見出し画像

翼端が接触!

新千歳空港で エアバスA330と ボーイング777が接触し、双方の機体が破損しました。2024年1月16日のことです。


▲ 大韓航空のエアバスA330、HL7702(2023年10月31日撮影)

エアバスA330-300は大韓航空機(登録記号 HL7702)、昨年秋に新千歳空港で撮影していました。

接触が起きた日は、新千歳空港から 韓国の仁川インチョン国際空港に向かう大韓航空766便として、離陸のため 70番スポットからプッシュバックされていました。その左主翼のウィングレットが、隣の69番スポットに停まっていたキャセイパシフィック航空のボーイング777-300(登録記号 B-HNW)の右水平尾翼と胴体尾部に接触しました。


▲ 接触時の状況(やぶ悟空の推定、Google画像を使用)

報道映像やネット掲載写真に加え、翌日に見た当該2機の損傷状況などから、大韓航空機がキャセイパシフィック航空機に接触した状況を独自に推定した図です。

69番~70番スポットの写真は Googleの画像を使用し、機体の形状とサイズは エアバス社およびボーイング社の Scaled Drawing図により縮尺を合わせて描きました。接触部の傷は、近くで撮影された写真を基にしました。

本来なら黄色の線で示したようにプッシュバックされた後、左(南)に自走で地上走行するはずでしたが、早めに曲げられてしまったようです。


▲ 接触部の高さ(両機のデータから推定)

接触した部分の高さは、およそ8メートル。重量によって数十センチほど変わりますが、ウィングレットが付いていた分、当たらずに下をくぐり抜けることはできなかったようです。

プッシュバックを始めたとき、なぜ十分に離れてから曲げ始めなかったのか、その理由は分かりません。ただ、雪が降りしきっているときは、直前に走行経路を除雪してもすぐに真っ白になってしまうため、目安にするラインは見えていなかったのでしょう。


▲ 48番スポットに移動した大韓航空のエアバスA330機

これは翌日午後の写真。左主翼端に付いているウィングレットは、その中ほどで折れ曲がっていました。


▲ 大韓航空A330機のウィングレット

右のウィングレット(写真下)と比べて見ると、損傷具合が分かります。


▲ キャセイパシフィック航空のボーイング777機

こちらは当てられた方のキャセイパシフィック機。この日は49番スポットに移動していました。右の水平尾翼の下側に筋状の傷が見えます。胴体尾部右側の損傷がこの場所からは見えないので、左サイドにまわってみると…


▲ キャセイパシフィック航空機の尾部

補助動力装置(APU)のアクセスドアが開いたままになっていました。

報道映像によれば、右側のアクセスドアは大きく損傷し、その大部分がちぎれているように見えました。中のAPUに損傷がなければいいのですが…。

-+-+-+-

2機の接触が起きた日、新千歳空港は雪のため、離着陸が大きく乱れていました。

▲ 大韓航空機の新千歳到着航跡と、他機の飛行状況(flightradar24 画像に加筆・編集)

大韓航空機が着陸したのは、定刻から1時間近く遅れた16日13時30分過ぎ。それに伴って折り返しの出発便も遅れていました。


▲ キャセイパシフィック航空機の新千歳到着航跡(flightradar24 画像を編集)

キャセイパシフィック機も太平洋上でしばらく待機させられたのち、1時間半遅れの17時ごろ新千歳に着陸していました。


▲ 大韓航空機(右)と キャセイ・パシフィック機

冬の嵐の翌日、新千歳空港はきれいに晴れました。

どちらの機体も 損傷した状態では飛行できませんので、新千歳空港で最低限の修理を行うことになるでしょう。

2024年は、年明け早々から羽田で大きな衝突事故が起きました。「気を付けましょう」だけではヒューマンエラーを防ぐことはできません。基本に忠実に、当たり前のことをひとつひとつ確実に実施することが、先人が積み重ねてきた知恵と経験を活かす、重要な安全策なのだろうと思います。


※ 特記のない写真はすべて、2024年1月17日、やぶ悟空撮影


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?