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北海道~沖縄、直行

暖かい暖かい と大合唱のこの冬。苫小牧とまこまいでも確かに暖かい日が多いのですが、最高気温でも氷点下という真冬日が、まだまだ残っています。

そんな中で 暖かそうな南国に思いを馳せていると、ふと「直行化経路」の文字が目に留まりました。対象リストに「ROAH-RJCC」も入っています。これは 那覇空港~新千歳空港 のこと。その間に直行経路ができるの?

AIRAC
高高度空域における直行化経路の試行運用について
令和6年1月25日0000JSTから適用
巡航高度が FL335以上の場合のみ

航空路誌補足版(AIP SUP)NR218/23, 28 DEC 2023 から抜粋

となっており、すでに試行運用が始まっています。


(略語)
AIP
: Aeronautical Information Publication
AIRAC : Aeronautical Information Regulation and Control
FL : Flight Level
ICAO : International Civil Aviation Organization
NR : Number
SUP : Supplement

ICAO Abbreviations and Codes より


那覇空港~新千歳空港 に着目すると、こんなルートになっていました。

▲ 那覇空港~新千歳空港(AIP SUP NR218/23, 28 DEC 2023 から抜粋)


これだけでは分かりにくいので、少し書き換えてみました。

▲ 那覇空港~新千歳空港間の飛行経路(AIPを基に作成)

もっと分かりにくくなった!って、スイマセン。

Y〇〇」や「Y〇〇〇」は RNAV5経路 であって「直行経路」ではありません。赤色の破線で示した区間(鹿児島~奄美大島の北)だけが目新しい飛行経路のようです。

地図上に描くと、次のようになります。

▲ 那覇空港~新千歳空港間の経路(地理院地図に加筆)

緑の破線(最短距離)で示したような、那覇空港と新千歳空港とをダイレクトに結ぶ直行経路を設定したのかと誤解してしまいました(まさかね)。よく見ると「直行経路」ではなく、「直行化経路」と書いてあります。

直行経路Direct route):航空機が無線施設を利用して直行飛行を行うときの飛行経路であって、航空路、RNP2経路、RNAV5経路及び洋上転移経路以外のものをいう。

航空局

と定義されているのでピンクのラインは「直行経路」とはいえず、「直行化経路」としたのでしょう。でも、AIP SUP NR218/23 の英語表記では同じ「direct route」を使っていて、「直行経路」と「直行化経路」の区別ができなくなっていますけど…。


それはともかく、地図でピンクの破線で示した 鹿児島より南の付近を拡大してみます。

▲ 設定された直行区間(AIPを基に作成)

既存の飛行経路は、

KANAH Y25 BOMAP Y45 HKC

ですから、14度ほど屈折したこの区間を直行飛行できるようにした、ということです。私の試算だと1nm(海里)ちょっとだけ、距離が短縮されそうです。

1 nm = 1852 m

-+-+-+-

このAIP SUPに記載されている「直行化経路」は12本。それぞれ、既存のRNAV経路(や航空路)以外の直行区間は次の通りです。

・フィリピン・マニラ~東京:MAGMA - AZAMA(6nmちょっと短縮)
・フィリピン・マニラ~成田:( 同 上 )
・フィリピン・マニラ~中部:( 同 上 )
・那覇~新千歳:KANAH - HKC(1nmちょっと短縮)
・那覇~小松:( 同 上 )
・那覇~広島:( 同 上 )
・那覇~岡山:( 同 上 )
・那覇~松山・岩国:( 同 上 )
・那覇~北九州:( 同 上 )
・那覇~高松:( 同 上 )
・那覇~新潟:( 同 上 )
・石垣~福岡:YURIX - MOMPA(6.5nm短縮)

12本並べても、結局のところ直行区間は3区間だけ。いずれも飛行距離の短縮効果はさほど大きくはなく、大部分は従来のRNAV経路ですから これ以上の時間短縮効果やそれに伴う燃料削減効果などは あまり期待できないでしょう。(わずかでも、ちりも積もれば山となりますが…)


▲ Peach Aviation のエアバスA320(2021年1月)

2024年2月時点で新千歳空港と那覇空港を結ぶ直行便は、Peach Aviation(ピーチ)の1往復、271便/272便だけです。

・札幌(新千歳)- 沖縄(那覇)8,990円~(片道)

https://www.flypeach.com/

これが国内では最長路線。日によってはこんなに安いんだ!

一例として、14日の飛行航跡を見てみます。

▲ ピーチ271便の飛行航跡(flightradar24 に加筆)

新千歳空港から那覇空港まで、この日は3時間20分かかっていました。


▲ ピーチ272便の飛行航跡(flightradar24 に加筆)

一方、那覇空港から北海道に向かうフライトは2時間49分。30分ほど早く着きました。飛行方向によって飛行時間が異なるのは良く知られたこと。上空で西からの強い気流の影響を受けるからです。

飛行経路はおおむね「直行化経路」にのっている…ようにも見えるけど、以前からあるRNAV経路を飛行し、周辺のトラフィックによってレーダーベクターでショートカットしているだけ、じゃないのかな。


「高度による分離後の高高度空域におけるフリールーティングの実現に向けて、飛行計画経路の一部を既存の航空路から特定の地点を直行で結ぶ経路に置き換える試行運用を行い、効果と影響を検証する。」

AIP SUP NR218/23, 28 DEC 2023 から抜粋

「試行運用の目的」として、このように記述されています。フリールーティング(free routing)の実現に、何か関係あるのかな? どんなふうに検証しようとしているのだろう?


▲ ピーチA320(2023年12月)


※ 写真はすべて新千歳空港で、やぶ悟空撮影

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