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用途廃止!

航空自衛隊 千歳基地の U-125A が順次退役するようです。「救難捜索機」と言われる双発ジェット機、U-125A とは?


▲ 航空自衛隊千歳基地の U-125A(2019年8月)

一見するとビジネスジェット機ですね、かなり腹が出ていますけど。これら3枚の写真は、千歳救難隊60周年の特別塗装を施した2019年の撮影です。

U」は基本任務を表す記号。Utilityの頭文字で「汎用機」を意味します。「125」は原型の航空機、ブリティッシュ・エアロスペース BAe125から。BAe 125-800 をベースに、捜索レーダー、赤外線暗視装置、援助物資投下機構などの捜索救難に必要な装備を施したものが、航空自衛隊の運用する U-125A です。北海道から沖縄県まで9道県に26機配備されているとのこと。


UH-60JU-125A(2019年6月、襟裳分屯基地で)

U-125A双発ジェットは、UH-60Jヘリコプターとのユニットで活動します。この写真は航空自衛隊襟裳分屯基地の一般公開で行われたデモから。U-125Aが上空で旋回しています。


▲ 千歳航空祭で(2018年7月)

千歳基地で行われたチビッコ吊り上げ救助の模擬でも、UH-60Jと共に U-125Aの姿が小さく描かれていました。

高速で広い範囲を捜索できる固定翼ジェットと、ピンポイントで救助に当たるヘリコプター。互いを補う最適な組み合わせのように思います。そんな救難捜索の「目」を用途廃止してしまうのは何故なのでしょう?

反撃能力(敵基地攻撃能力)の保有や宇宙・サイバーなど増大する任務に必要な人員・体制を確保するため…

(JIJI.COM 2022年12月25日)

という報道が目に留まりました。根拠となる文書に目を通してみると、次のように書かれています。


▲ 防衛力整備計画(29ページの一部を抜粋し着色)

令和4年12月16日に閣議決定された防衛力整備計画で「用途廃止を進める」とされた航空機に、救難捜索機(U-125A)が含まれていました。陸自のAHとOHのヘリ、海自のリアジェットU-36Aには「等」がないのに、U-125Aには「等」が付いています。これは飛行点検機(U-125)も含まれるということなのでしょうか? 飛行点検機U-125は 2016年の墜落事故で3機中の1機を失っており、YS-11や U-125の後を継ぐサイテーション・ラティチュード680A(空自のU-680A)が3機、すでに入間基地に納入されています。


▲ 飛行点検中の U-125(2021年10月)

BAe 125-800 に飛行検査システムを装備した航空機が、航空自衛隊の飛行点検機 U-125 です。U-125AとU-125はベース機が同じなので「保有機種の最適化のため」という理由なら、維持経費などを考慮すれば「用途廃止」するのは当然の判断なのでしょう。

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自衛隊は、我が国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、我が国を防衛することを主たる任務とし、必要に応じ、公共の秩序の維持に当たるものとする。

自衛隊法第3条

これが自衛隊の主たる任務です。でも、それだけではありません。

都道府県知事その他政令で定める者は、天災地変その他の災害に際して、人命又は財産の保護のため必要があると認める場合には、部隊等の派遣を防衛大臣又はその指定する者に要請することができる。

自衛隊法第83条

災害派遣として、「事態やむを得ないと認める場合には、部隊等を救援のため派遣することができる」。これも自衛隊の重要な任務の一つです。昨年春に起きた知床観光船の事故では、海保の災害派遣要請を受けて千歳基地のU-125Aも捜索に当たりました。

わが国の責任範囲である広大な海上の捜索救難業務は、海上保安庁が有する航空機ファルコン2000などが担っており、その航続距離は U-125/125Aをはるかに凌いでいますが、一刻を争う捜索救難においては数がものをいう場合も多いでしょう。

その妥当性や有効性に疑問を感じざるを得ない敵基地攻撃能力の保有により、失われるものも大きいのかもしれません。


※ 写真はすべて、やぶ悟空撮影

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