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新千歳空港に誘導路新設

(2021年2月6日時点の「やぶログ」記事です。文を修正・加筆し、一部写真を4月撮影のものに差し替えました。)

新千歳空港に新たな誘導路が設けられます。どこに? なぜ?

滑走路と誘導路マップ

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▲ 新千歳空港の滑走路と誘導路

現状の誘導路をグレーで、新設される誘導路などを色付きで示した概略図です。ピンクは「平行誘導路の複線化」、水色は「末端取付誘導路の複線化」といわれる整備事業です。

ピンクの「平行誘導路複線化」については2020年に用地調査が行われた段階であり、まだ実際の工事は始まっていません。水色の「末端取付誘導路(北側)」は、国際線側の誘導路「L4S」と併せ、一部の工事に着手したようです。誘導路「H4S」と「A2S」の一部は舗装路面が見えています。同じく水色で示した「末端取付誘導路(南側)」の工事はまだ始まっていません。

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▲ 北側の末端取付誘導路付近(新千歳空港、2021年4月)

ターミナルビル展望スペースから撮影した写真に加筆しました。


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▲ 北側の末端取付誘導路付近(2021年2月25日AICから抜粋し着色)

新設誘導路に誤って入らないよう「×」マーク(禁止標識)が付けられ、航空局がAICで注意喚起しています。

AIC : Aeronautical Information Circular、航空情報サーキュラー

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H4S 付近(新千歳空港、2021年4月)

×」マークとQ400。誘導路H4S付近の様子です。航空灯火などはまだ設置されていないようですね。

これらの工事に伴い、運用を休止している誘導路中心線灯(J5D5)やストップバーライト(A1A10B2B4)があります。ストップバーが点灯しないとなると、滑走路への進入時はATCに十分お気を付けください。

冬季の渋滞

新千歳空港には今でも多くの誘導路があって便利そうなのに、これ以上増やすの? と思うかもしれません。しかし、北国の主要空港がゆえに必要なのです。

例として、毎年発生している北寄りの風で雪が激しく降り続いている天候を想定してみましょう。

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▲ 降雪時の地上交通流の例

この図は、滑走路01R19Lを閉鎖して除雪中で、使用滑走路は01Lの1本だけ、という状況です。図の左側が現状の新千歳空港です。黄色い部分は除雪中か未除雪で、航空機が走行できないエリアと見てください。

通常ですと離陸01L/着陸01Rと2本の滑走路を使い分けますが、滑走路1本だけの運用になると出発機や到着機で混雑しはじめます。あらかじめ、エプロンで航空機の雪氷を除去してから滑走路へと向かいますが、降雪が激しいときは地上走行中にも翼の上や機体に雪が積もっていきます。途中に設けられているデアイシング・エプロンで除氷しても滑走路01末端まではまだ距離があり、出発待ちの航空機が多いと時間がかかってしまいます。そのうちにホールド・オーバー・タイムを超えてしまうと離陸することができず、いったん戻って再びデアイシングしなければなりません。

ホールド・オーバー・タイム:飛行機に散布された防除雪氷液によって、機体表面への氷や霜の形成及び雪の堆積を防止することができる予測時間(航空局資料)
デアイシング:離陸前の航空機の機体に付着した雪や氷を除去すること(東京航空局資料)
アンチアイシング:雪氷の付着を防止または再結氷を予防すること(東京航空局資料)

現状では、エプロンに戻るためには滑走路上を走行するしか経路がないため、その間は離陸も着陸もできなくなり、いっそう滞留時間が増すという悪循環に陥ります。また、誘導路上にも雪が積もって航空機の走行が難しくなってきますが、除雪しようにも除雪車両の移動経路(動線)が確保できません。

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▲ 平行誘導路D上の出発機(雪のない新千歳空港、2020年12月)

動線の確保

これらの問題を解決するためのキーワードは「複線化」。現在の誘導路と平行にもう1本の平行誘導路を設ける、ということです。航空機や除雪車両の動線を確保し、滞留を軽減させる策なのです。

平行誘導路と末端取付誘導路をそれぞれ複線化すると、右の図のように航空機と除雪車両、それぞれ別の流れができるようになります。エプロン~誘導路~滑走路という航空機の動線とは別に、水色の破線で示した除雪車両の動線が環状に確保できるので、滑走路の除雪と同時に平行誘導路の除雪も進めることができます。これにより除雪時間が短縮されるだけでなく、航空機と除雪車両の動線の切り替えがスムーズになり、もう1本の滑走路や複線化された平行誘導路の除雪も容易になるというわけです。

さらに、デアイシング・エプロンを南端側に設ける計画もあるので、そうすればホールド・オーバー・タイムを超えることは、ほぼなくなるでしょう。


北側と南側の末端取付誘導路の複線化工事は2022年度までとなっていますから、ほぼ1年半後には完成するのでしょう。平行誘導路の複線化工事は土工が少々大がかりになるためか、4~5年後の2025年度の整備完了を予定しているようです。余談ですが、末端取付誘導路(南側)と平行誘導路複線化の場所の大部分は苫小牧市側に属しています。

カメラマンのよく知る撮影場所「A10ポイント」は、南側の工事が始まると消滅してしまいますね。

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▲ 新千歳空港A10ポイントから撮影、冒頭の写真ピーチ機も(2020年12月)


※ 文や図は、北海道開発局「新千歳空港の誘導路複線化事業について」および航空局資料などを基に作成しました。

※ 工事の時期等は、国土交通省 北海道開発局 札幌開発建設部の入札・契約情報、NOTAMなどから判断しました。

※ 写真はすべて、やぶ悟空撮影

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