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G-III、ハッシュキット

新千歳空港に進入するガルフストリームIII(G-III)。そのエンジンがやけに長いようですが、何だろう?

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▲ Gulfstream III、N198PA

このレジ「N198PA」を手掛かりに、FAA REGISTRYを検索してみました。

・Manufacturer Name: GULFSTREAM AEROSPACE
・Model: G-1159A

製造は1986年、今から35年前ですね。飛行機は古い機体でも長く使うことが多いので、驚くような年数ではありません。そして気になるエンジンは、

・Engine Manufacturer: ROLLS-ROYCE
・Engine Model: SPEY MK 511SR

ロ-ルスロイスのスペイと名付けられた、やはり古いエンジン(RB.163 Mk.511-8)のようです。細身だけれどターボジェットではなく、ターボファンエンジンです。低バイパス比なので騒音低減には不利でしょう。ガルフストリーム-II/IIIだけでなく、軍用機にも搭載されたシリーズのようです。

さて、エンジンの後ろに付いているモノは何でしょう? いろいろ調べてたどり着いたのが…「Hush Kit」。ハッシュ(hush)とは、静かにする/~なる/~させる、という意味だそうで、騒音対策用の装置でした。

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FAA(連邦航空局)は 民間航空機の最大騒音レベルを規制しており、「Stage 15」で指定されます。2013年、FAAは Stage 3 の騒音レベルに準拠していない重量75,000ポンド以下の航空機(Gulfstreamなど)の運航を禁止し、2015年12月31日以降は米国本土での運航が許可されなくなりました。

古い時代の音が大きいエンジンは、騒音対策をしなければ飛ばすことができません。ガルフストリームのように高価で豪華、まだまだ使える機体を廃棄するのはもったいないので、基準を満足するよう騒音抑制キットを取り付けた、ということでしょう。

この N198PA機に取り付けられているのは、QTA (Quiet Technology Aerospace) 社の Stage 3 Hush Kit といわれるものです。

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▲ QTA Stage 3 Hush Kit(Aero-News NetworkのYouTube画像に加筆)

エンジンの排気ノズル後方から見た画です。オリジナルの5ローブの噴出口を 12ローブまで溝を増やし、中央に整流部を追加したそうです。これにより、次の機能を実現しています。

● ノズルから排出されるジェット気流の拡がりを抑制し、排気ガスと周辺の空気流のミキシング
● 音響処理によるタービンノイズの低減
(QTA News, 2003 より)

QTA社のキットは、スラストリバーサーと連動してこんな動きをします。

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▲ QTA Stage 3 Hush Kitの動き(Aero-News NetworkのYouTube画像を編集し加筆)

スラストリバーサーが作動して展開(deploy)すると、リバーサードアに干渉しないよう最後部のイジェクター(テールパイプ)が後方にスライドします。リバーサーが格納(stow)されると連動して元の位置に戻ります。重量は100kg程度と軽量ですが、改修費用は「億円」という単位のようです。

元の動画は、こちらをご覧ください。


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11月1日に日本にやって来た Gulfstream-IIIN198PA。Phoenix Air の「PA」でしょうね。フェニックス・エアは、他にも複数の古いガルフストリーム(-I/II/IIB/III)などを所有してチャーターフライトを行っているようです。日本の航空局が高々度飛行検査機として使っていたガルフストリームが、それらより新しいガルフストリームIV(JA001G および JA002G)でしたが、3年ほど前に退役しています。

フェニックス・エアのエグゼクティブG-IIIにはベッドルームが付いていたり、バスルームのあるエグゼクティブG-Iさえあるとのこと。機体が少々古くたって、こんな豪華装備のビジネスジェットならチャーターしてみたいものです。でも、使い慣れていない平民には、くつろげないかも…。


※ 特記のない写真は、2021年11月1日、やぶ悟空撮影

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