう側に、エンジンのスタート/ストップボタンがあります。


▲ 表示パネル

大きな特徴のひとつは大型の液晶ディスプレイ。横に2枚並んでいます。こんなふうに真っ暗で何も表示されていないときは、何だか妙な感じです。

▲ 速度計とエンジン回転計の表示

いろいろな表示を選べますが、一番落ち着くのはやはりコレ。高精細で見やすく、指針の動きもまったく違和感がありません。液晶表示は航空計器でもかなり以前から使われていますから、信頼性も高いものなのでしょう。

速度計(左)の中に表示された「」は、Comfort(心地良さ、快適)モードです。そのとおり快適に走ることができますが、発進時など何かゆったりとして もたつく感があります。高速道路に合流するときの加速では、アクセルペダルを踏んでから明らかに遅れてスピードが付いてきました。そういったレスポンス以外には何の不満もありませんが、他のモードも試してみたくなります。

ところが、ドライブモードを変更するボタンが見つかりません。どれなんだろう? 通常なら「SPORT」などと書いてありそうなものですが…。後で分かったことですが、センターコンソール左寄りにある「DYNAMIC」スイッチで切り替えるのだそうです。スポーツモードを試すことができず、残念!


外観


▲ 前から見た表情

どっしりとした安定感があります。目がつり上がり気味なこと以外は、嫌いじゃありません。でも、ベンツマーク(Three-pointed star)がやたらデカいな。…と思ったら、ここにレーダーシステムが内蔵されているらしい。カメラのレンズも見えています。

車幅は1.85m。狭い道は走らなかったので、持て余すほどには感じませんでした


▲ 左サイド

ロングノーズ、ショートデッキの傾向で、基本的には好みのプロポーションです。街中の交差点で左折小回りするときなどはノーズの長さを感じました。ドライバーに近い右側サイドミラーとピラーで死角になる部分が思いのほか広いようで、右左折を終えてレーン中央に位置どりするときに少し気になりました。オーナーになればすぐに慣れるのでしょう。

ステアリングは、素早く切ると思いのほかクイックに向きを変えるので驚きました。一方、低速で大きく切り込んだときにハンドルが戻りにくいことがあって、おやっ?という違和感が何度かありました。

車両重量は 1,730kgで、前950kg+後780kg(車検証)という重量配分。


▲ 右サイド

長さは約5m(4.93)、最小回転半径は5.5m。

ロールも少なくしっかりした足回りですが、ホイールベースが2.9m以上もあって、フワッと柔らかく吸収してくれる乗り心地を感じる場面もありました。Eクラスなら、このくらいの柔らかさが北海道の広い道をロングドライブするのに良さそうで、好きです。


▲ 後ろ姿

高さは1.5m弱(1.455)。

しっかり張った腰回りに重厚な安定感があります。貧弱な私の体型では不釣り合いかもしれません。

車内は走行中も静かで快適ですが、車の外に出ると音がうるさいですね。外車あるあるかもしれません。カムシャフトによって機械的に駆動される高圧燃料噴射ポンプの音だということです。


エゾシカに注意!


▲ シカよけ笛を装備

車内にこんなシールが貼ってありました。「鹿笛」って?

▲ 右側の鹿笛、ドアミラーの付け根

走行中の風の流れで、人の耳には聞こえない高周波音を発生するのだそうです。その音を聞きつけたエゾシカなど野生動物が、自動車の接近にいち早く気付いて衝突事故防止に役立つ…って、ほんとかな?

▲ 左側の鹿笛

左右2つで一組になっており、それぞれ別の周波数の音を出すそうです。

取り付けたレンタカー会社によれば、当初は事故が減る効果があったということですが、その後は目立った効果が見られない…ですと。(GAZOO


二風谷にぶたに


▲ コーション・メッセージ

まもなく車を返却しようとするころになって、こんなメッセージが交互に表示されました。「アクティブ ブレーキ アシスト」と「アクティブ レーンキープ アシスト」の機能に問題が生じたようです。

名称から想像すると、「アクティブ ブレーキ アシスト」は衝突の危険を感知して警告を発したり自動ブレーキをかけたりする機能、そして「アクティブ レーンキープ アシスト」は車線を逸脱すると警告を発したり車線内に戻そうとする機能でしょうね、たぶん。それなら急いで対処することもなさそうです。走行していてもブレーキなどにまったく違和感はありませんし…。

念のため一旦路肩に停車してエンジンを止め、再びエンジンを始動してみたところ、メッセージは出なくなりました。それでも一応は注意しながら運転することにします。


▲ メルセデス・ベンツ E200 4MATIC アバンギャルド

搭載されるM274エンジンは、1991cc 直列4気筒 DOHCターボ。電動パワーアシストのないEクラスでは最小の排気量で、184ps/5500rpm、30.6kgm/1200-4000rpm というスペックです。

最大トルクを発生するエンジン回転数が低くて広いですね。車重は1.7トンを超えていますが、この広いトルクバンドが運転のしやすさに一役買っているのでしょう。

今回借りたレンタカーは6年半前(2017年3月)に初度登録され、8万2千キロ走行した車です。発売当時の価格はおよそ700万円。この日は216km走行して給油が19.41リットルだったので、燃費はリッター11kmちょっとでした。

-+-+-+-

メルセデス・ベンツのEクラスといわれる、少し前のモデルを運転してみました。わが家の今の生活スタイルには合わないので、経済的な余裕があったとしても所有することはないクルマです。

でも、高齢の親が体調を崩した数年前、10万キロ走行の軽自動車で 片道400km以上を何度も往復したときは、E200のようなクルマだったら運転の疲れも半減しただろうに…と思ったり。

いい運転体験になりました。


※ 写真はすべて、2023年9月、やぶ悟空撮影(一部画像処理しています)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?